最近のニュースで看過できなかった問題について一言。雑誌『wired』dのサイトに載っていた「GMトウモロコシで発ガン」論文を科学誌が撤回(Controversial paper linking GM maize to cancer retracted by journal)という記事。下記サイト参照。
http://www.wired.co.uk/news/archive/2013-11/30/gmos
日本語訳はこちら。
http://wired.jp/2013/12/02/gmos/
フランスのカーン大学のセラリーニ教授らが行ったモンサントの遺伝子組み換えトウモロコシをラットに与え続けたらさまざまな病気が発生して平均寿命が縮まったという実験結果は知られていると思う。(堤未果さんの『(株)貧困大国アメリカ』(岩波新書、2013年)などで紹介されているので、参照されたい)
セラリーニ教授らは、モンサント社が商業化しているラウンドアップ耐性の遺伝子組み換えトウモロコシ(NK603)を実験用ラット200匹に2年間与え続けた。
ルモンドの記事を紹介した下記記事を参照して、実験結果を紹介しておく。
http://www.webdice.jp/dice/detail/3664/
実験結果:
・1年後 オスでは肝臓のうっ血、壊死が2.5~5.5倍に増加。腎臓障害は1.3~2.3倍。またすべての実験グループにおいて乳房の腫瘍が多く監察された(写真参照)。
・平均寿命以前に死亡する個体:通常の飼料を与えていた個体の2~5倍に増加。
この論文を掲載したのはFood and Chemical Toxicology(『食品と化学的毒性学』), Volume 50, Issue 11, November 2012:4221-4231。
ところが、2012年11月の論文掲載後、FCT誌と版元のElsevier社にはモンサント関係者から大量の批判書が送付されてきて、どういう圧力がかかったのかは分からぬが、同誌はバイオテクノロジーの担当編集委員というポストを新設。元モンサント社研究員のリチャード・グッドマン(現・ネブラスカ大教授)が担当編集委員に就任したという。
これを「コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)」と言わずしてなんと表現したらよいのだろう。
元モンサントのグッドマン教授が担当編集委員に就任後、ついに本年11月にFCT誌は、カーン大学セラリーニ教授らの論文を撤回してしまった。
前掲の『wired』 誌によれば、論文撤回の理由は下記のようなもの。
「不正行為やデータに関する故意の虚偽表現の証拠は見られなかった」。しかし、「実験群の数が少ない」という点と、「実験に使われたラットの系統がもともと腫瘍を発生しやすいものだった」という点から、該当の論文を不確実なものと結論。
皆さんは、この論文撤回理由に関してどう思われるだろうか?
私も自分の専門分野では学会誌の担当編集委員などもやっている。いちど査読を通った論文が後に撤回されるというのは、盗作や実験データのねつ造など、犯罪的な行為がない限りはあり得ないことである。
私が入っている学会で論文が撤回されるという事例も過去にあった。その事例の撤回理由は、論文の著者(K大学の某教授)が、同じ講座の研究助手が調査して得た未発表データを勝手に盗用して自分の論文の中で使ってしまったという理由であった。これは窃盗行為であり、その調査データは調査者に帰属すべきものであるから、論文は「不正引用行為」を理由として撤回された。
もちろんデータがねつ造されていた場合なども、撤回されるべきである。
しかしながら、セラリーニ教授の実験に不正や虚偽は見られなかったのであれば、その実験結果は科学的事実として残る。もし「ラットのサンプル数が少ない」と批判したいのであれば、後続の研究が統計的に十分なサンプル数を増やした実験を行って統計的誤差の範囲か否かを確かめるというのが、科学的な筋である。ラットの個体数は論文に明記されているのであるから、それは論文撤回の理由にはならない。
「ラットがもともと腫瘍を発生させやすい種だった」と批判するのであれば、別種のラットを用いた検証実験をすべきである。また、かりに別種のラットで検証実験したところ腫瘍は増えなかったとしても、この種のラットではガンが増えたという科学的事実が残るのであるから、それも論文撤回の理由にはならない。
こうした追加実験によって科学は発展していくのである。モンサント関係者たちが、追加実験・検証実験をしないまま、セラリーニ教授の実験に難癖としかいいようがない理由を付けて否定するというのは、モンサントのGMトウモロコシは、「いよいよ怪しい」としか思えないのである。
科学に対して、このような干渉をすればするほど、モンサント社は墓穴を掘っていると認識すべきである。おごる平家はひさしからず。世界中の人々の我慢ももう限界だろう。
http://www.wired.co.uk/news/archive/2013-11/30/gmos
日本語訳はこちら。
http://wired.jp/2013/12/02/gmos/
