イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

つかみは王っ家ー?

2012-02-05 01:33:13 | 夜ドラマ

最近はここでその話しかしないくらい、濃密視聴は継続中なものの、『カーネーション』熱は昨年暮れ辺りに比べると個人的に若干冷め気味です。

“ヒロインの恋愛”で急降下してしまう凡百の朝ドラのたどる道は免れ、糸子(尾野真千子さん)らしい、糸子にしかできない恋の選び方→盛り上げ方→戦い方→決着のつけ方で、さすが違いのわかる朝ドラ!とうならせてくれたのですが、やはり子供世代のお話になってしまいますとね。

“個性開花し始めた子供たちに振り回され気を揉まされながら、自分なりのやり方で応援し幸福を願う母親”像に、糸ちゃんも過不足なくはまってしまって、ずっと“異能で異色の人”“先鞭の人”だった彼女の、衝突っぷり摩擦っぷり、道のこじ開けっぷりをこそ痛快がり、楽しんできた身としては非常に物足りない。最近では長女・優子(新山千春さん)や次女・直子(川崎亜沙美さん)に比べて、糸子が画面に映っている時間も、台詞自体も減り勾配です。

どうなんでしょう、「子を持つ親となったら、自分の願望充足より子の幸せ第一であるべし」という無意識の前提が、制作する側にも視聴する側にも頑強にあるから、どうしてもそう作り、そう見えてしまうのかもしれない。“母”という属性は、ドラマでも小説でも、女性人物において最強ですからね。どんな異能の、ユニークなヒロインでも、子持ちであれば子供中心に回るほうが“見やすい”ということはある。

流さないでちゃんと観察していると、3人姉妹それぞれに、糸子のDNAや、幼時の接し方の影響の片鱗が、違う角度から言動の端々にあらわれている点など、糸子子持ち篇だからこそ味わえる興趣が、あるにはあります。善作お祖父ちゃん(小林薫さん)にベタ可愛がりされた長女の優子は、進路を決めるにもどこか甘ったれで“褒められチヤホヤされていないと腰が上がらない”ところがあるし、いちばんのゴンタ娘ゆえにいちばん糸子らが手を焼き、頭を悩ませ構いもした次女の直子は、母の気性をいちばん濃く受け継ぐだけでなく、その母親の関心や評価に敏感で、なおかつ“突出していてこそ私”という意識も強い。父親の顔もお祖父ちゃんの顔も知らず、姉ふたりの張り合いにも我関せずな末っ子・聡子(村崎真彩さん)は、いっそ千代お祖母ちゃん(麻生祐未さん)のほうに近いスローライフ自然体っぷり。

決しておもしろくなくなったわけではないけれど、でもやはり子供たちの話にはあまり興味が湧かないのです。母娘物語も、きょうだい物語も要らない。やってくれて迷惑なこともないけれど、そんなに嬉しくも楽しくもない。『カーネーション』で見たいのはそういうものではない。

月河がずっと見ていたいのは小原糸子という人物なので、小原糸子でなければできないデザインのアイディアや商法、営業法、時代と人との出会いと、出会いがもたらす転変の話をこそ見たいのです。

そんなわけで、昨秋以降はほとんど『カーネーション』以外何も見ていなかったTVも、年明けから他の番組にちょこちょこ手を広げてみることにしようと。

まずは何をさておきと、新作大河ドラマ『平清盛』18日~)をいってみましたが、これは2話で早くも下車。ご当地の知事が画面の暗さ汚さにクレームつけたという話題のほうが、ドラマ本編より大きく取り上げられてしまいましたが、画面どうこうより、ストーリーなのかキャラ作りなのか、とにかくどうにも掴まれないし引き込まれないのです。源平ものには月河世代より親しい高齢組がまったくそっぽを向いてしまいましたし、もうたぶん、終了するまでチャンネルを合わせることはないでしょう。

タイトルロールの平清盛(松山ケンイチさん)がヴィジュアルも人間性もいまひとつキレを欠きカッコよくないせいもあるだろうし、脇も含め人物全般トゲトゲ、イジイジ、ギスギスしていて物語世界の空気が息苦しい感もある。出てくると楽しくなる、可愛げのある、あるいは爽快さのあるキャラが見当たらないのです。

月河は日曜には必ず朝のスーパーヒーロータイムを欠かさないので、同じ曜日の夜のゴールデンタイムは“国営放送が大人のために作るSHT”に徹すればいいのではないかといつも思うのです。国営放送が作るから、正統派。大人のためだから、豪華予算にホンも充実、キャストも芸達者、旬のスター揃い。1話見終わってスカッとし、次はどんな敵が来襲するのだろう、どうやって、どんな技で撃破するのだろうと家族で話に花が咲く。歴史素材なら、大づかみな起承転結はすでに出来上がってそこにあるのですから、あとは解釈と脚色と肉付けです。むずかしいことは要らないのに、どうして敢えて“あんまりカッコよくなく”作るのでしょうかね。カッコよくすると安くなるとでも思っているのかしら。

源平構図ではどちらかというと“絢爛たる巨悪”的なポジションの平清盛。スーパーヒーロータイムでも昼帯ドラマでも、強くてクールな敵役・派手でケレン味たっぷりな憎まれ役にまずは目が行く月河は、清盛をヒーローポジションに置くドラマならいけそう!とかなり期待したのですが、初っ端から大きな外れを引いてしまった2012年でした。

