代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

日本政府もTPP交渉で正しい主張をしていた ―米国は農業輸出補助金を全廃せよ

2013年12月15日 | Stop! TPP
  二つ前の投稿で、TPP交渉における薬価高騰と医療費拡大に結び付く米国の提案に全10か国が反対しているのに日本政府だけ反対できないと政府を批判した。しかし、農業問題ではがんばって正しい主張をしていた。ここは素直に褒めてあげたい。
 本日(2013年12月15日)の『日本経済新聞』に小さく載っていたが、TPP交渉で日本政府は、参加国に農産物輸出補助金の削減を求めているという。その日本提案には、米国とニュージーランドを除く9か国が賛成したそうである。そう、正しい主張をすれば他の国も賛同してくれる。

 私は震災の一か月前の2011年2月7日に当ブログで以下のように書いていた。

****以下引用****************
http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/65ac6d092525c3f62468d8c373f328c3

 菅政権がメンツにかけてもTPP交渉に参加するというのであれば、アメリカに次のように要求すべきでしょう。「米国は、例外なくすべての農業補助金を全廃せよ。でなければこちらも関税を撤廃できない」と。アメリカとしては受け入れられるわけがありませんから、日本はめでたく交渉の場から「じゃあサヨナラ」とオサラバできるわけです。このような要求をアメリカに突き付けることができれば、菅政権の評価も少しは高まろうというものです。

***引用終わり********************

 しかしながら、日本政府の提案はまだ甘いようだ。日本政府はアメリカに「輸出補助金の削減」を求めるのではなく、「輸出補助金の全廃」を求めるべきなのだ。
 一般的に穀物の保護関税は途上国の飢餓リスクを減少させ国際正義の上で人道的にも正しい政策であるのに対し、アメリカがやっているような農産物輸出補助金政策は餓死者と自殺者を激増させるだけの人道的に許されない政策である。日本政府は声を大にして、農産物の輸入関税は正しく、農産物の輸出補助金は誤った政策であると主張すべきなのである。

 アメリカの輸出補助金は、これまでも途上国の穀物自給率を低下させる要因となってきて、国際市場を歪め、穀物価格が高騰するたびに飢餓を生み出してきた。また途上国の零細農家を経営破たんに追い込み、零細農家の多いインドのような国々であまたの小規模農家を自殺に追い込む原因ともなってきた。
 他方で、日本が防御のための農産物関税を維持することは、国際的な穀物不足の回避に貢献するので、飢餓リスクを抱える途上国には良い影響しか及ぼさない。日本が食料自給率を高めることは自国を守る正当防衛のみならず、国際的食料不足のリスク減少につながる。日本が下手な援助などするよりも、よほど国際貢献になる政策といえるだろう。
 自衛のための保護主義は全く正当な行為である。それに対し米国の輸出のための保護主義は、他国の貧しい農家を経営破綻に追い込み、他国の国土を破壊し、飢餓を生み出すことにつながる。迷惑この上ないシロモノなのだ。自衛の保護主義は正当であり、攻撃の保護主義は不当なのである。



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2 コメント

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補助金の考え方にも種々ありますが (たんさいぼう影の会長)
2013-12-17 21:58:29
農業補助金の考え方にも種々ありますが、WTOでも認められているのが「緑の補助金」。環境直接支払いの類の正当性は、様々な政治的・経済的立場から広く認められるところです。
TPP交渉を始めてしまった以上、農業分野の交渉については「その補助金は緑か」を徹底して追求すればよいのだと思います。そうすれば、日本は「市場の失敗」を防ぐために水田稲作に対して相当な補助金を出すのが正当ということになるし、農地を疲弊させる新世界式農業にはむしろ環境税をかけろということになるでしょう。
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影の会長さま ()
2013-12-18 10:12:58
  もちろん全廃せねばいけないのは、輸出補助金のみです(WTOでは黄色い補助金)。輸出競争力を維持するために、補助金を出して輸出品目の価格を引き下げることを即刻止めさせねばならないと思います。アメリカの場合、輸出補助金を付ければつけるほど、農地も疲弊させ、地下水の枯渇等も押し進めますので、環境的にもきわめて悪いですね。ご指摘の通り、輸出補助金の撤廃のみならず、さらに環境税を上乗せすべき対象だと思います。

 国内の環境を維持するための緑の補助金は、輸出には影響を与えないので当然認められるべきだと思います。
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