正月以来、お酒に縁がない。たまには、パーッと飲みに行きたいと思い、悪友の幸枝を誘って、渋谷の街に繰り出した。
目的地は、「渋谷刑務所病院 アルカトラズE.R.」である。雑誌や情報誌などで有名だが、下ネタが多く、お行儀のよい人は誘えない。したがって、私が「一緒に行こう」と言われたことがないのも当然である。
しかし、このままでは一生行かれないので、自分で企画をした。きっと、大いに盛り上がるだろう。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは、ピンクの白衣を着た、色っぽいナースだ。ここでは、病院と監獄が入り混じった設定となっている。
「本日、2名様ご入院ですね。カルテをお作りしますので、代表の重症患者様をお願いします」
ここは、笑いの取れる幸枝に任せたほうがよさそうだ。幸枝がナースの前に進むと、質問が始まった。
「お名前をお願いします。あだ名でも何でも構いません」
「えーと、メグミ」
「本日は、どこが悪いか教えてください」
「あ、豊胸手術をしてください」
さすがは幸枝。私は隣で笑い転げていた。
「血液型は?」
「A型」
「精神年齢はいくつですか」
「うーんと、29歳」
私が見たところ、幸枝の精神年齢は18歳あたりで止まっているのだが、彼女はそう思っていないようだ。
ナースは、チャチャッとボールペンを動かし、カルテを完成させた。
「では、重症患者様に手錠を掛けさせていただきますので、両手を出してください」
何と、お色気ナースが手錠を掛けてくれるらしい。男性だったら、自然にニヤけてしまうだろう。
連行されるように、席まで案内された。テレビで見る監獄のように、鉄格子の扉がついている。
「ご入院でーす」
ここで、手錠を外してくれる。カーテンで仕切られた半個室は、天井が低く息苦しい。留置所に入ったことはないが、こんな感じなのだろうか。
まずは飲み物である。メニューを開くと、自白剤、人体実験などのカクテルや、尿瓶に入ったビールなどが並んでいて笑える。さて、どれにしよう。
幸枝は「脳内発射」にした。これは、マネキンの頭を上からくり抜き、グラスをはめ込んでいる。グラスに入っているのはカクテルだ。味はよさそうだが、非常に場所を取るので、狭い席では邪魔だった。
私が選んだのは「緊急輸血」である。これには、コーラと赤ワインが入っているので、よさそうだと思ったが、意外な展開が待っていた。
「緊急輸血お待たせしました」
今度は、白いミニスカートをはいたナースが、赤い液体の入ったガラス容器を持ってきた。細いウエストから、形のいいヘソが見えている。容器の先にはチューブがついていて、そこからフラスコに注ぐのだ。
しかし、それだけでは終わらない。
「じゃあ、輸血の残りを口にも入れますので、チューブをくわえてもらえますかぁ」
そんなことを要求されるのかとたじろいだが、気が弱いので、拒否できなかった。言われるがままにチューブを吸うと、赤いカクテルが流れ込んでくる。むせそうだ……。
「お連れ様もいかがですか」
ナースは私の口からチューブを外すと、幸枝にも飲ませ始めた。男同士だったら、どうするのだろう。
笑ったあとは料理を頼む。脱腸、目玉の親父、舌先三寸など、激しいメニューが多いので、ほどほどのものを頼むことにした。
「田舎っペ」というカナッペは、具が少々淋しいけれども、無難線だ。
「脳みそ解剖」は、小道具が冴えている。味もまずまずだ。
幸枝がビールを注文した。シリンダーに入っている。
奇をてらったメニューは、それくらいにしておいて、残りは普通の料理にした。
飲むと、尿意を催してくる。従業員にトイレの場所を尋ねたら、大きな声で「検尿はこちらで~す」と案内された。すると、それを聞いた他の従業員も、口々に「検尿でーす!」と連呼する。大変恥ずかしい……。
用を足し、席に戻るときには、「検尿お疲れ様でした!」の掛け声が待っている。5~6人に言われると、もう苦笑するしかない。
検尿のあとは、デザートを注文した。
幸枝は、クリームブリュレ。
私は、チョコバナナ生クリームクレープである。これは美味しかった。
デザートが終わったら、「ショータイムです」との声がかかる。この間は、オーダーストップとなり、照明が落ちる。
何が始まるのかと思っていたら、遠くの席から女性の悲鳴が聞こえてきた。履物と衣ずれの音が近づいてくる。どうやら、何かが監獄内を歩き回っているようだ。
そのとき、こちらの席のカーテンが開き、音の正体が見えた。
おおっ!!
しかし、何かパフォーマンスがあるのかと思ったら、ただ通り過ぎるだけだった。これでは、せっかくの演出がもったいない。もっとも、他の部屋は見えないので、本当のところはわからない。実は、オバさんのところだけ素通りしていたりして。被害妄想か?
たっぷり楽しんだあとは、治療費を支払い退院する。あっという間に、2時間経っていた。
いやあ、盛り上がったなぁ!
