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読売新聞、YAHOOが拡散している記事に驚かされた。
「ネット署名で中国側が世論工作か、処理水放出や防衛力強化を反対に誘導…専門家「分断広げる」という見出しである。
「東京電力福島第一原発の処理水放出などに反対する国内の市民団体主催のオンライン署名を巡り、署名への参加を呼びかけるSNSの発信の中に、中国側の世論工作の疑いが強い投稿があることが海外調査機関の分析でわかった。」ということなのだが、
「疑いが強い投稿」が「あること」が「海外調査機関」の分析で「わかった」という、ずいぶん遠回しで伝聞的な表現である。
SNS運営事業者が「中国国家による世論工作目的」と認定したアカウントと、「投稿パターンが共通していた」というが、具体的にどういうアカウントなのか、どのようなパターンが共通していたかは、語られていない。
専門家は「日本の政策への反対署名を増やし、国内の分断を助長させる狙いではないか」と指摘するというが、どんな専門家なのだ。
「日本の政策に反対する」ことに正当性がある場合は、「国内の分断」は、過ちを是正していくための途中経過として必要であることに過ぎない。それの何がいけないのだ。公正さのない記事だ。
「世論工作に利用されたとみられる」としているのは、「処理水放出に反対する署名(2023年8月開始)」と、「自衛隊による南西諸島の防衛力強化に反対する署名(19年5月開始)」だそうである。「いずれも日本の市民団体がオンライン署名サイト「Change.org」に国内向けに公開した」。
はい、確かに。
「中国による世論工作を巡っては、国家が関与した組織がSNSで偽情報や自国に有利な言説を発信しているとされる」というが、「される」根拠には、すぐには触れない。
「SNS運営事業者はこうした投稿を監視し、「国家による世論工作目的」と判断されたアカウント(世論工作アカウント)を削除し、公表している」というが、どのような内容で、対象を、どう特定している、というのだ。具体がない。
「読売新聞は、24年1月時点で各署名サイトのリンクの投稿が確認された延べ1176アカウントについて、中国の世論工作に詳しいオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)に分析を依頼。ASPIは、このうちX(旧ツイッター)の4アカウントについて「世論工作目的の疑いが強い」とした」というが。もっともらしい横文字やアルファベットの名前を並べられても、信用しがたい。
「判断理由として、従来の世論工作アカウントとの共通点を指摘」といい、それらの一つ一つを見ると、
「▽同じニュース記事や投稿を拡散」、というが、それは、目的のある人なら何度でも繰り返し拡散しようとするかもしれない。それだけかもしれない。
「▽習近平(シージンピン)国家主席らを批判する中国反体制派の人物を攻撃」、というが、攻撃すべきと思った人が対象を攻撃するのは、たんに言論の自由だろう。
「▽中国外交官の投稿を拡散」「――などの点が共通していた」というが、拡散したいものを拡散するのは、自由のはずだ。あちこちにそうする人の数が多いことを「共通していた」と言ってしまったら、個々人の意見を信用しない、と言っているに等しい。
で、4アカウントだけのこと?
「別の研究機関にも4アカウントを分析してもらったところ、台湾のサイバーセキュリティー企業「TeamT5」も「中国政府が一定程度、関与している疑いが強い」と判断」というが、こちらも、もっともらしい横文字やアルファベットの名前を並べられても信用しがたい、と言うしかない。根拠は示されていない。
「カナダの研究機関「シチズンラボ」の研究員は、投稿内容が日本やその外交関係に焦点を絞り、プロフィル欄に名前や居住地などの実在の人物を特定する情報がない点などから、「組織的に行われた可能性が高い」とした」というが、だいじなことを言うときに、余分なことを省略するのは、よくある話だ。それだけでは証明にはならない。
「4アカウントの一つは、処理水放出の反対署名サイトのリンクを23年に4回投稿していた」といい、「主催した「ふくしま復興共同センター」(福島市)は「署名は『国民的理解が得られていない』などの理由で行ったもので、世論工作目的に利用されたのだとしたら心外だ」としている」というが、「世論工作目的に利用されたかもしれない」と聞かされたら、誰だって「心外だ」と言うだろう。署名数を疑われたことへの怒りやマスコミへの不信もあったはずだが、それは報じられないのだ。
