『白と黒』は一日(14日)休んで今日34話。彩乃(小柳ルミ子さん)退場。第5週からの登場で正味3週だけの参戦でした。
結局この人の存在って何だったんだろう。放送開始前の惹句では“ヒロイン・礼子(西原亜希さん)の良き相談相手となる別荘のマダム”との触れ込みだったので、『危険な関係』(05年)の艶子(姿晴香さん)のような、エンドマークの向こうまでヒロインを温かく見守る“女性としての先輩”キャラかと思ったら、礼子が彩乃に相談を持ちかけたのは聖人の借金の件と、「一緒に生きてくれないか」誘いの件ぐらいなもので、あとは嗅ぎ回ったり質問を浴びせたり、いっそ救急搬送や入院の使い走りをつとめたりしていたほうが多かったような。
愛は硬直した倫理観や体面に縛られるものではなく「本当も嘘もない」、自分を捨てた親をいつまでも憎み続けるのは自分の幸せを遠ざけるだけ、幸せを願ってやってこそ親を乗り越えられる、嫌いな人や憎い相手こそ人生の大事な宝物…など、高邁なんだか手前勝手なんだかわからない人生訓を一方的に披瀝して、相談相手というより礼子たちの人生のひとこまを彗星のように横切って、自らの美意識に殉じ独走で美しく散ってしまった感です。
ムリヤリ彩乃の身になってみれば、末期癌になるまでに体の変調にまるっきり自覚がないわけではなかったでしょうから、繁盛していた東京での商売をたたんで、あえて前夫・桐生の研究所近くに越してきたのには、残してきた息子たちへの情と、「命あるうちになんらかの落とし前を」との一応の覚悟があったのでしょう。礼子への「娘ができたみたい…」発言も、愛する息子の一方の婚約者、もう一方の思い人となれば、実の娘以上の思い入れも湧こうというもの。
それにしても、前クール作『花衣夢衣』の和美(萩尾みどりさん)とは別な意味で「上等じゃん」な気がしないでもない。
大人の事情的には、小柳さんの舞台スケジュールなどを鑑みての“短期集中キャラ”だったのでしょうが。
ところでこのドラマのスペシャルトークイベントが11日にフジテレビの『お台場冒険王』なるステージで行われたとのことで、ドラマ公式サイトに当日の模様が画像付きでレポートされています。東海テレビお膝元での、昼ドラ出演俳優さんを招いてのイベント情報はときどき聞きますが、この画像見ると、今回はどう見てもスカイシアターとかのヒーローショーのノリですな。小さいお友達メインではないだけで。奇しくも(ないか?)佐藤智仁さん、小林且弥さんともに『仮面ライダー』経験者です。
西原さんの「(お客さんが)若い人たちが多いのでびっくりしました」との声もあり、放送期間が学校の夏休みと3分の1以上重なるこのクールを、通常作より若いヒロインと相手役のお話にしたのは、かなり正解だったのかもしれません。
でもどうだろう、あと6週残しての彩乃の退場がどう出るか。今作、昼ドラではおなじみの“財閥”“(旧華族・地主・豪商などの)名家”“(芸能人知名人などの)セレブ”の世界が舞台ではなく、高学識・高教養、あるいは高芸術センスを自負する“知性面(だけ)の勝ち組”が主要人物の大半を占めるため、みんなどこか思慮深かったり、悩みを温っためがちであったり、荒れる暴れるにしても理屈っぽいんですな。人物の身になればかなり緊迫した局面にきても、物語がいまひとつ疾走感不足ではじけきらないのはそのせいもある。彩乃のような「言いたいことを言って、やりたいようにやって、綺麗にまとめて華もあって」というお得なキャラがひとりはいないと、いかに緻密でも丁寧でも、それでは埋め合わせつかないストレスフルなドラマになりそうで、ちょっと心配ではあります。
今日の北京五輪、柔道女子78キロ超級塚田真希選手の決勝は残念でしたね。あの残り時間での一本負けは、ご本人も気持ちの整理が難しいだろうな。
決まった途端ドスンドスン飛び跳ねたり、畳の下のコーチと駅弁スタイルで抱擁したりの喜びようも、会場を声援が埋め尽くす地元中国選手なればこそでしょうけど、複雑な判定方法とともに、どうにも“柔道的”でない感も。
決勝まで来て負けての銀で表彰台に上るのは、対戦競技は何でもそうですが複雑でしょうね。速報で見ていた高齢家族が、「あのおっきい子は、正味何キロあるんだ」と、昔大月隆寛さんがナンシー関さんにぶつけていたような疑問を呈していましたが、正味って、コメダワラじゃないんだから。78超ってくらいだから79は間違いなくあるんでしょうけど、そっとしておいてあげましょうよ、女の子なんだし、柔道家だもの。「おっきくて、強い」で十分じゃないですか。