イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

だんだんじりじり

2012-02-04 01:15:38 | 朝ドラマ

全国の『カーネーション』高体温ウォッチャーが先週あたまから、気になってしかたがなかったのは、糸子(尾野真千子さん)と周防さん(綾野剛さん)のままならぬ恋の行方より、123日(月)早朝かけめぐった“ヒロイン終盤交代”の報のほうだったのではないでしょうか。媒体によっては“降板”というニュアンスで表現しているところもあったり、そのエントリがまた短時間で削除されたりして、何やら尾野さんに問題発生?長丁場だけに体調が?そう言えばここ何週かのオンエア、開始当初にくらべてお肌ツヤが心なしか…なんてつい録画を静止画で見返し、思いっきり要らぬ心配にややしばらく明け暮れてしまいましたよ。

朝ドラの歴史を遡れば、本当に体調不良で年齢設定そのまんま交代したヒロインや、作家さんと対立して自主降板の格好になったヒロインもいて、ドラマ本編以上に話題を撒いたこともありましたからね。

『カーネーション』は放送開始前、オーディションでヒロイン決定発表ぐらいの時点では、NHKの当該サイトで「尾野さんが糸子の何歳までを演じるかは未定」とされていました。それが放送開始直前の昨年9月に発売されたドラマガイド本では、脚本の渡辺あやさんが「せっかくひとりの女性の一生を書くのですし、ヒロインが亡くなるまでをしっかり描きたい」とかなり明確なクロージングスタイルを提示しておられ、糸子のモデルとなった小篠綾子さんが生涯現役を貫いて92歳の天寿をまっとうされていることもあり、30歳になったばかりの尾野さんに探偵左文字進ばりの特殊メイクをほどこして“お元気な九十代”演技してもらうのはさすがに無理があるとの判断が下ったか。

んなら満59歳の夏木マリさんになら“特殊”メイクでなくできるからいいのか?って問うていったらえらい失礼な話になりますが、設定年齢や外見年齢の問題とは別に“個性の違う3人の娘を、女手ひとつで育てあげ世界のファッション界に羽ばたかせた”ことがこのドラマの、ヒロインのヒロインたるキモのところですから、立派にデザイナーとして功成り名遂げた娘たち役の皆さんとひとつ画面に並んで“母親感”“お母ちゃん感”が出るようにと考えると、交代のほうが自然と言えば自然。

設定昭和12年生まれの長女優子役が実年齢30歳(←尾野さんと同い年)の新山千春さん、同じく14年生まれ次女直子役が27歳川崎亜沙美さん、18年生まれ三女聡子役が29歳安田美沙子さんですから、3人娘がパリにローマにロンドンにと地歩を固める昭和40年代後半~50年代となると、娘役さんたちもかなりの年上メイクで臨まねばならず、お母ちゃんはさらにその上に見せなければならないわけです。晩年パートの展開、セリフ、絵コンテづくりが具体的にかたまった頃、人選を含めて“走りながら決まった”交代と考えたほうがいいかもしれません。

ひとりのヒロインを、幼少期→青春~中年期→晩年と3交代で演じられた朝ドラと言えば、1983年(昭和58年)~84年(59年)の『おしん』が思い出されますが、リアルタイムではあまり濃密に見ていなかったせいもあるのでしょうけれど、いまとなっては頬っぺの赤い小林綾子さんの少女おしんが筏で奉公に出されて行く場面の記憶しかなく、“田中裕子さんがヒロインだった朝ドラ”という印象は意外に希薄です。田中さんが『おしん』の数年前に『マー姉ちゃん』で準ヒロインとも言える次妹役でブレイク済みだったことも影響しているか。

夏木マリさん起用に特に不満はありませんが、ドラマの着地部分が尾野さん担当でなくなったことで、“尾野真千子さんヒロインの朝ドラ”という純粋さが少し曇ったような気がするのは残念。1980年代から映画『鬼龍院花子の生涯』『十手舞』などで夏木さんの、歌手の余技とか延長線にとどまらない存在感は既知ではあるものの、夏木さんと言えばあの目ヂカラですよ。“歴然と強気”“どっから見ても伝法でパリシャキ男まさり”というイメージが、いまの『カーネーション』にとっては、逆に邪魔、と言って過言なら、“惜しい”ような。どちらかと言うと地味でおとなしげなヴィジュアルの尾野さんが演じるからこその、豪気でガハハな糸ちゃんだと思ってずっと視聴してきましたから。

しかしまた、中年期まで演じて絶賛中の尾野さんを交代させてまで「晩年~死去まで」にこだわった脚本を採用したのですから、それはそれで別の楽しみができました。夏木さんが演じる糸子の晩年姿に、青春期~働きざかりの尾野さんの糸子、だんじり大好きゴンタ娘の二宮星さんの糸子が重層しながらエンディングを迎えるような、素晴らしい余韻に満ちた終盤を期待していいのではないでしょうか。いや期待しましょう。期待し過ぎるくらい期待しなきゃウソです。期待するのが視聴者の務め、期待にこたえるのが脚本家、演出スタッフさんの務めです。ここまで来たらとことん、だんじり神輿の上行くぐらい高ハードルで行きましょう。

コメント
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