このブログでも「LSD」という言葉を何回も使っているけれど、「LSD」の定義をちゃんとわかってなかったのではないかと、最近気付いた。
きっかけは、ランナーズの「これであなたもサブスリー」の記事。過去にサブスリーを達成した40歳のYさんに対してアドバイザーがこう言ってたんです。
「LSDは・・・キロ5~6分ではペースが速すぎます。LSDは不快に感じるくらいゆっくり、走力から考えて、キロ7分以下のペースでないと、その本来の効果を得るのは難しいでしょう」
このアドバイスはかなり衝撃的でした。わたしの理解ではLSDとは「ゆっくり長く走る。ペースは息が上がらず会話ができるくらいのスピード。時間は最低1時間以上」です。これ自体はそう間違ってないと思うんですが、ではそのペースとは具体的にどのくらいかというと、フルマラソンを4時間20分で1回しか完走していない自分のようなランナーでも6分~6分30秒/㎞をイメージしてました。
上記のアドバイスからすれば、これは「
速すぎるにもほどがある」ということになるでしょう。
そこでもう一度わたしの参考にしている本をチェックしなおしてみました。
●小出監督「マラソンは毎日走っても完走できない」
「ゆっくりと長い距離を走っておく」こととしか書いてありません。「全力で走る」スピード練習と対極にある練習方法で、「体の疲労をやわらげ」「それなりに脚を鍛えることもでき」る、と書かれています。
| マラソンは毎日走っても完走できない―「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ (角川SSC新書)小出 義雄角川SSコミュニケーションズこのアイテムの詳細を見る |
●金さん「3時間台で完走するマラソン」
「LSDのスピードは、ランナーの走力によってある程度異なる」「サブフォーを目指すランナーであれば・・・普通のジョギングペースは1キロ6~7分が妥当・・・LSDトレーニングは、1キロ7~8分が目安となる」
●川嶋伸次元東洋大陸上部監督「DVDマラソン」
LSDという言葉を使ってません。「ジョギング」の中に含んで使われているようです。
●横浜市スポーツ医科学センター「スポーツトレーニングの基礎理論」
「『にこにこペース』でゆっくり長い距離を走ること」。にこにこペースとは「運動中に余裕を持って会話ができることが目安」とあります。
LSDの効用について「きつくはないので長時間運動ができ、トータルとしてのエネルギー消費量が大きくなり、減量にも有効である」と。
■まとめてみると・・・
ジョギングよりもさらに遅いペース。運動中余裕を持って会話ができることが目安。この「余裕を持って」というところがミソか。
したがって、ペースはランナーの走力によって異なる。
サブフォーを目指すランナーなら、目安は1キロ7~8分。
ということになるんじゃないでしょうか。
この話で行くと、件のサブスリーランナーYさんは4分16秒/㎞のペースが目標だから、ざっとジョギングペースが5分/㎞前後、そうするとLSDのペースは6分/㎞前後という感じです。
人によって多少見解が異なるようですね。
ただ、共通しているのは「長く」という部分でしょう。「苦しくならない」というのは実は「
苦しいと長く走れない」からです。
LSDの目的は「長く走る(運動を続ける)ことで培われる効果--すなわち「筋肉の毛細血管を発達させ」たり、「完全な有酸素運動により脂肪を燃焼しやすい身体」になったり、「持久系筋力」を鍛えたりする--にあるわけです。
つまり
「完全なる有酸素運動」を長時間続けることこそがLSDの定義と言っていいのだと思います。
わたし程度のランナーでも7分/㎞というペースは「不快」です。しかもそのペースで90分、120分走るとなるとこれは「苦行」に近いと思います。
小出監督はレースにお際して、Qちゃんに「マラソンは我慢だ」とよく言っていたと言います。
トレーニングでも教えを守ってこの苦行に耐えるか(不思議なことに小出さんはフルマラソンのトレーニングとしてのLSDをあまり重く見てないようですが)、もしくはある程度気持ちよく走って、フルマラソンの記録はそこそこでもいいと割り切るか(LSDをちゃんとしないとフルマラソンんが走れないとは限りません。たとえば川嶋伸次さんのメソッドではジョグとLSDの区別はあまり明確ではないです)、それはそれぞれのランナーの目標や生き方次第ということになるでしょう。
また、たとえばたいへん美しい自然の中を走るなら、ゆっくりのペースで2時間、3時間と移り行く景色を眺めながら走ることは苦痛ではなかろうと想像します。
そういう環境に暮らすランナーは幸せですね。