「署名は計約15万筆が集まり、同年8月と昨年2月に岸田前首相に提出された」と言うが、要はこの「約15万筆」を「疑わしい」とする結論に、読売新聞は、持ってゆきたいらしい。
「残りの三つは防衛力強化への反対署名サイトのリンクを22~23年に計9回投稿」「主催した沖縄県石垣市の市民団体によると、約7000筆を集めたが、政府などには未提出という」というが、そこまで言うなら、一つ一つに当たって検証してみてはいかがだろう。これだけの数のものがあります、と、正否を問わずただ疑わしそうに言っているだけである。
「4アカウントはフォロワーが少なく、署名数への影響は限定的とみられるが、ASPIは「国民の不信感をあおるため、将来的にこの種の手口が使われる可能性がある」と指摘する」という文は途中で捻れていて、結論先にありきの構文だ。「影響は限定的」ならそれでいいではないか。それを「将来的に可能性がある」として、無理やり将来に被害があるかのように不安を煽っている。
「中国は近年、SNSを通じ他国への世論工作を強めている。米調査会社「グラフィカ」によると、昨年11月の米大統領選前には、中国の世論工作目的とみられるXアカウントなどが候補者を誹謗(ひぼう)中傷し、米国の選挙の正当性に疑念を投げかける内容を投稿。銃規制やホームレス問題など、議論が分かれるテーマでも積極的に発信していた」というが、そういうことはあるのかもしれないが、それが「この処理水放出や防衛力強化を反対」するケースにあてはまるというエビデンスは、皆無である。ひどい。これはまったく、ひどい。
「世論工作に詳しい市原麻衣子・一橋大教授(国際政治学)によると、日本国内で対立する話題にも頻繁に投稿が行われているという。市原教授は「中国側は分断のあるテーマを狙い、分断をさらに広げるのが目的とみられる」と指摘する」というが、これも個別の具体的なことに対する証明にはなっていない。
「世論介入への対応困難」として、「オンライン署名は民意の表明手段として利用が広がっている。Change.orgの日本法人によると、同サイトは現在196か国で利用されている。日本版は2012年に始まり、23年には1092件の署名が行われた。一方、中国では同サイトがブロックされ、署名に参加できないという」としている。中国がはじき出されたから、巧妙に日本国内に入り込んで何かやっているという先入観を開陳しているだけだ。
「世論工作目的に利用された疑いが強いことについて、同法人は読売新聞の取材に「(オンライン署名は)発信力のあるSNS等を使って拡散されることが多く、対策は現実的に不可能に近い」としている」というが、それは実務的な事実であるに過ぎないし、「世論工作目的に利用された疑いが強いこと」としているが、それを言っているのは、この記事を書いた人である。
「ITジャーナリストの三上洋氏は「署名の主催者も参加者も、世論工作目的の介入が起こりうることを念頭に利用する必要がある」と指摘する」というが、こちらも、具体的なことは何も言っていないに等しい。
はい。
これが、大マスコミであり、日本の報道の中心に位置するはずの有名な新聞の記事である。
証拠もなく、「疑い」だけを並べている。
調査にも報道にもなっていない。
ネトウヨのやりかたである。
具体的な証拠もなければ、何がどのくらいの比率なのかのデータも、皆無である。
主観だけの記事ではないか。
「こうやって行われる」としたり顔で言っても、実のところ、「こんなやり方をしているかも知れない」と言っているだけである。
「オンライン署名を利用した世論工作」といって、署名に対する不信を植え付けようとしている。
「こいつらは××国の回し者だ」と決めつけるネトウヨと同じである。
つまり。
「処理水放出に反対する署名」と、「自衛隊による南西諸島の防衛力強化に反対する署名」の数は、公表されているよりも少ない、という決めつけに誘導しようとする、完全なデマゴーグの創出である。
どこかの誰かがそう推察している、という言葉を無理やり引き出して、こんな「事実の証明のないもの」を、「疑いが強い」と恣意的に断じて、堂々と大きな記事にしている。
これが報道のやることなのか。
「誘導」しているのは読売新聞のほうだ。
情報工作である。
冗談じゃない。
「Change.org」の皆さんは抗議したのだろうか。
あなた方の「数」が疑われているのですよ。
そして、
「処理水放出」と「自衛隊による南西諸島の防衛力強化」に反対する署名は「国内の分断を助長させる」という、この、おそろしいプロパガンダ記事。
これを大きく載せる大政翼賛行動を、マスコミ自身が、恥じなくなっている。
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