午前の早い時刻から仕事しているのに例によって正午前から連絡がたくさん入り、午後すぐに決めていた一つの予定をキャンセルして対応。……その代わり、どうしても観たくて来週どこかでというか男子千円均一の火曜日辺りを狙っていたのをどうもその日は無理かもしれないと思っていたこともあって予定を早め、イラン映画『別離』へ駆け込む。イスラム社会の中にもある資本主義的格差をヘソに現在のイランの暮らしが徹底した客観で描かれる。よくできた映画という言い方では終わらない、ファンタジーや美学にまったく逃げず、細かい所が実に細かくていい。地味ということでもある。ただ、どんな特殊な状況でも徹底して描くことにより「普遍」に近づきうるという原則は、ここでも生きている。登場人物たちの「背景」を描くことをストイックに避ける。どの登場人物の立場からでも見られるというかなり難易度の高い所を決めてくる。悩ましい結末なのに爽快でさえある。劇を書く者は必見だ。夕方は三軒茶屋の喫茶店で打合せ。そのまま珈琲一杯で居残り作業、連絡多々。面倒の重なる多方面それぞれに対応。夜はイキウメ『ミッション』、最近賑やかな劇場に行くことが少ないからか関係者批評家だらけのエリアの席に慣れず居心地悪いが、都会暮らしに対応できるようリハビリせねば。前川知大くんはいない日だったが演出の小川絵梨子さんと久々の再会。言われて一瞬後に思い出したのだが彼女は四、五年前に我が家の新年会に来たことがあった。もともと記憶力には自信がないが、忘れていたわけではない。渋谷を通るのがいやなので下北沢まではバス、そこから私鉄。ただ通過するだけの下北の夜の町は妙なものだ。帰宅すると誰もいない。やがて息子は野球部の先輩におごってもらったというバーミヤンのしゃぶしゃぶ食い放題から帰ってくる。
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