「承諾殺人」という罪名で行われていた裁判。
裁判を重ねるごとに傍聴者の数が増え、その裁判は涙に包まれるらしい。
傍聴席からはすすり泣く声が聞こえ、検察側の人まで涙を浮かべる、そんな状態。
いったい、どんな裁判かと気になったのは数日前で、ニュースを見てみたら……もう、泣いちゃいましたよ
認知症になった86歳の母親を11年前から介護していた息子さん。
家の鍵を開けておくと徘徊してしまう為、鍵をかけて仕事に出掛けていました。
なんとか介護と仕事を両立させ、それでも収入は十数万円。
半年前から認知症が悪化し、週1から週2、3…と早退する事が増えて行き、最終的には介護に専念する為に会社を辞めてしまいました。
それでも、必要なのは収入です。
何とか介護をしながら働く場所がないかと就職活動もしましたが、やっぱり、そういう職場は見つかりません。
その間の生計は10万円の失業保険。
けれど、家賃・光熱費・二人の食事の他に介護費が重なれば、当然の事ながら10万円では生活できません。
数回、生活保護の申請をしてみるものの、失業保険を貰っている事を理由に却下されてしまいます。
生活は、母親に2回/1日の食事、自分は1回/2日の食事になるほど悪化。
亡くなった父には“人には迷惑をかけるな” “金は借りるな”と厳しく育てられた息子さんは、金融会社にお金を借りる事も、知り合いに助けを求めることも一切しなかった。
今年の1月には家賃も払えなくなり、母親を連れて家を出ることになりました…。向かったのは家族でよく行った繁華街。日が暮れるまで歩いた後、たどり着いたのは河川敷です。
息子 「もう、生きられへんのやで…もうアカンのやで…」
母親 「そうか、アカンか…アカンのか…。○○(息子さんの名前)、お前と一緒や、一緒やで…」
そんな会話が交わされた後、息子さんは母親の首を絞め殺害。自分もお腹と首を切って自殺するも、未遂に終わる…。
それがニュースで説明された過程でした。
裁判での供述では、母親に対する愛情が痛いほど伝わってきます。
「介護は辛い事だったが、嫌だと思ったことはない」
「もう一度生まれ変わっても、また母親の子供として生まれたい」
「母親が大好きだった…」
「母親を抱く手で母親を殺してしまった。私の手は何の為にあったのか…」
泣きながら語るその思いは、ニュースで聞くだけで涙が出てくるものでした。
なぜ、失業保険が切れて生活保護を申請しなかったのか…その理由は分かりません。数回申請してもダメだったからか、それとも失業保険が切れたらもう一度来て下さい、と言れてなかったから、“受けられない”と思い込んだのか…そこら辺はよく分かりません。
“人には迷惑をかけるな” “金は借りるな”と育てられるのは、すごく当然のことであり、父親の厳しさを責めるつもりはありません。それどころか、今の子供の育て方にも必要な事だと思ってます。
計画性もなく、お金を借りて自己破産する人に見習えと言ってやりたいですよ。
借りた部屋で自殺する人や、線路に飛び込んで肉片をばら撒くような、そんな自殺者に比べたら、家を出て河川敷で…という方がまだマシ。
だけどね、こういう人こそ、救ってあげたいじゃないですか。そして、こういう人にこそ優しい社会・国であって欲しいと思います。
昨日、その裁判の判決が出ました。
結果は…懲役2年6ヶ月 執行猶予3年。
温情に溢れる判決に、ニュースを見ては泣き、帰ってきた旦那に説明するたび泣いちゃいました。
あぁ…これからの息子さんに幸あれ、と願わずにはいられません