しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「閉じた本」  ギルバート・アデア 

2011年12月27日 | 読書
「閉じた本」  ギルバート・アデア     東京創元社 
  A CLOSED BOOK                  青木純子・訳

交通事故で顔にひどい怪我をして眼球も失ったブッカー賞作家ポールは、郊外の家に隠棲し世間と隔絶した生活を送っていた。
ある日彼は、口述筆記用助手の募集という求人広告を新聞に出す。
面接に訪れた青年ジョン・ライダーは、作家ポールの無惨な顔貌にもたじろがず、みごとに職を得る。
その日からポールの眼となったジョンは、作家の望む仕事、回想録の口述筆記を新しいマックであざやかにこなしていく。
何も見えないポールが、現実世界を知るのはジョンの言葉を通してだけ。
すべては順調に進んでいるようだったのだが、何かがおかしい…。ちょっとしたきっかけでポールは恐怖に襲われる。
ジョンという眼を得たのに、実は彼は以前よりも深い闇の中に引き入れられているのかもしれない。
        <カバー裏より>





会話と独白のみで書かれた物語。
タイトルの「閉じた本― A CLOSED BOOK 」はポールが書こうとしていた自伝的回想録のタイトルでもある。
目が見えないこと、そこから感じることなどは、その本の中からも分かる。
出だしから、ジョンが何か怪しいところがあることは分かるので、怖さがじわじわと来る。
自分が信じていたものが違うと知った時の、戸惑いと混乱。
悪意を感じるジョンの振る舞い。
ただ、期待が膨らんだのに比べ、謎解きの方はいまひとつの展開。
ありきたりな理由で、途中の会話も想像出来た。
重点はミステリな結末ではなく、それまでの過程。
ただ、そのまま終わらず、もうひとつ捻りがあった。
ラストの形勢逆転は、よかったようなそうでないような。
独白がある分、ポールの感情に気持ちが行き、感じる恐怖に同調しているのだが。
事実をじっくりと考えると、ジョンの気持ちも分かるから。

独白の活字が読みづらいと思っていたが、それにも理由があった。

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