フランスのカーン大学のセラリーニ教授らが行ったモンサントの遺伝子組み換えトウモロコシをラットに与え続けたらさまざまな病気が発生して平均寿命が縮まったという実験結果は知られていると思う。(堤未果さんの『(株)貧困大国アメリカ』(岩波新書、2013年)などで紹介されているので、参照されたい)
セラリーニ教授らは、モンサント社が商業化しているラウンドアップ耐性の遺伝子組み換えトウモロコシ(NK603)を実験用ラット200匹に2年間与え続けた。
ルモンドの記事を紹介した下記記事を参照して、実験結果を紹介しておく。
http://www.webdice.jp/dice/detail/3664/
実験結果:
・1年後 オスでは肝臓のうっ血、壊死が2.5~5.5倍に増加。腎臓障害は1.3~2.3倍。またすべての実験グループにおいて乳房の腫瘍が多く監察された(写真参照)。
・平均寿命以前に死亡する個体:通常の飼料を与えていた個体の2~5倍に増加。
この論文を掲載したのはFood and Chemical Toxicology(『食品と化学的毒性学』), Volume 50, Issue 11, November 2012:4221-4231。
ところが、2012年11月の論文掲載後、FCT誌と版元のElsevier社にはモンサント関係者から大量の批判書が送付されてきて、どういう圧力がかかったのかは分からぬが、同誌はバイオテクノロジーの担当編集委員というポストを新設。元モンサント社研究員のリチャード・グッドマン(現・ネブラスカ大教授)が担当編集委員に就任したという。
これを「コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)」と言わずしてなんと表現したらよいのだろう。
元モンサントのグッドマン教授が担当編集委員に就任後、ついに本年11月にFCT誌は、カーン大学セラリーニ教授らの論文を撤回してしまった。
前掲の『wired』 誌によれば、論文撤回の理由は下記のようなもの。
「不正行為やデータに関する故意の虚偽表現の証拠は見られなかった」。しかし、「実験群の数が少ない」という点と、「実験に使われたラットの系統がもともと腫瘍を発生しやすいものだった」という点から、該当の論文を不確実なものと結論。
皆さんは、この論文撤回理由に関してどう思われるだろうか?
私も自分の専門分野では学会誌の担当編集委員などもやっている。いちど査読を通った論文が後に撤回されるというのは、盗作や実験データのねつ造など、犯罪的な行為がない限りはあり得ないことである。
私が入っている学会で論文が撤回されるという事例も過去にあった。その事例の撤回理由は、論文の著者(K大学の某教授)が、同じ講座の研究助手が調査して得た未発表データを勝手に盗用して自分の論文の中で使ってしまったという理由であった。これは窃盗行為であり、その調査データは調査者に帰属すべきものであるから、論文は「不正引用行為」を理由として撤回された。
もちろんデータがねつ造されていた場合なども、撤回されるべきである。
しかしながら、セラリーニ教授の実験に不正や虚偽は見られなかったのであれば、その実験結果は科学的事実として残る。もし「ラットのサンプル数が少ない」と批判したいのであれば、後続の研究が統計的に十分なサンプル数を増やした実験を行って統計的誤差の範囲か否かを確かめるというのが、科学的な筋である。ラットの個体数は論文に明記されているのであるから、それは論文撤回の理由にはならない。
「ラットがもともと腫瘍を発生させやすい種だった」と批判するのであれば、別種のラットを用いた検証実験をすべきである。また、かりに別種のラットで検証実験したところ腫瘍は増えなかったとしても、この種のラットではガンが増えたという科学的事実が残るのであるから、それも論文撤回の理由にはならない。
こうした追加実験によって科学は発展していくのである。モンサント関係者たちが、追加実験・検証実験をしないまま、セラリーニ教授の実験に難癖としかいいようがない理由を付けて否定するというのは、モンサントのGMトウモロコシは、「いよいよ怪しい」としか思えないのである。
科学に対して、このような干渉をすればするほど、モンサント社は墓穴を掘っていると認識すべきである。おごる平家はひさしからず。世界中の人々の我慢ももう限界だろう。
それは、ピア・レビューという制度の根幹を揺るがすから、です。
たいていの学術誌では、2~3名の査読者をつけて、この査読者によって科学的に妥当であると判断された論文が掲載されることになります。その判断を蔑ろにすることは、科学者の共同体がもつ判断力を自ら否定することに他なりません。その観点からは解散してもらった方が良い学会もあることは事実ですが。
そうですね。こういう論文はどんどん引用して、学会の判断とモンサントの圧力の不当性が明らかになるようにして差し上げましょう。
本当に。今後、誰も文句をつけられないように1000匹のラットを用いた実験をして白黒ハッキリつけて欲しいものです。
何ページにそのようなデータが掲載されているのでしょうか?
