しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「王とサーカス」  米澤穂信  

2017年01月31日 | 読書
「王とサーカス」  米澤穂信   東京創元社     

2001年。
大刀洗万智は6年勤めた新聞社を辞める。
ある事が切っ掛けで、“道はひとつではない”とフリーになるつもりだったが、知り合いの雑誌編集者が誘ってくれる。
その〈月刊深層〉がアジア旅行の特集を組むので、事前取材の為にネパールのカトマンズに来ていた。
トーキョーロッジと言う安宿に落ち着き、同じ宿屋の人と顔見知りになり、土産物を売りつけて来た、サガル少年とも親しくなる。
その夜、王宮で国王、王妃が皇太子に殺害されたというニュースが流れる。
万智はジャーナリストとしてその事件の取材を始める。








『さよなら妖精』の大刀洗万智が登場する物語。
大刀洗万智って、こんな人だったのだ。
あまり、強く印象を持っていなかったので、今回はその性格もよく分かった気がする。
そして実際に2001年6月に起きた、ネパールの「王族殺害事件 ナラヤンヒティ王宮事件」が下地にある。
万智から見たネパールや、万智の周辺にいる人々の事。
万智が淡々としているので、こんな事件があったのに周りも落ち着いて感じられる。
事件を報道する為に取材すると言っても、かなり限界がありそう。
ジャーナリストとして、という意味を問う場面もあるのでその為に必要だったのかも。
答えの出ない問いがいくつも出て来る気がする。
「王とサーカス」の意味も深い。
報道って、大きな力がある割にかなりいい加減な所があるもの事実。
全ての人の気持ちに配慮することも出来ないもの。
万智の葛藤も分かる。
しかし、この物語を動かしている真の主人公はサガルだったと最後に気が付く。
サガルの思考、行動力。
それは自分たちが生きて行くための物。
その辺りは、のほほんと暮らしていける日本とは違うのだ。
はやり、万智はこの国ではよそ者でしかないのか、と。
殺人事件の謎解きのような要素もあるが、それはあまりメインにはなっていない。



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