3日(火)からヒロイン成人後の第2部に入った『非婚同盟』は、なんとなく05年の同枠作で石川達三原作だった『契約結婚』を思い出させるところがあります。
由起子(佐藤仁美さん)が提唱し小百合(秋山エリカさん)和子(李千鶴さん)が唱和する“非婚の誓い”なるアタマデッカチなものに、家族や周囲が振り回され、ご当人たちも誓いと実人生との間で引き攣れを起こし…という構図。
由起子本人はすこぶる斬新で革命的な信念と実践のつもりでいるようですが、設定1987年以上に古い古い。これでドラマが成立するためには、“男は皆結婚したがり”“その動機は女性を性的に隷属させ独占したいため”“男だけではなく世間一般、皆結婚万歳、結婚を女のマストアイテムと決めてかかっている”という状況が彼女たちを包んでいなければならないのですが、87年=昭和62年のバブルまっさかりの日本で、これはすでに古過ぎ。
当時の経済の右肩上がり急上昇は、女性が未婚時代は箱入り家事手伝いお嬢さん、結婚後は専業主婦として親や旦那の年収の範囲内でしか消費しない状態を脱し、“自分も稼いで自腹で消費”にすでに変わっていたから、生産力も消費も急カーブで伸びたのです。自前消費で目も舌も肥えた女性をよろこばせるために、男性はさらに競って大盤振る舞いした。「セックスはオッケー、でも結婚も出産もせず一生自立」なんて女の子は、男性軍には美味しいわラクだわ、おもしろいわでむしろ大歓迎だったのでは。
「セックスと非婚の論理は全然矛盾しないわ」「結婚しないことと男性と付き合うことは別よ」と、由起子は滔々とまくしたてているけれど、とっくに崩壊した帝国を仮想敵国にして軍事パレードして見せたところで陳腐なやら空疎なやら。控えめに言っても、目クジラ立てて敵視し対抗せんとチカラコブ作る、その相手がかなり間違っている。
“近・時代物”としても微妙。和子も小百合もいま風のストレートヘアで眉も細めでバブリー感がなく、いっそすがすがしいくらいの下心全開で小百合を口説く雑誌編集長(井田國彦さん)も演歌作曲家みたいなシャツインネッカチーフ。昭和50年設定の第1部で、和子の父親(宮内敦士さん)が紙芝居屋という時点でかなりパラレル日本感が強かったこのドラマ、ヒロインたちの時代遅れな小理屈が捲き起こすドタバタだけでは、あけすけなセリフ、下ネタ連射なわりに、片っ端から口の端で微苦笑してスルーで、あまり面白どころが見つからないかも。
月河はむしろ、いつのまにか伊庭家の“通い道化”みたいになっている紙芝居屋と、半身不随で男性機能も失い社長業も半隠居状態の猪士郎(白髪混じりカツラ着用でますますコント全開風間トオルさん)との妙なハーモニーテンションのほうにそぞろ興趣が湧きます。昭和62年の東京でいまだに本業が紙芝居(もちろん猪士郎から財政援助受けての操業でしょうが)ってだけでマスコミが参集しそうですがね。
4月クールからのこの枠の作品もすでに発表されています。『エゴイスト ~egoist~』。「大事なことだから二度言った」みたいなタイトルですな。某大手のメンズフレグランスとはもちろん無関係でしょうね。化粧品各社もスポンサーに名を連ねる枠ですしね。
やはりと言うか、この作品は従来の3ヶ月1クールではなく、4月6日(月)~5月29日(金)の2ヶ月、実質8週だそうです。裏のTBS系“ひるドラ”枠が13:00~の“愛の劇場”枠ともども3月一杯で終了するとは既報の通りですが、ついに月河の贔屓のフジ・東海テレビ枠も“縮小”“小型化”の波に呑まれた感あり。
東海テレビのサイトでは「スピード感あふれる展開」を強調、“縮小”とは意地でも認めたくないクチぶりですが、話数を少なく放送期間も短くすれば製作費も小ぶりで済む、これは客観的に動かしようのない事実です。
ここのところ、3ヶ月の尺をメインストーリーがもたせきれず、水で割って伸ばしたり詰め物をして膨らませたりしたような作品も増えてきており、話数短縮化は早晩来るだろうなとの予感はありました。長大だけがいいわけではもちろんなく、山椒は小粒での喩え通り「最終話が来るのが惜しい、もったいない」と思えるくらいの、締まった、密度の濃いドラマをまずは期待しておきましょう。
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