代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

マスコミの皆さん、国交省の捏造はまだまだあります

2012年10月20日 | 利根川・江戸川有識者会議
 10月19日付け東京新聞の一面トップは、国交省が八ッ場ダム建設の根拠としている1947年のカスリーン台風洪水の際の氾濫被害図を捏造したという記事でした。国交省は、標高200mの山の上まで洪水が達したかのような図を作成しているのですが、大熊孝氏が明らかにしたように、そして地元の人々が証言しているように、もちろん実際には山の上まで洪水で浸かったという事実はなかったというものです。詳しくは下記。東京新聞に触発されたのか、テレビのANNニュースでも取り上げられたそうです。
 東京新聞の一面記事は下記です。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012101902000134.html

 この捏造事件についてkajiwara氏のブログが、さらに詳細な地図入りで解説しています。ぜひご覧ください。
http://blogs.yahoo.co.jp/spmpy497/7548352.html

 さて、マスコミの皆さん、捏造は他にもあります。スクープ報道のチャンスはたくさんあるのです。他の事例を一つ紹介します。以下に示す事例は、過去の洪水流量の観測データそのものを改ざんしてしまったという事例です。なかったことをあったこと、あったことをなかったことにしてしまうのですから、ほとんど「旧ソ連も真っ青」という感じがいたします。

観測流量の改ざん

 2010年10月12日に行われた河野太郎議員の電撃質問によって国交省の貯留関数法モデルのウソの一端が明るみなり、国交省は誤ったモデルの全面改訂を強いられました。国交省は、モデルの誤りを直したと称しつつ、八ッ場ダム建設の根拠である「基本高水」の値を維持するために、ウソの上にウソを積み重ねるという薄氷を渡る曲芸を強いられ、捏造を重ねてしまっています。



 上の二つの図は共に国交省が作成した流出解析モデルによって昭和33年洪水を再現したものです。
 左側は、国交省が2005年の河川整備基本方針策定時に提出した資料です。(原図はこちら)。
 右側は、新しくモデルを作成する際に国交省が日本学術会議に提出した資料です。(原図はこちら

 国交省は、2005年の時点では、同省の計算モデルが昭和33年洪水をピッタリと再現できましたと主張して左のような図を出していました。実線が計算値で、点線が実測値(観測流量)です。しかし河野議員の追及を受けて、この計算モデルが森林の保水力を正しく反映していないことが明らかになりました。森林保水力を反映する飽和雨量の値を大きく引き上げざるを得なくなりました。保水力の値を上げると、当然のごとく、洪水の流出量は小さく計算されます。

 実際、右図を見てください。2005年時に使用した「現行モデル(赤線)」に比べ、新しく作成した「新モデル(緑線)」はずいぶんとやせ細って、洪水の流出量は減っています。
 しかしです。国交省は、新モデルの計算値(緑線)は観測流量(青線)によく合っていると主張するのです。左図では、現行モデル計算値と観測流量がぴったりと合っています。右図になると、現行モデル計算値と観測流量は乖離し、新モデルの計算値と観測流量はほぼ合っていると主張されるのです。おかしいと思いませんか?

 そう、国交省は観測流量のグラフそのものを改ざんしてしまったのです。2011年の資料に出てきた観測流量は、2005年時の資料に比べてやせ細ったものになっており、現行モデルから乖離して新モデルに適合するように見せかけているのです。

 計算が間違っていたらグラフの形が変わるのは当然で、これは問題ありません。しかし、過去に実測された観測データが変わることはあり得ません。過去に起こった歴史的事象が変わることは、タイムマシンでも発明されない限りあり得ません。観測データが理由なく変わったとしたら、それは捏造です。2005年資料の観測流量か2011年資料の観測流量のどちらかが、あるいは双方が捏造流量なのです。

 ところが、国交省から新モデルの検証を依頼された日本学術会議は、「新モデルの計算結果は、・・・立ち上がりから低減まで観測流量によく一致している」と礼賛するのです。日本学術会議の公開説明会資料の7枚目のスライドを見てください。以下サイトです。
 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/bunya/doboku/takamizu/pdf/haifusiryoukoukai3.pdf 
 観測流量のデータそのもを改ざんしてしまっているのですから、合うのは当たり前でしょう。「旧ソ連も真っ青」というのはこの点にあります。国交省が出してくるデータは、計算値のみならず、蓄積された観測データすらもまったく信じられなくなってしまいました。国交省の皆様、もう、やめましょう。こんなこと。
 
カスリーン台風洪水の場合

 国交省が八ッ場ダム建設の根拠としているのは、1947年(昭和22年)のカスリーン台風洪水の計算流量です(観測流量ではない)。下の図は、国交省が2005年に河川整備基本方針を策定した当時に出したカスリーン台風洪水の計算流量(黒線)と、河野太郎議員の追及の結果、保水力のパラメータを上昇させて新しく出てきた新モデルの計算流量(赤線)を比較したものです。




 かつて国交省が「正しい」と主張していた現行モデルと、いま同省が「正しい」と主張している新モデルのハイドログラフを比較すると、新モデルはずいぶんスリムなものになっています。明らかにハイドログラフの形状は異なり、洪水の流出量も異なるものになっています。
 図から、洪水の総流出量(縦軸の流量を積分した値。グラフで囲まれた面積)を計算しますと、総流出量は10.7億㎥から8.9億㎥へと、17.3%減少しています。しかるに不思議なことに、総流出量は17.3%減少しているにも関わらず、ピーク流量は2万2170㎥/秒から2万1100㎥/秒へ4.8%しか減少していません。

 新モデルでは、現行モデルに比べて保水力が増大していますので、その分、洪水の規模は小さくなります。奇妙なことに、国交省の計算では、総流量は大きく減っても、ピーク流量だけはあまり変わらない値になっています。八ッ場ダム建設の根拠である基本高水はピーク流量から決定されるので、総流量が減っても、ピークさえ変わらなければダム建設の根拠は死守できるのです。なぜ総流出量は減っても、ピーク流量はあまり変わらないのか、非常に不可思議な話です。

 ハイドログラフを三角形に見立てると、この三角形の面積が総流出量になります。ピーク流量というのは三角形の頂点の高さに相当します。小学生の算数で習うことですが、三角形の面積は、底辺の長さが同じならば、その面積は頂点の高さに比例します。計算のもとになった雨はともにカスリーン台風の実測雨量です。同じ洪水継続時間で同じ波形の雨なのです。三角形の底辺の長さは同じですので、一般的に、面積は高さに比例するはずです。ゆえに、新モデルによって三角形の面積に相当する総流出量が17.3%減少するのであれば、通常は頂点の高さに相当するピーク流量も17.3%減少し、2万2170×0.827=1万8335(㎥/秒) とならなければおかしいのです。

 じつは国交省は、洪水流出量が大幅に減っても、基本高水を下げないため、計算ピーク流量が下がらないよう、kという別のパラメータを操作しています。森林の保水力は上昇しても、ピークだけ減らないように波形を操作しているのです。ピークさえ維持できれば、八ッ場ダム建設の根拠は維持できるからです。
 それにしても、これだけスリムになっているのですから森林保水力の効果は明らかでしょう。しかるに日本学術会議は森林による保水力の上昇は検出できなかったと結論してしまったのです。もちろん大ウソです。
 
 


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