***以下、引用*****
http://www.webdice.jp/dice/detail/3664/
すべての実験グループ群において、対照グループに対する最も明確な差が現われたのは1年後だった。オスの間では肝臓のうっ血や壊死が2.5~5.5倍多かった。また重度の腎臓障害も1.3~2.3倍現われた。また対照グループに対してすべての実験グループにおいて乳房の腫瘍が多く監察されたが、その現われ方には必ずしも統計的な意味性は読み取れなかった。
死亡率も、すべての実験処置を加えたグループで上昇した。対照グループの平均寿命は624日、メスにおいては701日であり、「平均寿命を過ぎた後の死因はすべて寿命によるものと見なされる」と研究者達は書く。「この平均寿命に達する前に、対照グループではオスの30%、メスの20%が自然死したのに対して、遺伝子組み換えトウモロコシを与えられたグループのオスの50%、メスの70%が(早期)死亡した。
***以下引用******
一年以内に、GMトウモロコシを与え続けたラット群が次々に発病し始める。メスには三か月目で乳ガンが、オスには20か月以内に肝臓と腎臓の機能障害が生じ、やがて死んでいった。死亡率は普通のトウモロコシを与えていたラット群の2倍から5倍だったという。
「放射能」という有毒物質が存在するかの如く
「遺伝子組み換え作物」という有毒物質が存在するかの如く
まず遺伝子組み換え云々で言うのであればまず既存の作物は先々代の努力により無毒化されてきた改良品種である
この手の似非科学に弄される者は高校理科レベルを修めていない無学者と嗤われても仕方ない
またこの手の核技術遺伝子操作技術については必ず宗教が反発すると言う事も頭に入れておくべきである
研究内容についてもサンプルの非対称性が大いに疑われる等作為的な物が幾つもでてくる
データの捏造・盗用などが明らかでない限り、一旦受理された論文の取り下げは行われるべきでありません。このことは、皮肉なことにSTAP細胞騒動で衆目の知れるところとなりました。
今回のような、実験条件の特殊性、サンプルの不足などは、取り下げの理由にはなりません(審査段階で原著を短報に格下げする理由にはなるでしょうが)。
生物学で、個々の論文のエビデンスがあまり強固なものになりえないのは致し方ないことです。結論に疑念があるならば追試によって検証あるいは反証し、どんどん論文化していくことが重要です。そして最終的には、一連の研究成果に対する「メタ・アナリシス」や「系統的レビュー」によって強固な結論を導くのです(と、「統計学が最強の学問である」にも書かれていました。良い本が売れてくれたものです)。
こうしたアプローチに忠実に従うとしても、研究費を潤沢につけられるモンサントのような大企業は、自説を主張するのに有利な立場にあります。たくさんの実験を行って、そのうち都合の良い結果のみを選んで発表することができるからです。一連の実験の中で一部の結果のみを隠す「トリミング」は科学では反則ですが、自説に反する結果をデータセットごと発表しないことはしばしば行われており、容認すらされています。
そういう背景を知る者から見れば、今回のような「一旦発表された、モンサントに都合が悪い論文の撤回」は、モンサントが自分に都合の悪いデータを不当な方法でなかったことにしようとしているとしか見えないのですね。
ご「反論」の読解レベルにいない野次馬のトーシロですみません。「トラックバック」が出てくれませんし。
いわゆる品種改良は、畑の中での交配による自然の働きにもとづくものでしょうから、人工的に遺伝子を直接いじるのとはまったく異なるのではないでしょうか。
品種改良が「無毒化」って?放射線の遺伝子破壊作用を引っぱりだして眩惑なさるのはいかがなものか・・・いわゆる文系ですが、生物は高校で習ったとして、ロジックに対する常識でそう思いますが。
で、これはまぁ専門分野に近いのですが・・・モンサントさんが「無秩序な市場理論」によって悪辣だ、とは? 理解できかねて鬼子母神、おそれいります。
市場の秩序を侵す「禁じ手」(たとえば独占的地位による一方的優位性)によって消費者を操作支配することを言っておられるのでしょうか。
通りすがりで痰を吐くのがお仕事ならば、お呼びではなかったですね。つい失礼を。