午前中に東銀座でITI=国際演劇協会の理事会。どうやら私が最年少か、下から二番目だろう。ここには五十歳以下がいるのか? 高萩さんも白髪が増えたなあ。ノーベル賞莫言さんの翻訳で話題の焦点にいる菱沼さんの自然体、ダンディ。無報酬の仕事に、みんなが集まっている。来年は私も復活させたいと思ってきた、古典芸能ワークショップも復活するかもしれない。細かいことに一生懸命な大人たち、素敵である。だがこれからはもっと細かいことが求められる。難儀な時代だ。今年は劇作家協会の世代交代の荒療治をした私だが、この協会の場合、「世代交代」の前に「世代交流」を実現させたいと心から思い、超世代交流のアイデアを「紛争地帯の演劇」リーダー・林さんに耳打ち。
午後一時前から十時まで稽古。諸々の事情で虫食いの時間帯が続いたので、フルタイムの稽古は久しぶり。舞台監督は、初めて組む金安凌平さん。彼の俳優時代から長いつきあいだが、ちゃんと仕事するのは初めてだ。心底稽古を面白がってくれているのが嬉しい。初めて組むもう一人は、水津聡さん。富良野塾のベテランである。二十年カンパニーを背負ってきたという以上に、演劇への関心の強さとしなやかさは、この人が自分で築いてきたものだろう。
ヒロイン佐和子を演ずるのは、渡辺美佐子さん。彼女抜きでは考えられない企画である。この人でしかできないことを、きちんとお見せしたいと思う。
最終場を中心に、もう少し台本に手を入れる。
沖縄の劇のようだが、前半は、なかなか沖縄に行かないし、今回は私のこれまでの沖縄を舞台とした劇と違って、必ずしも「沖縄のこと」を中心的に描こうとはしていない。では、何を描きたいのか。それは、私自身も幕を開けてみないとわからない、と言っておこう。
以下は、マスコミ等に送られた、劇の解説文です。
「人は死んだら星になる」って言ったのは、誰だっけ ……。
やんばるの空を飛んでいいのは、鳥と虫と、自由だけ。
『天皇と接吻』『沖縄ミルクプラントの最后』につづく、「戦後史」と「今」の集大成。
沖縄・やんばる地方では、オスプレイも飛来する米軍ヘリパッド基地建設や自然破壊に反対して、住民たちが座り込みの抗議活動をしています。いわゆる「活動家」はおらず、みんな生活者です。応援している人達もそうです。今回の設定では、反対運動の住民たちが建てたやぐらに、女性たちが立てこもって、工事車両の搬入を身をもって遮っています。そのうちの一人、夜空とやんばるの森の樹々に囲まれ、空中に浮かぶような場所から星を見上げる女、佐和子。彼女は今年初めて沖縄に来ました。彼女は回想します。自分はどうして孤独な人生を送るようになったか。四十年前の「沖縄復帰闘争」の時代、誰と出会い、何を喪ったか。そして長い間、過去に縛られ、自分に対して禁じていた想念を、解き放ちます。それは、彼女自身の人生を取り戻す旅の始まりでした……。
井上ひさしさんの「幻の次回作」は、終戦直後の沖縄を舞台にした『木の上の軍隊』だったという。ガジュマルの樹の上に二人の兵士が登ったまま降りてこないという設定だと聞いた。私もこれまで沖縄関連の戯曲を書き、劇中でガジュマルの樹の上に多くの人を登らせてきたが、今の沖縄を見るとき、キジムナーも棲みそうなガジュマルの自然の力、神秘に抱擁されるのではなく、殺伐としているかもしれない鉄骨のやぐらの塔の上にいる、二人の女が幻視されてきた。これは振り出しに過ぎない。そして、もちろん描くのは沖縄のことだけではない。機は熟した。これは、「書きたい劇」であると同時に、「書かなければならない劇」である。
燐光群『星の息子』
座・高円寺 秋の劇場17 日本劇作家協会プログラム
作・演出○坂手洋二
11月16日(金)~28日(水) 座・高円寺1
渡辺美佐子 円城寺あや 中山マリ 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 水津聡 杉山英之 松岡洋子 樋尾麻衣子 鈴木陽介 横山展子 桐畑理佳 田中結佳 福田陽子 宗像祥子 永井里左子
照明○竹林功
音響○島猛
舞台監督○金安凌平
