目覚めたら夜になっていました。すでに樺太の陸も何も見えない夜の海でした。ぼんやりと母や父、兄のことを思い出していました。心のほとんど全部が不安でいっぱいでした。夜が明けて陸が見えていきました。樺太の海岸でないことは明らかでした。海岸のすぐ地区まで森林が茂っています。海岸に沿ってのスロー航海。これが観光であったら本当に最高の風景であっただろう。
日が暮れて小さな港に入港しました。港と言っても桟橋もない船を横付けするだけの岸壁の港でした。後から、「ソフガワニ」という港だと聞かされました。
その頃になって、おにぎりが1個支給されました。これが乗船してから一昼夜ぶりでの食べ物でありました。下船と同時に貨物列車に身動きできないほど詰められて乗せられました。列車は、走り出しても、ゆっくりなスピードで進んだり止まったりで走行距離はそれほどないように感じていました。夜が明けて外が見えましたが昨日接岸した岸壁はすぐそこに見えました。まだ鉄道が未完成のためだと思われます。朝九時頃になってノロノロと動き出しましたが、今度は行ったり戻ったりのの繰り返しでした。日が暮れてから「トムニー」という小さな駅に到着しました。
続く
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