えらいことになってまいりました。先週から、月河がせっせと後片付けと浴室掃除をしている時間帯に、BSプレミアム『赤と黒』(22:00~)をチラ視聴している高齢家族が、「おもしろい」と言い出したのです。ついに月河家も、一時代遅れて韓流の波に席捲されるか。しかも年齢が高い順に。家の外に街宣車が来たりすまいね。
主役ゴヌクの俳優さんを「なんか、いい」とか言い始めたし。『善徳女王』のピダム役で初めてこの人を見たときは、さほどの好感もなさげだったのですがね。『赤と黒』ではズラなしナチュラルメイクの、オフ日のホストみたいなラフスタイルでの登場なのがヒットした模様。毎話アバンタイトルの、ジャケ袖ロールアップで裏地を見せたスタイルを見ると、月河なんかは「マッチ(近藤真彦さん)…」と毎度、心の脳裏をよぎるのだが。
あまつさえ高齢組、「実家の上の姉の、最初の(=離婚した)ダンナがこんな(容姿の)感じだった」と、世界中で3~4人にしか意味通じないことまで口走り始めたではないか。いつの話だ。戦争前か後か。存命人物か。これはどんヅボの気配。
芸名キム・ナムギル“金南佶”さん。確かに、“いかにも韓流イケメン”という、型に嵌まったイメージとはちょっと毛色の異なる二枚目さんで、“かぶる”俳優さんが同国に見当たらないので、監督やプロデューサーらに惚れ込まれ特異な役にいろいろ起用されそうなタイプですね。ヨン様以来の日本のディープな韓流ドラマファンにも新鮮に映りそうです。ヨン様など所謂“四天王”系にはない、いい意味の山だし感がある。
製作側のこの人への嘱望体温と、この人が持てる芸能力量で観客に掻き立てる体温とが、まだバランスしていないような気もしますが、大人の事情によるとこの『赤と黒』撮了と同時に速攻兵役入りとなり、来年春まで軍にいるそうで、役者としての全面開花、真価が問われるのは除隊後かもしれません。
しかしながら、月河はアンテナの周波数が違うのか、監督やホン書きさんがなんぼこの人で“萌やしにかかって”来ても、うっとりとか胸キュンとかの範疇にどうしても行かないんだよなあ。どこが物足りない、何が気に入らないという問題ではない。理屈じゃないんですね。
ただ、この人の背後で、この人に惚れ込んで一生懸命ライトアップしようとしている企画者、スタッフさんたちのなみなみならぬ熱気は、チラ見レベルでもびんびん感じます。
洋服やアクセの店でも、今季はコレで客の財布を開かせるぞ!とチカラの入ったアイテムの陳列棚を通ると、好き嫌いは別として独特のオーラに当てられ、自腹の財布開く気は微塵も無くても、確実に気分は高揚しますよね。高揚しついでに、通り過ぎたその先の店で軽く散財したりする。
ゴヌクが何かするたび、何か誰かに目をやるたび、日本のどこかから「うっとり」「キュン」「じゅわん」という“音”が聞こえてくる。コレ、素直じゃないけど結構愉快な視聴体験です。録画完了・一気通貫が楽しみになってきました。
日韓共同制作というカンムリで、主題歌は日本人の歌う日本語楽曲です。フォトからレディコミ風の描線になって、配役紹介というより役者さん紹介のグラビア風ポーズで決まるOPも、韓国製ドラマならではの“臆面のなさ”が炸裂していていい感じ。
気がつけば、主題歌も知らず知らず耳の奥で静かにリフレっていたりする。韓国では、いろいろと歴史的な経緯があって日本語の楽曲は放送できないので、同国で人気の日本人歌手も、韓国語でセルフカバーしないと持ち歌を披露できないと長いこと聞いていましたが、2011年現在はどうなのでしょう。このドラマ本放送時は、やはりカバーヴァージョンだったのかしら。
あるいはこの曲の歌い手さんも、日本語っぽく聞こえないような歌唱法であえて歌っているのかも。
……そのせいか、なんとなく歌詞を聴き取りミスっているような気もしないでもない。……気のせいか。