病気・病院通い系の身辺雑記は書いててあまり楽しくないので、最近ここでも載せていませんでしたが、先日のトラブルはおもしろいくらい急展開だったし、いろいろ教訓、豆知識も得たので書いてみます。
いつも2日がかり~5日がかりで1記事書きあげるペースの当ブログ。段落と段落の間にひと仕事入ったり、出かけて帰宅して続きを書いてまた出かけたり、食事が2回とアルコールが3回ぐらい挟まったりするのは珍しいことじゃありません。先日も、邦ドラマ界の至宝・矢島健一さんの、硝石の如き爆発的慇懃無礼魂胆パワーから書き起こして、せっかく矢島さんを絶好の適所に配したにもかかわらずナニユエ『霧に棲む悪魔』がかくも散漫な読み味に終わったか?の核心に斬り込む、堂々の論陣を張ろうとしたところで時間切れ、入浴介助→就床タイム。
いったんPCも眠らせて、翌朝7:30、BSプレミアムの『おひさま』の音声を背中で聞きながら、南瓜の皮を包丁でずこずこカットしていたら、何でもないところでずこっとすべって左手の指にさくっと入ってしまいました。切ったというより刺さった感触。
一気に流し台近辺、ちょっとした流血の大惨事(ちょっとしてないか)。こういうとき、「うわっこの忙しい時間帯にメンドくさすぎ!」というアセリが強すぎて、ギャーとか痛いとかは声出ないし感じもしないもんですね。ピリッときてにじむ程度の出血の負傷なら台所で年じゅうやってるので、救急キットのある所まで走ってって普通のバンドエイドを貼ろうとしたら、血の勢いが良すぎてヌメヌメしてくっつかないではありませんか。
それでお風呂場まで走っていって水道水でジャー流してティッシュで押さえて、止血用ケアリーヴの上から普通のケアリーヴ重ね巻きして、さらにラップで包んで、指の付け根の“心臓に近いほう”を輪ゴムで締めて、作業再開。『おひさま』は終わってしまっていました。
それから食事が済んで撤収して9:00頃、さて、もっとちゃんとテーピングしてから戦闘開始と思ってラップを開きケアリーヴを剥がしたら、剥がした途端にまたダー流血してやんの。出血部位を心臓より上にしたら止まりやすいと聞いたので、顔の辺りまで持ち上げてみるとアラ本当に止まった。止血用ケアリーヴをもう一度貼って、今度は、数年前足指を骨折したときに買ったテーピングテープを探し出して、細く切って、指の根元を鬼のようにグル巻きにしてみました。
もう出かける時間なのですが、手から出血しそうな状態で着替えや化粧をするのはとても気の進まないものです。ゴム手はめて恐る恐るやってたら、なんと、髪をまとめ終わった頃にはゴム手の中がヌメヌメ真っ赤になっておる。心なしか中がナマ温かい。
「絶対、血管切れてる」「そんなに血が出てて痛いと感じないのは、神経も切れてて、麻痺が残るかも」と家族のヤツらが寄ってたかって鬼のように脅かすので、平日でもあり、病院行くか仕方がない!と決心したものの、いちばん近くで、高齢組・非高齢組ともどもいちばん頻繁に受診している総合病院はもう午前中の受付は終わっている時間です。午後の受付は12:30からで、診察が始まるのは13:00から。公立総合病院のつねで、初診だと問診ブースに通されて、どこがどんな症状ですか?いつからですか?これまでに大きな病気や入院は?とミャクミャクと質疑応答しなければなりません。救急で血を流しながら駆け込んで行ったらその限りじゃないかもしれませんが、いずれにせよお昼休みが終わるまでは受付が開いていない。
こういうときは災害救急当番病院の出番ではないかと思い、PCを起こして検索しようとしたら、「救急病院なら毎日ココに載ってる」と、家じゅうでいちばん新聞を丹念に読んでいる高齢家族その1が、朝刊の市内面を広げて見せてくれました。
当地、平日の救急指定病院は3ヶ所。えーと、距離的にいちばん近そうなのはU記念病院です。心臓より高く片手をあげたまま電車やバスに乗ったんじゃ目立ってしょうがないからタクシーで行くしかありませんが、ここなら2区間ぐらいで着きそう。
しかしちょっと待てよ。当地ではU病院は民間としては有名どころで、故人となった先代の院長先生はTVローカル番組の健康コメンテーターとしても活躍した、ユニークなタレントドクターみたいなかたでしたが、脳血管外科のイメージが強いんですよね。南瓜の皮剥いてて包丁で切った指とか、いくら救急とは言え診てくれるものなのだろうか。
半信半疑で「これこれこういうわけで血が止まらなくて」と電話すると、事務的にソフトな女性の声で「すぐ対応しますからどうぞ」とのこと。
まぁ、ひと安心。ヌメヌメのゴム手をお風呂場でヌメッと取ってもう一度洗い流して、顔の高さで改めて止血絆貼って、今度は伸縮包帯で巻いてさっきの細切りテープで付け根を締めて、外へ出てタクシー拾って、乗ってる間じゅう顔の高さのまんま、片手ハンドパワーかはたまた即位の宣誓しようとしている人かみたいな格好でU病院に到着。
さすが救急病院、問診などはいっさいなく、処置室からすぐ看護師さんが出てきて、「何時頃切りました?どんな刃物で切った?包丁?カッター?スライサー?」とさくさく口頭で聴取して即、診察室へ。