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だんだんじりじり

2012-02-04 01:15:38 | 朝ドラマ

全国の『カーネーション』高体温ウォッチャーが先週あたまから、気になってしかたがなかったのは、糸子(尾野真千子さん)と周防さん(綾野剛さん)のままならぬ恋の行方より、123日(月)早朝かけめぐった“ヒロイン終盤交代”の報のほうだったのではないでしょうか。媒体によっては“降板”というニュアンスで表現しているところもあったり、そのエントリがまた短時間で削除されたりして、何やら尾野さんに問題発生?長丁場だけに体調が?そう言えばここ何週かのオンエア、開始当初にくらべてお肌ツヤが心なしか…なんてつい録画を静止画で見返し、思いっきり要らぬ心配にややしばらく明け暮れてしまいましたよ。

朝ドラの歴史を遡れば、本当に体調不良で年齢設定そのまんま交代したヒロインや、作家さんと対立して自主降板の格好になったヒロインもいて、ドラマ本編以上に話題を撒いたこともありましたからね。

『カーネーション』は放送開始前、オーディションでヒロイン決定発表ぐらいの時点では、NHKの当該サイトで「尾野さんが糸子の何歳までを演じるかは未定」とされていました。それが放送開始直前の昨年9月に発売されたドラマガイド本では、脚本の渡辺あやさんが「せっかくひとりの女性の一生を書くのですし、ヒロインが亡くなるまでをしっかり描きたい」とかなり明確なクロージングスタイルを提示しておられ、糸子のモデルとなった小篠綾子さんが生涯現役を貫いて92歳の天寿をまっとうされていることもあり、30歳になったばかりの尾野さんに探偵左文字進ばりの特殊メイクをほどこして“お元気な九十代”演技してもらうのはさすがに無理があるとの判断が下ったか。

んなら満59歳の夏木マリさんになら“特殊”メイクでなくできるからいいのか?って問うていったらえらい失礼な話になりますが、設定年齢や外見年齢の問題とは別に“個性の違う3人の娘を、女手ひとつで育てあげ世界のファッション界に羽ばたかせた”ことがこのドラマの、ヒロインのヒロインたるキモのところですから、立派にデザイナーとして功成り名遂げた娘たち役の皆さんとひとつ画面に並んで“母親感”“お母ちゃん感”が出るようにと考えると、交代のほうが自然と言えば自然。

設定昭和12年生まれの長女優子役が実年齢30歳(←尾野さんと同い年)の新山千春さん、同じく14年生まれ次女直子役が27歳川崎亜沙美さん、18年生まれ三女聡子役が29歳安田美沙子さんですから、3人娘がパリにローマにロンドンにと地歩を固める昭和40年代後半~50年代となると、娘役さんたちもかなりの年上メイクで臨まねばならず、お母ちゃんはさらにその上に見せなければならないわけです。晩年パートの展開、セリフ、絵コンテづくりが具体的にかたまった頃、人選を含めて“走りながら決まった”交代と考えたほうがいいかもしれません。

ひとりのヒロインを、幼少期→青春~中年期→晩年と3交代で演じられた朝ドラと言えば、1983年(昭和58年)~84年(59年)の『おしん』が思い出されますが、リアルタイムではあまり濃密に見ていなかったせいもあるのでしょうけれど、いまとなっては頬っぺの赤い小林綾子さんの少女おしんが筏で奉公に出されて行く場面の記憶しかなく、“田中裕子さんがヒロインだった朝ドラ”という印象は意外に希薄です。田中さんが『おしん』の数年前に『マー姉ちゃん』で準ヒロインとも言える次妹役でブレイク済みだったことも影響しているか。

夏木マリさん起用に特に不満はありませんが、ドラマの着地部分が尾野さん担当でなくなったことで、“尾野真千子さんヒロインの朝ドラ”という純粋さが少し曇ったような気がするのは残念。1980年代から映画『鬼龍院花子の生涯』『十手舞』などで夏木さんの、歌手の余技とか延長線にとどまらない存在感は既知ではあるものの、夏木さんと言えばあの目ヂカラですよ。“歴然と強気”“どっから見ても伝法でパリシャキ男まさり”というイメージが、いまの『カーネーション』にとっては、逆に邪魔、と言って過言なら、“惜しい”ような。どちらかと言うと地味でおとなしげなヴィジュアルの尾野さんが演じるからこその、豪気でガハハな糸ちゃんだと思ってずっと視聴してきましたから。

しかしまた、中年期まで演じて絶賛中の尾野さんを交代させてまで「晩年~死去まで」にこだわった脚本を採用したのですから、それはそれで別の楽しみができました。夏木さんが演じる糸子の晩年姿に、青春期~働きざかりの尾野さんの糸子、だんじり大好きゴンタ娘の二宮星さんの糸子が重層しながらエンディングを迎えるような、素晴らしい余韻に満ちた終盤を期待していいのではないでしょうか。いや期待しましょう。期待し過ぎるくらい期待しなきゃウソです。期待するのが視聴者の務め、期待にこたえるのが脚本家、演出スタッフさんの務めです。ここまで来たらとことん、だんじり神輿の上行くぐらい高ハードルで行きましょう。

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