代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

オバマ大統領を味方につけてTPPを葬る方法

2013年12月13日 | Stop! TPP
 さる11月13日にウィキリークスが、TPP交渉の秘密文書を暴露した。特定秘密保護法は通ったが、ウィキリークスの文書は世界中の人々の周知の事実だ。日本の国家公務員がこの情報を漏えいしたのなら逮捕されるのかも知れないが、日本人が漏えいした機密じゃないので何の問題もない。ウィキリークスには、特定秘密保護法など吹き飛ばすよう、今後も世界平和のため、内部告発の奨励と情報の漏えいにがんばっていただきたい。
 
 今回のウィキリークスの暴露内容の数々を見ると、TPP交渉など年内どころか永久に妥結しないだろうと思える。「ざまーみやがれ」である。
 例えば、米国が提案し、日本を除く(日本は検討中)他の全10か国すべてが反対しているとして話題になっている条文が新薬特許に関する下記の条項だ。

ウィキリークス上記サイトより部分抜粋引用(筆者訳)

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http://wikileaks.org/tpp/

Article QQ.E.14:(草案14)

[US propose;110 AU/NZ/CL/PE/MY/SG/BN/VN/CA/MX oppose: 6. (米国が提案。オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、カナダ、メキシコの10か国が反対。日本は検討中)

(a) Each Party shall make best efforts to process patent applications and marketing approval applications expeditiously with a view to avoiding unreasonable or unnecessary delays.
 加盟国は、(新薬の)特許が出願されてから迅速に審査を行い、すみやかに商品としての認可をするよう最大限の努力をすること。

(c) Each Party, as a request of the patent owner, shall make available an adjustment of the patent term of a patent which covers a new pharmaceutical product or a patent that covers a method of making or using a pharmaceutical product, to compensate the patent owner or unreasonable curtailment of the effective patent term as a result of the marketing approval process.
各加盟国は、新薬の開発、薬の製造法や利用法に関する特許期間を調整する。販売承認のプロセスに遅延などが生じ、有効な特許期間の不合理な削減が生じた場合、特許権者の申請により、特許権者に賠償するものとする。

(後略)
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 薬の特許に関するISD条項の一種で、特許を取得した製薬会社が、その承認を渋った国家を損害賠償で訴えるという権利を認めている。アメリカの製薬会社のことだから、すでに知られている薬でも些末な利用法を「発明」したとして特許を申請し、それを受け入れない国を損害賠償で訴えていくということになるだろうことが、この条文からうかがわれる。国際マフィアそのものである。

 TPPにおける米国の態度は、製薬会社の法外な特許権と特許期間を認めさせ、ジェネリック医薬品を出にくくしようということで一貫している。すべてのTPP加盟国で薬価が高騰し、財政を圧迫させ、国民の健康に悪影響を与えるのは明白なのである。マレーシアではTPPの結果、薬価が2倍以上に増大することが懸念されており、それゆえ、激しく抵抗している。がんばれマレーシア!!

 このような国民健康破壊協定、国家財政悪化協定は、まともな国家なら反対するのは当然だ。上記の草案14に10か国が反対しているのも当然である。情けないのは、これにすら反対できないわが日本国の官僚たちなのだ。霞が関官僚の頭は溶けてしまったのだろうか? (あ、これは漏洩してはいけない特定秘密かも知れない)

 日本の国民医療費は、先日の厚労省の発表によれば、2011年度に過去最高の38兆5850億円となり、一人当たりはじめて年間30万円を突破したそうだ。少しでも医療費支出を削減しようと思えば、製薬会社が法外な特許料を取得しないよう、ジェネリック医薬品を出やすくするのが、まともな政府の考えるべきことだろう。TPPなど発効すれば、薬価が高騰していくことは明らかなので、日本の財政破たんを早めるだけである。自分の首を絞めるような、そんなものを推進するのは狂気の沙汰である。日本の官僚がまともなのであれば、薬価の問題一つとっても、TPPに反対すべきなのである。

 また、このことを一番認識すべきなのは、ほかならぬオバマである。医療保険改革もうまくいかず、結局、公約など何もできないままで終わりそうな哀れな大統領。オバマケアを実施すれば財政悪化に歯止めがかからないと、共和党から攻撃され、実際、その主張には一理あるのだ。オバマが何をすべきかは明らかである。製薬会社が特許ビジネスで法外な利益を得るのに歯止めをかけるべきなのだ。世界一高いアメリカの薬価を、せめて日本なみにでも引き下げることを考えるべきだろう。

 オバマは、製薬会社を儲けさせるためのTPPなどを推進するのではなく、ここはむしろマレーシアの言い分を聞いて、米国内でもジェネリック医薬品を出やすくするように知財保護措置を緩和することこそ考えるべきなのだ。そうすれば自らの夢である国民皆保険も実現できそうなものだ。なぜそう考えられないのだろう? 
 
 


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