昼帯ドラマ『さくら心中』は相変わらずそろっとした滑り出しです。
もっぱら深夜録画再生視聴なのでなおさらそう思うのかもしれない。特に今季は正月期のため、週半ばの水曜(5日)からの放送開始で、1~3話の後、土日が挟まりました。ヒロイン・桜子(笛木優子さん)の運命の人・比呂人(徳山秀典さん)との出会いを1話終盤と2話冒頭にまたがってほんわか幻想的に描写し、「また桜を見にきます」「来年の春」と約束とも言えない言葉を交わさせた後、金曜日(7日)の3話にはその比呂人は一度も登場せず、桜子の生母・秀ふじ(いしのようこさん)と郁造(村井国夫さん)との経緯やいさみ酒造の経営苦境、金貸し櫛山(神保悟志さん)の息子で美容師の雄一(大熊啓誉さん)の桜子への無茶アタック、桜子養母のまりえ(かとうかず子さん)の懸念と思惑などを叙述しました。比呂人との“純愛発火”までに、言わば視聴者も桜子とともに土・日の2日待たされているわけで、この引きはなかなか技ありです。
七三分けが微妙に油っこい櫛山社長のほかに、その女房でクチがうまくて軽くて利に敏そうな美容院経営者の真紀枝(『タクシードライバー』シリーズで常連?迷惑客の大島蓉子さん)、年じゅう“健康な多動症”状態の息子・雄一と、おもしろキャラ化しそうな人物のおもしろ表情をワンシーン見せてはすぐ次に行く。夫が家を空けがちなまりえさんの、アルコール依存症予備軍っぷりも、ちらっと垣間見せては深追いせず、次の登場場面では普通にプチ不機嫌な田舎商家の奥さんに。
いままでのこの昼帯枠での中島丈博さん脚本作と言えば、のっけから強烈キャラの仰天台詞やエキセントリック行動、珍奇なアイテム(肖像画やいわく因縁つきのジュエリー、アクセなど)満載で押してくるのがつねでしたが、今作は、“桜の呪い”にでもかかったか、家業経営にも愛人関係のメンテナンスにもいまひとつ心棒が抜けたように重だるげな郁造さんの挙措、たたずまい、一件穏やかで思慮深そうな外見からじんわり漂う“没落の予感”が全篇を覆い、本当に珍しいゆるやかムードの作品です。
たぶん3月最終週まで放送期間があると思われるので、このままのペースで終始するはずもありませんが、最近は“肉薄くして骨顕れる”感が強かった中島昼ドラの中では、ちょっと異色な作になる予感も。
…それにしても、2話で雄一が桜子のためにセットしてあげた髪型ってどんなのだったのか、ワンカットぐらい見せてくれてもよかったのに。桜子さんは髪型自体が気に入らなかったというより、「あんなイヤらしい男の手で触られたと思うと気持ちが悪い」という動機で帰宅速攻解体、シャンプーしちゃったようですが。
この時間帯、裏番組のK柳T子さんみたいのだったんかな。