梅子(堀北真希さん)も先週からはや人妻(@『梅ちゃん先生』)。
不思議なもので、梅ちゃんは結婚してノブ(松坂桃李さん)夫人になってからのほうが娘ムスメして見えますな。本業の開業医のほうがスーパー暇そうだからかもしれない。アメリカに旅立った松岡医師(高橋光臣さん)から引き継いだ末期癌の早野氏(津嘉山正種さん)をしっかりじっくり看取ったほかは、ときどき扁桃腺腫らして来る患者程度で、忙殺されるほどの仕事はない模様。昭和31年の桜の季節に祝言、いま設定11月頃ですから食当たり多発期も過ぎたし、あとは季節性インフルエンザくらいか、患者殺到しそうなのは。小花柄ブラウスに無地スカートに白ソックスで嫁ぎ先=お隣の安岡家と、実家=下村家を行ったり来たりしていると、梅子は生涯でいまいちばん“娘さん”らしいような気がしてきます。
医者“も”やってる、20代半ば過ぎの“結婚してダンナと実家で暮らしている娘さん”と、その娘さんを取り巻く日常。何てことないと言えばこれ以上何てことないドラマもないんじゃないかと思いますが、これまた非常に不思議にも、大した起伏も感動も無いにもかかわらずドラマの流れも絵もショボくならないのは、ひとえにヒロイン堀北真希さんの持つ華の然らしむるところとしか言いようがない。
思い起こせば、小学校の頃、特に高級な服を着ているわけでもなく、金満家や偉いさんの子弟でもないのに、なんとなーくノーブル風味の浮き世離れ感を漂わせている子っていたものです。成績は特別良くはなく、むしろ「お返事が遅い」「わかっているのに手を挙げない」等の件で先生にたしなめられることのほうが多い、要するに万事ゆっくりで抜けている。ただ何でノーブルっぽく見えるかと言うと、たしなめられてもからかわれても、追いつこう埋め合わせようとガツガツしないからなんですな。
堀北さんの、役柄抜きの“地”はまさか梅子の様なボケ・ドジ・ズレっ子なわけはないでしょうが、“底ヂカラ”ならぬ“底ノーブル”な浮き世離れ感、いるだけでスポットライトを引き連れている、いやいっそスポットライトを“内蔵”しているかのような底光り感はもう、天与のものだと思います。この人を主役に据えている限り、ドラマはとことん荒唐無稽でもいいし、逆に、とことん何てことなくてもいい。何をしてもいいし、何もしなくてもいい。
ダレてもしぼんでも、ヒロインの華が底支えしてくれるし、逆に、大当たりしてもヒロインの“華の総量”を超える華々しさにはならない。どっちに転んでもすってんてんにはならない。今期の朝ドラはある意味最強のキャスト選択をしたものです。