今月は国際政治においてキューバ=ベネズエラ旋風が吹き荒れました。まずはキューバのハバナにおいて世界117カ国の政府代表が集まって開催された第14回の非同盟諸国会議。今後3年間、米国の宿敵・キューバが117カ国を束ねる非同盟運動の議長国になります。同会議では、名指しこそ避けたものの、「国連憲章と国際法の秩序を踏みにじる単独主義による軍事行動や経済制裁行動を非難する」声明を出しました(非同盟運動の公式サイト参照)。非同盟諸国会議の再活性化と、同会議が今後国際政治上の台風の目となっていくであろうことを印象づけたといえます。そして、非同盟諸国会議の閉幕直後に、その余韻を残しながらニューヨークで開かれた国連総会におけるチャベス(ベネズエラ大統領)の演説は世界中に衝撃(笑劇?)を与えました。
日本のマスコミはチャベスがブッシュを「悪魔」と呼んだ冒頭の部分のみを面白おかしく報道していたのみでした。「昨日悪魔がここに来た。(十字を切って天を仰ぐ) まだ硫黄の匂いが残っている。昨日、私が悪魔と呼ぶところの合州国大統領は、この演壇からまるで自分が全世界の所有者であるかのような演説をした。我々は精神科医を呼んで、昨日の合州国大統領の声明を診断してもらうべきだ・・・」の部分です。いや~、笑えました。世界中の多くの人々がじつに爽快な気分を味わったことでしょう。
しかし報道されたのはその部分ばかりでした。日本のマスコミは、この部分ばかり報道して、国際政治のトラブル・メーカーとしてのチャベスを印象づけたかったのかも知れません。チャベス演説の全文を読もうとネットで検索したところ、米国の市民メディアの Common Dreams のサイトが全文を掲載していました。これです。
チャベスは、おそらくは国際社会の注目をより集めるための戦術として意識的に米国とブッシュを挑発していますが、基本的な内容は非常に真面目なものです。トラブル・メーカーどころか、それは国際社会の目を覚醒させ、未来への希望のための代替案を提示する内容です。つまり、「米国の軍事覇権主義による人類滅亡の道ではなく、この惑星を救い、人類の生存を選択するために」、国連をより民主的で開かれたものにし、国連の機能を強化せねばならないと切実に訴える内容です。チャベスの演説が終わると、諸国の代表から拍手喝さいを受けたというのもうなづける内容でした。
もちろん国連の機能強化によって米国の軍事覇権主義を抑制しようという演説内容に関しては、私も大賛成です。
さてチャベスは、帝国主義による脅威のない国際秩序と平和を構築するために、ベネズエラが非常任理事国に立候補したという経緯を述べ、ベネズエラの非常任理事国入りを阻止しようとする米国の策謀を非難し、国際社会に対して非常任理事国入りへの支持を訴えています。
チャベスの国連改革案とは、(1)国連安保理への途上国の恒久的な参加、(2)国際紛争を回避するための透明で効果的な意思決定システムの構築、(3)常任理事国による「拒否権」という非民主的なシステムの廃止、(4)国連事務総長の権限の強化、の四つです。別に過激でも何でもない、きわめて穏健な主張と言ってよいでしょう。
チャベスは演説の冒頭で、米国の言語学者にして平和活動家のノーム・チョムスキーの著書『Hegemony or Survival(覇権か生存か)』を手にしながら、「アメリカ合州国の兄弟姉妹はこの本を読むべきだ」と述べていました。何と演説の翌日には、アマゾンのネット販売で、このチョムスキーの本が泡沫の中から一躍第3位に躍り出たそうです。演説の翌日にはマンハッタンの本屋でこの本はすべて売り切れになっていたとか。なかなか微笑ましい後日談ですね。(この記事)
米国民のあいだでチョムスキーの本が広く読まれることは、決して大袈裟でなく、世界平和のために大変に好ましいことです。何せ米国民の最大の問題は、チョムスキーの言うように、「自国が世界で過去に何をやってきたのか、その事実関係を知らないことにある」からです。その意味でも、チャベスの演説は大成功だったのではないでしょうか。
是非とも、米国が推すグアテマラではなく、ベネズエラが非常任理事国に選出され、国連改革を進めて欲しいものです。(日本はどうせグアテマラに投票するのでしょうが・・・・)。
<補記>
以上の記事を書いた後、「ん!」さんがTBを下さり、その中で、Emerging Revolution in the South さんの記事を紹介しております。Emerging Revolution in the South さんのサイトを訪れたら、既に先日のチャベス演説の全文を翻訳して下さっていました。この記事です。
