しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「護られなかった者たちへ」  中山七里 

2019年08月20日 | 読書
「護られなかった者たちへ」  中山七里    NHK出版       

仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が行方不明になり、半月ほどして無人のアパートで死体で発見される。
死因は手足を拘束され餓死だった。
金品は残されており、残酷な殺害方法から怨恨が疑われた。
しかし、家族も職場の人間もそれを否定する。
三雲は生活保護申請の決裁者であり、その事で恨まれたのではないか。
捜査に当たる笘篠と蓮田刑事は、福祉保健事務所で部下の円山菅生から生活保護についてその事を聞く。
円山は、生活保護の実態を2人の刑事に知らせ、実際の業務に同行させ様子を見せる。
生活保護を申請する人たちは、その時にすでに殺人をしようなどと言う気力は残っていないと。
30歳の利根勝久は、三雲が行方不明になる数日前に模範囚として出所していた。
機械加工技能士二級の資格を持っているが、就職はやはり前科があると言うだけで難しい。
しかし、自分の社会復帰よりも優先させる事があった。
そして、再び餓死状態の遺体が発見される。
その人物も、怨恨を誰もが否定した。






生活保護を受け取る人達が増えていると言う。
今、貧富の差が広がっている。
そんな今の社会制度に現状を知らせて、問題を投げかける物語。
ただ、極端に書かれている事をあると思う。
公務員として福祉に携わる者が、そこまで事務的に感情もなく決裁していくとも思えない。
“それぞれの人の顔を見ていない”と言うのも、人手不足があると思う。
今も児童虐待が問題になり、子どもの状態を把握するようにと総理大臣が指示していたが。
それをするだけの人員が確保されているとは思えない。
日々の業務も手一杯だろうと予想される。
人手も人件費でお金。生活保護もお金。
もっと税金の使い方をきちんとして欲しい。無駄使いも相変わらず多い気がする。

ミステリとしての物語は、違和感がアチコチに。
まず、誰もが善人と言う人は存在しないだろう。
逆恨みと言う事もあるし、立場の反対の人から話を聞かなかっただけではないか、と。
実際、過去に殴られた事があるなら家族としてそれを覚えているだろうに。
利根の行動も、ああ、これは違うと直ぐ分かる。

ただ悲惨な物語は、実際にもあるだろうと思える。
円山の願いが、すこしでも届いて良い社会になって欲しい。


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