三日前、安倍首相が「ウラジミール、二人の力で駆けて駆け、駆け抜けよう」とあらためて平和条約締結を呼びかけたその翌日、プーチン大統領は「第二次世界大戦の結果」つまりスターリン時代に日本の言う「北方領土」を手に入れたという歴史的事実に依拠しようと宣言し、「議論は終わりだ」と断言した。
新しい話ではない。第二次世界大戦の結果、北方四島がロシア領となったと日本に認めさせる方針は、もともと存在していた。昨年来「平和条約交渉を加速させることに合意している」ということだったが、プーチン側は条件交渉どころか、さして関心さえないのだろう。
これは三ヶ月前の投稿「北方領土は返ってこないということになったが、皆さん平気らしい」。 ↓
ロシア国家安全保障会議は今年1月、日露平和条約締結をめぐり「交渉を急がず、日本側のペースで進めない」と機関決定している。北方領土の日本への引き渡しを拒否することはもはや「結論」なのだ。開発計画も、とうに宣言していたことを実践しているだけで、色丹島での水産加工工場稼働を祝う式典にプーチン氏が中継映像で参加することに、何の不思議もない。
この間、日本政府もマスコミも、それをなんとかしようという動きは、たいしてとりもしていなかった。
本当に北方領土に関心があったら、国内向けのイメージ戦略にばかり目を向けてはいないはずだ。
外交こそが政治である。外交に耐えられる論理と実践が確かめられてこその、国内問題である。
本気だったら、世論形成の努力もしているはずだ。
実体が伴わなくとも、少なくとも民主主義を守るという意志で支えられていたはずのアイデンティティーを捨てたこの国は、自分より強そうに見える国に対抗して何かしようという情熱を、完全になしくたのだ。
写真はモスクワ・赤の広場。