毎年、妹の家では、5月5日に端午の節句を祝う。男の子のいない我が家では、料理目当てに押し掛け、食い逃げする日でもある。今年もお呼ばれしたので、ウホウホ喜んで出かけて行った。
「こんばんはぁ~」
「いらっしゃい」
テーブルの上には、すでに料理が並んでいた。端から順に観察していたら、ひときわ目を引く逸品があった。
「おお!」
これは、かまぼこらしい。薄く切り、バラのように丸めて、実に可愛らしく仕上がっている。こんな器用な芸当ができるのは義弟であろう。
「すごくキレイね。緑の葉っぱは何?」
「水菜」
彼はわざとそっぽを向いて答えたが、細かく解説しない様子から、自信作であるとわかる。隣の皿も美味しそうだ。
「さすがね」
姉も感心し、うっとりと眺めていた。他にも、牛ステーキや馬刺しなどが並んでいたが、すべて義弟が作ったものらしい。
妻である妹は、皿を運んだり、子どもたちを呼んだりして、手伝っているふりをしていた。だが、労働量の違いは明白である。私は彼女に、少々意地悪な質問を投げかけてみた。
「奈津は何を作ったの?」
私と姉は「何も」という答えを予測していたが、そうではなかった。
「ほら、これだよ」
奈津は得意気に冷蔵庫を開け、小さなカップを取り出した。中には、キューブ状にカットされた野菜と、ゼラチンで固まったコンソメスープが入っている。
「へええ~、コンソメゼリーだね」
「買ってきたみたいじゃない。そのカップもオシャレ」
見た目だけでなく味もいい。姉と口を揃えて褒めると、妹は満足そうに微笑んだ。やればできるのだから、もっといろいろな料理に挑戦すればいいのに。
しかし、水を注したのは甥である。
「うわあ、これ食べたくない。スープならスープでいいのに、何でゼリーにするの?」
「…………」
ああ、これでまた、妹のやる気が損なわれる。
酒盛りをしているうちに、注文していた釜飯が到着し、お腹いっぱいになった。あとは、お約束のケーキだ。
こどもの日ケーキは、チョコレートベースのものが多いけれど、これは生クリームたっぷりで美味しかった。
「ごちそうさまでした」
時計を見たら、まもなく23時になるところである。
「じゃあ、帰るね。おやすみ」
「おやすみ。気をつけて」
妹一家や両親に見送られて、夫が車を発進させる。
やはり、今年も食い逃げだった。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「こんばんはぁ~」
「いらっしゃい」
テーブルの上には、すでに料理が並んでいた。端から順に観察していたら、ひときわ目を引く逸品があった。
「おお!」
これは、かまぼこらしい。薄く切り、バラのように丸めて、実に可愛らしく仕上がっている。こんな器用な芸当ができるのは義弟であろう。
「すごくキレイね。緑の葉っぱは何?」
「水菜」
彼はわざとそっぽを向いて答えたが、細かく解説しない様子から、自信作であるとわかる。隣の皿も美味しそうだ。
「さすがね」
姉も感心し、うっとりと眺めていた。他にも、牛ステーキや馬刺しなどが並んでいたが、すべて義弟が作ったものらしい。
妻である妹は、皿を運んだり、子どもたちを呼んだりして、手伝っているふりをしていた。だが、労働量の違いは明白である。私は彼女に、少々意地悪な質問を投げかけてみた。
「奈津は何を作ったの?」
私と姉は「何も」という答えを予測していたが、そうではなかった。
「ほら、これだよ」
奈津は得意気に冷蔵庫を開け、小さなカップを取り出した。中には、キューブ状にカットされた野菜と、ゼラチンで固まったコンソメスープが入っている。
「へええ~、コンソメゼリーだね」
「買ってきたみたいじゃない。そのカップもオシャレ」
見た目だけでなく味もいい。姉と口を揃えて褒めると、妹は満足そうに微笑んだ。やればできるのだから、もっといろいろな料理に挑戦すればいいのに。
しかし、水を注したのは甥である。
「うわあ、これ食べたくない。スープならスープでいいのに、何でゼリーにするの?」
「…………」
ああ、これでまた、妹のやる気が損なわれる。
酒盛りをしているうちに、注文していた釜飯が到着し、お腹いっぱいになった。あとは、お約束のケーキだ。
こどもの日ケーキは、チョコレートベースのものが多いけれど、これは生クリームたっぷりで美味しかった。
「ごちそうさまでした」
時計を見たら、まもなく23時になるところである。
「じゃあ、帰るね。おやすみ」
「おやすみ。気をつけて」
妹一家や両親に見送られて、夫が車を発進させる。
やはり、今年も食い逃げだった。
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「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
私は“祝日”やら“日本の伝統的風習”等に弱いのですが、「端午の節句」って祝うものなのですね...
