代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

国産牛の振興・治水対策・温暖化対策を同時に行う方法

2005年03月18日 | エコロジカル・ニューディール政策
 3月16日の記事で米国産牛肉の輸入を再開すべきでないということを書きました。本日は、それに関連して、BSEとは無縁な安全国産牛を振興する方法に関して私見を述べたいと思います。「減反水田を復田して牛の飼料米を作付けする」という単一の政策の実施によって、①BSEの心配が皆無な国産牛の振興、②減反面積の縮小、③ダムを代替する治水機能の創出、④バイオマス・エネルギーの振興による温暖化対策などなど、いくつもの効果を同時に狙おうという欲張りなアイディアです。
 これもエコロジカル・ニューディール政策の一環として力石定一氏(法政大学名誉教授)が提唱している政策プランです。私なりにアレンジして紹介させていただきます。

 1980年代初頭には日本全国で水田は300万ha存在しましたが、いまでは減反によって195万haにまで縮小しています。この結果、水田の遊水池機能も喪失し、大雨の際の内水被害の原因の一つになっています。
 そこでダムを代替する治水対策の一環として、水田の遊水池機能を位置づけ(国交省はちゃんと計量化してモデルに組み込むべきです)、減反面積を可能な限り縮小していくべきだと思います。
 しかしながら何といっても減反を止めるとコメが過剰供給になるというのが大問題です。そこで人間が食べる食用米ではなく、牛の飼料になる飼料米を作付けすればよいというわけです。こうしたアイディアはもちろん農林水産省も持っていますが、輸入飼料の価格と飼料米の生産コストに差がありすぎるので、いくら補助金を出しても割に合わないとして敬遠される傾向にあったようです。

 ここで注意せねばならないのは、飼料米の作付けによる減反面積の縮小という政策は、コンクリート・ダムを代替する治水対策の一環ということです。治水事業なのですから、農林水産省からの直接所得補償予算に加えて、国交省の治水予算も補填すべきでしょう。
 水田の遊水池機能を修復するために、畦を修復して30cmの高さを確保するなどの土木公共事業も同時に施すべきでしょう。こんなのはダム予算の数十分の1もあればオツリがくるぐらいだと思います。
 中山間地の棚田で飼料米を作付けする農家には、治水面への貢献分を考慮して手厚く所得補償を行えば、充分に輸入飼料と競争できるようになるでしょう。もっとも循環的で持続性の高い、水田畜産複合経営が復活することになります。これでBSEとは無縁な安全国産牛が市場に出てくるというわけです。

 さらに飼料米からは工業用アルコールが採取できるのでバイオマス・エネルギーの振興を計ります。また牛糞からはメタンガスを採取して、これも炊事など家庭用燃料として利用可能なバイオマス・エネルギーとします。
 さらにメタンガスを採取した後の牛糞は、有機肥料として非常に有効な成分が残るので、これは水田に還元し有機米の生産も可能になるわけです。家畜糞尿のタレ流しによる富栄養化の問題も解消されるでしょう。

 無駄なダム予算のちょっとした転用によって、私たちはBSEの恐怖から解放され、内水被害も軽減し、自然エネルギーも振興し、循環型社会を構築しながら温暖化対策ができるというわけです。
 森林整備による保水力の回復に加え、水田の遊水池機能の復活も、「緑のダム」政策の重要な一部となるべきでしょう。

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