日本に他に例のない「オサガメ」の産卵地である、奄美大島・嘉徳浜が、土木開発の危機にさらされている。
工事の計画は発表されていたが動きはなかったという。私が奄美大島に着いたその日に、浜の入口に防波堤の工事開始を予告する看板が立てられたというニュースが入った。
ちょうどカメの産卵期が始まったばかりだというのに、である。
翌日、その嘉徳浜を訪れた。大島の西端に近い。
浜に直接川の水が入り込む形の特殊な浜で、なるほど出産に適しているのだろう、なだらかな浜が続いている。
かなり長い時間そこにいたが、ほんとうに素晴らしい。
曇りの日だったが、私は、グレーに染まった浜も好きだ。
写真の手前は、自然がみずからつくった浜の段差である。おもしろい。
オサガメは二億年前、恐竜の時代からその形を変えていないという、両腕が逞しく発達した、古代的なウミガメ。アジアでは生息がほとんど確認されなくなってきたため、絶滅危惧種としてユネスコとIUCNでも保護が求められているという。
浜を覆う防波堤を作ることで、陸の自然と海の自然が往還することができなくなる。砂の質も変わる。生物の棲息の場を分断するに等しい、暴挙である。ダムが川の自然を遮断するのと同じだ。
この島の自然を「世界自然遺産」にという流れに、逆行しているように思われるのだが。