大学は試験が終わって採点中。今年は大学1・2年生に以下のような試験問題を出してみた。
問
「日本が起こした太平洋戦争の結果、アジア諸国が独立を早く達成することができた」という説が存在する。この説の是非に関して自分の考えを述べよ。なおフィリピン、ビルマ(ミャンマー)、インドネシア、ベトナム、中国、インドなどの中から具体的な国の歴史的事例を知り得る範囲で紹介しながら論述するのが望ましい。
受講者の中には右っぽい学生もいれば、左っぽい学生もいる(大多数はいわゆる「ノンポリ」だが)。さらに中国人留学生も多数受講している。回答を読むと、右であれ左であれ、政治的見解がはっきりしている学生ほどよく勉強していて、答案もよく書けていた。
この問題は「定説なんかないし、学会でも激しく争っているようなことだから、模範回答なんかありません。自由に自分の意見書いてくださいね」という趣旨だった。よく調べて事実に基づいて書いてあれば、「そう思う」という回答も、「そう思わない」という回答も両方正解である。
授業の中では、それぞれの国の事例を紹介し、国により状況は異なるので一つ一つの国々を注意深く見ていかねばならないということは伝えておいた。保守的な歴史観を持っていた学生も、左派的な歴史観を持っていた学生も、中国人留学生も、授業を通して議論をし、自分で調べたりする中で、状況は複雑で一概には言えないという点では、認識が接近する傾向が見られた。
保守的な歴史認識を持っていた2年生の回答を一つ紹介する。「私はこの意見はあながち間違ってはいないと考える」と書き、日本が太平洋戦争中にフィリピンとビルマに独立を与えて「アジア解放」の約束を果たそうとしたことを肯定的に評価した上で、中国に関しては「日本が侵略したのは良くなかったと思うが、しかし中国は共産党と国民党が対立していたので、国共合作という形でまとまり、一つになれたという意味ではその後の中国形成につながったと思われる」と書いていた。これは毛沢東の歴史認識と比べても、そう大差はないと言ってよいだろう。また、前期試験で「支那」と表記していた学生が、後期試験では自発的に「中国」と書くようになっていたのは、うれしかった。
左派的な歴史認識を持っていた2年生の回答を一つ紹する。彼は「国によって異なる」と書き、「フィリピンでは宗主国のアメリカから独立することを約束させており、日本は余計なことをしただけ」なのに対し、「インドネシアの場合は日本が組織させた現地軍が独立戦争に貢献している」として、「日本を批判する国もあれば、日本をたたえる国もあるだろう」と締めくくっていた。
中国人留学生の受講生も多かったので、授業中は議論して大変に盛り上がった。中国人留学生にとっても、それまで認識していた「日本」とは別の姿も見えてきたようだった。
ある中国人留学生の回答を紹介する。「日本が起こした太平洋戦争の結果、アジア諸国が独立を早く達成することができた。いかなる事物にも両面性がある。日本が太平洋戦争を起こして、欧米列強と戦って、アジアの国々は革命軍の準備時間を充分取ってきた」。
「毛沢東は私のアイドル」と言ういまどき珍しい中国の女子学生の回答も紹介する。「アジア諸国は長期間欧米列強に植民地として圧迫された。被植民地のアジア諸国は日本に期待した。日本が起こした太平洋戦争は、アジア人の勝利と思われる」。
授業での議論を通して、日本人の左右と中国人の歴史認識は弁証法的に接近してきたといってよいだろう。
問
「日本が起こした太平洋戦争の結果、アジア諸国が独立を早く達成することができた」という説が存在する。この説の是非に関して自分の考えを述べよ。なおフィリピン、ビルマ(ミャンマー)、インドネシア、ベトナム、中国、インドなどの中から具体的な国の歴史的事例を知り得る範囲で紹介しながら論述するのが望ましい。
受講者の中には右っぽい学生もいれば、左っぽい学生もいる(大多数はいわゆる「ノンポリ」だが)。さらに中国人留学生も多数受講している。回答を読むと、右であれ左であれ、政治的見解がはっきりしている学生ほどよく勉強していて、答案もよく書けていた。
この問題は「定説なんかないし、学会でも激しく争っているようなことだから、模範回答なんかありません。自由に自分の意見書いてくださいね」という趣旨だった。よく調べて事実に基づいて書いてあれば、「そう思う」という回答も、「そう思わない」という回答も両方正解である。
授業の中では、それぞれの国の事例を紹介し、国により状況は異なるので一つ一つの国々を注意深く見ていかねばならないということは伝えておいた。保守的な歴史観を持っていた学生も、左派的な歴史観を持っていた学生も、中国人留学生も、授業を通して議論をし、自分で調べたりする中で、状況は複雑で一概には言えないという点では、認識が接近する傾向が見られた。
保守的な歴史認識を持っていた2年生の回答を一つ紹介する。「私はこの意見はあながち間違ってはいないと考える」と書き、日本が太平洋戦争中にフィリピンとビルマに独立を与えて「アジア解放」の約束を果たそうとしたことを肯定的に評価した上で、中国に関しては「日本が侵略したのは良くなかったと思うが、しかし中国は共産党と国民党が対立していたので、国共合作という形でまとまり、一つになれたという意味ではその後の中国形成につながったと思われる」と書いていた。これは毛沢東の歴史認識と比べても、そう大差はないと言ってよいだろう。また、前期試験で「支那」と表記していた学生が、後期試験では自発的に「中国」と書くようになっていたのは、うれしかった。
左派的な歴史認識を持っていた2年生の回答を一つ紹する。彼は「国によって異なる」と書き、「フィリピンでは宗主国のアメリカから独立することを約束させており、日本は余計なことをしただけ」なのに対し、「インドネシアの場合は日本が組織させた現地軍が独立戦争に貢献している」として、「日本を批判する国もあれば、日本をたたえる国もあるだろう」と締めくくっていた。
中国人留学生の受講生も多かったので、授業中は議論して大変に盛り上がった。中国人留学生にとっても、それまで認識していた「日本」とは別の姿も見えてきたようだった。
ある中国人留学生の回答を紹介する。「日本が起こした太平洋戦争の結果、アジア諸国が独立を早く達成することができた。いかなる事物にも両面性がある。日本が太平洋戦争を起こして、欧米列強と戦って、アジアの国々は革命軍の準備時間を充分取ってきた」。
「毛沢東は私のアイドル」と言ういまどき珍しい中国の女子学生の回答も紹介する。「アジア諸国は長期間欧米列強に植民地として圧迫された。被植民地のアジア諸国は日本に期待した。日本が起こした太平洋戦争は、アジア人の勝利と思われる」。
授業での議論を通して、日本人の左右と中国人の歴史認識は弁証法的に接近してきたといってよいだろう。