私は男3人兄弟なのですが、記憶にある限りでは誰も祝ってもらった覚えはないような...
地方や土地によっても違うのかもしれないと自分に言い聞かせようと思います
しかし素敵な料理もさることながら、いつも写真を上手にお撮りになっていらっしゃいますね~
ウチでは息子君が柏餅を食べるだけでした。ケーキもいいですね。
ホント綺麗だわ。
私は妹さんに近いわ。
料理嫌いじゃないけど、配偶者がうますぎると、やれないよ。
あちらも、私が作るより、自分で作ったおいしいもののほうがいいみたいだし…
えっ、節句ってお祝いするものじゃないんですか?
うちは女3姉妹でしたが、ひなまつりは特別メニュー、ケーキ付でしたよ。
それが全国レベルかどうかは不明ですが。
まあ、こちらは、何かと理由をつけてドンチャン騒ぎをするのが好きなのです。
ZUYAさんちは、静かに日常を送るご家庭だったのかも。
ちなみに、この写真は妹と娘が撮ったものをもらいました(笑)
褒めてくださり、喜んでいると思います。
こどもの日にちなんだお菓子が店先に並んでいました。
せんべい、あられ、クッキー、チョコレート…。
こいのぼりや、カブトのパッケージに入っています。
ケーキもバリエーションが豊富です。
目移りして、選ぶのが大変でしたよ。
柏餅も好きです(笑)
妹も同じ気持ちなんでしょうか。
料理が得意な配偶者がいると、気が引けて作る気になれないかも。
適度なレベルだと、「負けるもんか」という気持ちになりますけどね。
差があり過ぎると「おまかせします」と思ってしまうかも。
でも、ご主人はYUMIさんの作ったお料理を食べたいんじゃないかしら。
家族が作ってくれたものは何でも美味しい♪
たまに作っても文句を言われてテンションだださがりします。
かまぼこにバラ、ほんとに綺麗です。
ガン見して、作り方をイメージしました。
これなら文句を言われなさそう!
次の帰省に備えて練習しておこうっと
くまさんは、お料理上手なんですね。
しかし、文句を言うのはどうかと…。
味はレシピ通りにやれば、さほど不味くはありません。
見た目が難しいです。
そこを指摘されるとツラいです。
かまぼこローズ(?)は安い食材でお手軽に作れるからいいですね。
私も練習してみようかな。
料理はたのしい♪
義弟さんはお料理上手でしたか!重宝しますね。
てか、ご主人もお料理はいつも作っているので上手でしょうね。
次回は全員で料理コンテストをやったら楽しいと思いますが、妹さんが反対しそうかな…
そうですね、イベントに群がる習性があるのかも。
義弟は実にマメな性格です。
お料理だけでなく、掃除や片づけなども率先してやります。
もし、妻も同じようなタイプだったら、衝突するかもしれませんね。
妹のように任せたほうがよいのでしょう。
料理コンテストは姉も反対するかも(笑)
妹以上に料理をしません。
母は喜んで参加するでしょうが、自己評価が異常に高いので、優勝できないと不機嫌になりそうです。