大人数で行けば、もっと楽しいと思う。
刺激を求めるときには、ぜひどうぞ。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
目的地は、「渋谷刑務所病院 アルカトラズE.R.」である。雑誌や情報誌などで有名だが、下ネタが多く、お行儀のよい人は誘えない。したがって、私が「一緒に行こう」と言われたことがないのも当然である。
しかし、このままでは一生行かれないので、自分で企画をした。きっと、大いに盛り上がるだろう。
「いらっしゃいませ」
出迎えてくれたのは、ピンクの白衣を着た、色っぽいナースだ。ここでは、病院と監獄が入り混じった設定となっている。
「本日、2名様ご入院ですね。カルテをお作りしますので、代表の重症患者様をお願いします」
ここは、笑いの取れる幸枝に任せたほうがよさそうだ。幸枝がナースの前に進むと、質問が始まった。
「お名前をお願いします。あだ名でも何でも構いません」
「えーと、メグミ」
「本日は、どこが悪いか教えてください」
「あ、豊胸手術をしてください」
さすがは幸枝。私は隣で笑い転げていた。
「血液型は?」
「A型」
「精神年齢はいくつですか」
「うーんと、29歳」
私が見たところ、幸枝の精神年齢は18歳あたりで止まっているのだが、彼女はそう思っていないようだ。
ナースは、チャチャッとボールペンを動かし、カルテを完成させた。
「では、重症患者様に手錠を掛けさせていただきますので、両手を出してください」
何と、お色気ナースが手錠を掛けてくれるらしい。男性だったら、自然にニヤけてしまうだろう。
連行されるように、席まで案内された。テレビで見る監獄のように、鉄格子の扉がついている。
「ご入院でーす」
ここで、手錠を外してくれる。カーテンで仕切られた半個室は、天井が低く息苦しい。留置所に入ったことはないが、こんな感じなのだろうか。
まずは飲み物である。メニューを開くと、自白剤、人体実験などのカクテルや、尿瓶に入ったビールなどが並んでいて笑える。さて、どれにしよう。
幸枝は「脳内発射」にした。これは、マネキンの頭を上からくり抜き、グラスをはめ込んでいる。グラスに入っているのはカクテルだ。味はよさそうだが、非常に場所を取るので、狭い席では邪魔だった。
私が選んだのは「緊急輸血」である。これには、コーラと赤ワインが入っているので、よさそうだと思ったが、意外な展開が待っていた。
「緊急輸血お待たせしました」
今度は、白いミニスカートをはいたナースが、赤い液体の入ったガラス容器を持ってきた。細いウエストから、形のいいヘソが見えている。容器の先にはチューブがついていて、そこからフラスコに注ぐのだ。
しかし、それだけでは終わらない。
「じゃあ、輸血の残りを口にも入れますので、チューブをくわえてもらえますかぁ」
そんなことを要求されるのかとたじろいだが、気が弱いので、拒否できなかった。言われるがままにチューブを吸うと、赤いカクテルが流れ込んでくる。むせそうだ……。
「お連れ様もいかがですか」
ナースは私の口からチューブを外すと、幸枝にも飲ませ始めた。男同士だったら、どうするのだろう。
笑ったあとは料理を頼む。脱腸、目玉の親父、舌先三寸など、激しいメニューが多いので、ほどほどのものを頼むことにした。
「田舎っペ」というカナッペは、具が少々淋しいけれども、無難線だ。
「脳みそ解剖」は、小道具が冴えている。味もまずまずだ。
幸枝がビールを注文した。シリンダーに入っている。
奇をてらったメニューは、それくらいにしておいて、残りは普通の料理にした。
飲むと、尿意を催してくる。従業員にトイレの場所を尋ねたら、大きな声で「検尿はこちらで~す」と案内された。すると、それを聞いた他の従業員も、口々に「検尿でーす!」と連呼する。大変恥ずかしい……。
用を足し、席に戻るときには、「検尿お疲れ様でした!」の掛け声が待っている。5~6人に言われると、もう苦笑するしかない。
検尿のあとは、デザートを注文した。
幸枝は、クリームブリュレ。
私は、チョコバナナ生クリームクレープである。これは美味しかった。
デザートが終わったら、「ショータイムです」との声がかかる。この間は、オーダーストップとなり、照明が落ちる。
何が始まるのかと思っていたら、遠くの席から女性の悲鳴が聞こえてきた。履物と衣ずれの音が近づいてくる。どうやら、何かが監獄内を歩き回っているようだ。
そのとき、こちらの席のカーテンが開き、音の正体が見えた。
おおっ!!
しかし、何かパフォーマンスがあるのかと思ったら、ただ通り過ぎるだけだった。これでは、せっかくの演出がもったいない。もっとも、他の部屋は見えないので、本当のところはわからない。実は、オバさんのところだけ素通りしていたりして。被害妄想か?
たっぷり楽しんだあとは、治療費を支払い退院する。あっという間に、2時間経っていた。
いやあ、盛り上がったなぁ!
大人数で行けば、もっと楽しいと思う。
刺激を求めるときには、ぜひどうぞ。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)