さらに、本を紹介された当のチョムスキー本人は意外にもこれまでチャベス大統領と面識がなかったそうで、『ニューヨーク・タイムズ』の取材に応じて「チャベス大統領との会談を希望している」と述べたそうです。チョムスキーの元にはチャベス演説の後、1万件も問い合わせの電子メールが殺到したとか。この記事参照。チョムスキーも、なかなかどうして、結構うれしそうですよ。
日本のマスコミはチャベスがブッシュを「悪魔」と呼んだ冒頭の部分のみを面白おかしく報道していたのみでした。「昨日悪魔がここに来た。(十字を切って天を仰ぐ) まだ硫黄の匂いが残っている。昨日、私が悪魔と呼ぶところの合州国大統領は、この演壇からまるで自分が全世界の所有者であるかのような演説をした。我々は精神科医を呼んで、昨日の合州国大統領の声明を診断してもらうべきだ・・・」の部分です。いや~、笑えました。世界中の多くの人々がじつに爽快な気分を味わったことでしょう。
しかし報道されたのはその部分ばかりでした。日本のマスコミは、この部分ばかり報道して、国際政治のトラブル・メーカーとしてのチャベスを印象づけたかったのかも知れません。チャベス演説の全文を読もうとネットで検索したところ、米国の市民メディアの Common Dreams のサイトが全文を掲載していました。これです。
チャベスは、おそらくは国際社会の注目をより集めるための戦術として意識的に米国とブッシュを挑発していますが、基本的な内容は非常に真面目なものです。トラブル・メーカーどころか、それは国際社会の目を覚醒させ、未来への希望のための代替案を提示する内容です。つまり、「米国の軍事覇権主義による人類滅亡の道ではなく、この惑星を救い、人類の生存を選択するために」、国連をより民主的で開かれたものにし、国連の機能を強化せねばならないと切実に訴える内容です。チャベスの演説が終わると、諸国の代表から拍手喝さいを受けたというのもうなづける内容でした。
もちろん国連の機能強化によって米国の軍事覇権主義を抑制しようという演説内容に関しては、私も大賛成です。
さてチャベスは、帝国主義による脅威のない国際秩序と平和を構築するために、ベネズエラが非常任理事国に立候補したという経緯を述べ、ベネズエラの非常任理事国入りを阻止しようとする米国の策謀を非難し、国際社会に対して非常任理事国入りへの支持を訴えています。
チャベスの国連改革案とは、(1)国連安保理への途上国の恒久的な参加、(2)国際紛争を回避するための透明で効果的な意思決定システムの構築、(3)常任理事国による「拒否権」という非民主的なシステムの廃止、(4)国連事務総長の権限の強化、の四つです。別に過激でも何でもない、きわめて穏健な主張と言ってよいでしょう。
チャベスは演説の冒頭で、米国の言語学者にして平和活動家のノーム・チョムスキーの著書『Hegemony or Survival(覇権か生存か)』を手にしながら、「アメリカ合州国の兄弟姉妹はこの本を読むべきだ」と述べていました。何と演説の翌日には、アマゾンのネット販売で、このチョムスキーの本が泡沫の中から一躍第3位に躍り出たそうです。演説の翌日にはマンハッタンの本屋でこの本はすべて売り切れになっていたとか。なかなか微笑ましい後日談ですね。(この記事)
米国民のあいだでチョムスキーの本が広く読まれることは、決して大袈裟でなく、世界平和のために大変に好ましいことです。何せ米国民の最大の問題は、チョムスキーの言うように、「自国が世界で過去に何をやってきたのか、その事実関係を知らないことにある」からです。その意味でも、チャベスの演説は大成功だったのではないでしょうか。
是非とも、米国が推すグアテマラではなく、ベネズエラが非常任理事国に選出され、国連改革を進めて欲しいものです。(日本はどうせグアテマラに投票するのでしょうが・・・・)。
<補記>
以上の記事を書いた後、「ん!」さんがTBを下さり、その中で、Emerging Revolution in the South さんの記事を紹介しております。Emerging Revolution in the South さんのサイトを訪れたら、既に先日のチャベス演説の全文を翻訳して下さっていました。この記事です。
さらに、本を紹介された当のチョムスキー本人は意外にもこれまでチャベス大統領と面識がなかったそうで、『ニューヨーク・タイムズ』の取材に応じて「チャベス大統領との会談を希望している」と述べたそうです。チョムスキーの元にはチャベス演説の後、1万件も問い合わせの電子メールが殺到したとか。この記事参照。チョムスキーも、なかなかどうして、結構うれしそうですよ。
しかも成功と(笑)。
やるなあ、チャベス。
アメリカ市民必読の書ですね(笑)