救急当番と言えば、インターン終わりたてみたいなういういしいお医者さんが出てきそうなイメージでしたが、おや、白髪まじりの、結構風格のある先生が登場。「包丁ですかそうですか、包丁で切るとかなり深く切れるんですよね、チカラが入ってますからね」と、拍子抜けするくらい愛想よく親切。「あー、根元で縛りましたか、これね、やらないほうがいいんですよ」えっそうなの?「血行が悪くなって、かえって治りが遅くなるんです。もっと深いところにある動脈を傷つけた場合は、心臓に近い付け根で縛るのが有効ですけれどね、そうそう滅多なことで動脈は切れるものじゃないですし、切ったらビューッと噴水のように噴き出したり、どくんどくんと脈打ちながら溢れてきたりしますから、この程度ではすみません……(止血絆剥がしながら)あー、やっぱりまだ出血するなあ」そうなんですよ。それで来たんです。「一度ギュッと押さえてね、それで止まらなければ、何度やっても止まりません」じゃあこの4時間ばかりはムダにあせって、ケアリーヴだいぶムダにしちゃってたわけだ。
「…やっぱり、かなり深いですね」深いですか。愉快じゃなくてフカイですか。『あさイチ』の柳沢さんみたいになってるな。
「縫いましょう」うわ、やっぱり。切った傷で救急病院まで駆け込むと、十中八九、ここに行き着くとは覚悟はしていたが。
「麻酔してから(縫合)しますから」いや、麻酔してもらわないと困るし。「ちょっとチクッとするだけです」そう願います。心から。
……このね、「縫いましょう」のときの先生の声音が、微量「ワーイ♪」ってニュアンスだったのが苦笑もんでした。外科の医者って、『白い巨塔』の財前五郎ちゃんじゃないけど、基本的に切ったり縫ったり、積極的にやりたいものなのね。やりたくてウズウズしてるのね。
診察室の中の台に仰向けに横になって手を出して、指の付け根の右と左にチクッ、チクッと麻酔注射された感触だけで、あっという間にちゃっちゃと縫合完了。患部に屈み込んでじっと見て、縫い始めるときに先生が「…あー、相当深く切りましたね」ってもう一度「ワーイ♪」な感じでコメント。今度はワーイの後にかるーく「ぬふふ♪」も混じってたような。まぁ、あんまりしょぼい、「この程度で病院来んのかよ」みたいなキズよりは、そこそこキズらしいキズのほうが縫い甲斐があるってもんでしょうが、患者としてはふぅーーーです。
「3針、きっちり縫って留めましたから」もっと縫いたかった?「今日はもう出血しないと思います」「切った後3日がいちばん感染のリスクが高いので、化膿止めの薬を3日分出しておきます。飲み切る前にもう一度診せて下さい」抜糸とか…?「1週間か10日後ですね。今日1日は濡らさない様に」…怖くてとても濡らせません。ゴム手の新しいのを買って帰らないとなぁ。クチのところをビニテで塞いで水が入らないようにするか。剥がすとき毛が毟れて痛いけど。
診療費4,000円ほど支払うことになりましたが、先生が終始、明らかにニコニコ、キモチ良さげだったので、むしろこちらのほうが“キモチ良くしてあげ料”頂戴したい気も。新手の援助交際みたいになるか。インターン明けっぽい青二才救急医にぶっすりビクビク処置されること考えたら、ベテランそうなニコニコ余裕な先生に当たってこっちもよかったから、差し引き行って来いか。
おかげ様でめでたく、やっと完全止血して帰途へ。まだ午後浅く日は高く、それにしても長い半日だったこと。顔の高さ上げは卒業して、普通に手を地面に向けてお薬をもらって帰宅すると家族から「風呂場から洗面台から、そこらじゅうテキカケッコン(滴下血痕)だらけだった」と、『CSI』の見すぎまるわかりなダメ出し攻撃。
「ルミケン(=ルミノール検査)やったらあすこも、ここもボーボー光る」だって。いつからウチは米沢さん(@『相棒』)の巣窟になったのだ。そこらに噺家や鉄道のDVD隠れてないか。それにルミケンって。小柳ルミ子さん大澄賢也さんなら10年以上前に別れてるし。
ホント、ああいうとき、うわーやっちまった!というパニクりがあまりに急に、瞬間的に襲うので、痛いとか血が出てるとかはあまり意識がないもんです。そう言えばあの先生、薬の処方箋を出すときに「化膿止めと一緒に痛み止めも3日分出しておきますが、こちらは麻酔が切れた後、痛くなければ服まなくてもいいですよ、痛みに関しては女性のほうが強いですから」と、やっぱり微量「ぬふふ♪」調で付け加えてましたっけ。知ってますよ。ついでに言えば“出血、流血にも女性のほうが強い”んでしょ。毎月、自分のを見てるから。
こんなわけでしばらく片手飛行。『霧に棲む悪魔』核心論陣張れるのはいつのことになるやら。『おひさま』での矢島健一さんは相変わらず過不足無しのいい仕事をしておられますねぇ。陽子ちゃん(井上真央さん)、ママになっても辞めないでね。もう少し萩原校長の出番が見たい。
女性の社会進出時代が始まったら萩原校長、「ワタシはカネテから女性の能力発揮こそこれからの日本人を育てる教育の根幹だと考えていたんです」なんて、絵に描いたようなしたり顔でのたまうのでしょうな。ドラマ時制でいま昭和21年だから、その頃には定年してるか。