イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

冨久作用

2013-09-21 00:46:27 | 昼ドラマ

 秋に入って嬉しいことに、昼帯ドラマが久々に、いい具合にキナ臭くなってきました。2日(月)からスタートの『潔子爛漫』(きよこらんまん)。この枠では、いつ以来か思い出せないくらい久しぶりの明治もので、清廉な小学校長(渡辺裕之さん)を父に持ち、武家の誇りを第一に育ったヒロイン(福田沙紀さん)が、誠実で気の優しい医者の息子(石垣佑磨さん)と兄妹の様な清らかな絆を育むも、野心家の議員秘書(加藤慶祐さん)に見初められ、その父で幕臣上がりの、歪んだ権勢欲を持つ官僚(高知東生さん)と接点を持ったことから運命が狂い始め・・という、王道の“ままならぬ純愛”ロマンです。 

 潔子役の福田沙紀さん、名前は何年も前から聞いていたものの、ちゃんとお芝居するところを見て顔と名前が一致したのはここへ来て初めてです。整ったお顔立ちだけれどまたずいぶんとアゴが男性的に張った・・と思っていましたが、今作に関しては“明治日本のラファエル前派”美女と思えばナイスマッチでないこともない。ダンテ‐ガブリエル・ロセッティは自分の恋人がこういう輪郭の顔立ちで、よほどぞっこんだったらしく数々の神話や文芸作品の人物になぞらえて描いていますね。ドーバー海峡を越えて彼と交流があった、ベルギー生まれでウィーン分離派のフェルナン・クノップフも、好んでこれ系の輪郭の、濃い顔のスフィンクスやメドゥーサを描いていました。
 

福田さん、和風の“十九世紀末顔”だったんですな。国民的美少女コンテスト出身ですが当初から演技力は定評があったのに大ブレイクというわけにいかなかったのは、微妙にいま風の美貌ではないところが足を引っぱったのかも。この枠の明治ものはまたとないチャンスかもしれません。
 

ヒロイン潔子、敬愛するお父様は悪い官僚に陥れられて汚職の容疑を着せられ、拷問の末釈放されるも肺を患ってはやばやと無念の死、潔子は生計のため料亭の女中となりますがここにも悪い女将に悪い旦那、悪い女中頭(『八重の桜』では山本家の忠実な下女さんだった山野海さん)に、客も朋輩の女中たちも、店のシステム自体もドス黒いわけありで、序盤の本命の医者息子とめでたくハッピーエンドになるまで(なるのかオイ)どれだけ紆余曲折があるものやら。福田さん扮する潔子が、“やられっぱなし”ではなさそうで、結構根性太そうなツラガマエをしているので、うまくいけば痛快さのある明治ロマンが期待できるか。
 

その医者息子=超ポジティヴ楽観的正義漢・蒼太を演じる石垣佑磨さんも、どこかしら脳筋で、一途過ぎてお間抜けな表情なのが、男顔の潔子とナイスカップル。ゴールインしたらどえらくカカア殿下な夫婦善哉になりそうで、見える未来が明るいのがいいですね、このドラマ。
 

昼帯ドラマの時代ものの魅力のひとつに“クサい台詞を臆面もなくぶち込めること”がありますから、どんどん行ってほしいですね。序盤「それが武家の女の道」「おのれの心に従う事」の“ゾ言葉”でシーンを引き締めてくれた潔子祖母にして、肥前佐賀の大名龍造寺家の血を引く姫・冨久(松原智恵子さん)が第一週なかばで他界されてしまったのが残念。『ゲゲゲの女房』のおばば(野際陽子さん)のように、“あの世目線”で潔子を見守りつつナレーションしてほしいものぞ。

いらないバイク買い取るぞ(“象”だった)。
 

もうひとつ不満を言えば、タイトルバックと提供スポンサーベースのアニメーションが、もろにCGCGしていて“和”な手作り感や、良き古風さがないことぞ(はまってしまった)。画面いっぱいの楓紅葉が花になり、花がとりどりの傘になる。色彩は美麗なのですけど、奥行きがないし、かつての昼帯のOPによくあった、“この映像のこのカットが展開や結末を暗示しているのかも??”と深読みしたくなる思わせぶりさが無い。“潔子爛漫”という題字や話数表示が縦書きなのはいいけれど、ならばもうひとつ頑張ってキャスト・スタッフクレジットも倣ってほしかった。
 

昨今、単発SPではない、連続ものの時代劇はNHK大河とBSプレミアムぐらいでしか制作されなくなっています。昼帯ドラマには昼帯なりの身の丈の、豪華スケールでないからこそ出来る作品がまだあるはず。手を抜かず、“いまどき役者の明治コスプレ”に堕さない様、細部に気を入れて頑張っていただきたいものぞ。 

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