美術○じょん万次郎
衣裳○大野典子
演出助手○城田美樹
文芸助手○清水弥生・久保志乃ぶ
ちらし絵○沢野ひとし
制作○古元道広 近藤順子
21・24・28日は託児サービスあり。
アフタートーク
17日(土)小熊英二
20日(火)扇田昭彦
22日(木)竹下景子
http://rinkogun.com/Next.html
午後一時前から十時まで稽古。諸々の事情で虫食いの時間帯が続いたので、フルタイムの稽古は久しぶり。舞台監督は、初めて組む金安凌平さん。彼の俳優時代から長いつきあいだが、ちゃんと仕事するのは初めてだ。心底稽古を面白がってくれているのが嬉しい。初めて組むもう一人は、水津聡さん。富良野塾のベテランである。二十年カンパニーを背負ってきたという以上に、演劇への関心の強さとしなやかさは、この人が自分で築いてきたものだろう。
ヒロイン佐和子を演ずるのは、渡辺美佐子さん。彼女抜きでは考えられない企画である。この人でしかできないことを、きちんとお見せしたいと思う。
最終場を中心に、もう少し台本に手を入れる。
沖縄の劇のようだが、前半は、なかなか沖縄に行かないし、今回は私のこれまでの沖縄を舞台とした劇と違って、必ずしも「沖縄のこと」を中心的に描こうとはしていない。では、何を描きたいのか。それは、私自身も幕を開けてみないとわからない、と言っておこう。
以下は、マスコミ等に送られた、劇の解説文です。
「人は死んだら星になる」って言ったのは、誰だっけ ……。
やんばるの空を飛んでいいのは、鳥と虫と、自由だけ。
『天皇と接吻』『沖縄ミルクプラントの最后』につづく、「戦後史」と「今」の集大成。
沖縄・やんばる地方では、オスプレイも飛来する米軍ヘリパッド基地建設や自然破壊に反対して、住民たちが座り込みの抗議活動をしています。いわゆる「活動家」はおらず、みんな生活者です。応援している人達もそうです。今回の設定では、反対運動の住民たちが建てたやぐらに、女性たちが立てこもって、工事車両の搬入を身をもって遮っています。そのうちの一人、夜空とやんばるの森の樹々に囲まれ、空中に浮かぶような場所から星を見上げる女、佐和子。彼女は今年初めて沖縄に来ました。彼女は回想します。自分はどうして孤独な人生を送るようになったか。四十年前の「沖縄復帰闘争」の時代、誰と出会い、何を喪ったか。そして長い間、過去に縛られ、自分に対して禁じていた想念を、解き放ちます。それは、彼女自身の人生を取り戻す旅の始まりでした……。
井上ひさしさんの「幻の次回作」は、終戦直後の沖縄を舞台にした『木の上の軍隊』だったという。ガジュマルの樹の上に二人の兵士が登ったまま降りてこないという設定だと聞いた。私もこれまで沖縄関連の戯曲を書き、劇中でガジュマルの樹の上に多くの人を登らせてきたが、今の沖縄を見るとき、キジムナーも棲みそうなガジュマルの自然の力、神秘に抱擁されるのではなく、殺伐としているかもしれない鉄骨のやぐらの塔の上にいる、二人の女が幻視されてきた。これは振り出しに過ぎない。そして、もちろん描くのは沖縄のことだけではない。機は熟した。これは、「書きたい劇」であると同時に、「書かなければならない劇」である。
燐光群『星の息子』
座・高円寺 秋の劇場17 日本劇作家協会プログラム
作・演出○坂手洋二
11月16日(金)~28日(水) 座・高円寺1
渡辺美佐子 円城寺あや 中山マリ 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 水津聡 杉山英之 松岡洋子 樋尾麻衣子 鈴木陽介 横山展子 桐畑理佳 田中結佳 福田陽子 宗像祥子 永井里左子
照明○竹林功
音響○島猛
舞台監督○金安凌平
美術○じょん万次郎
衣裳○大野典子
演出助手○城田美樹
文芸助手○清水弥生・久保志乃ぶ
ちらし絵○沢野ひとし
制作○古元道広 近藤順子
21・24・28日は託児サービスあり。
アフタートーク
17日(土)小熊英二
20日(火)扇田昭彦
22日(木)竹下景子
http://rinkogun.com/Next.html