しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「怪物はささやく」  パトリック・ネス

2017年09月27日 | 読書
「怪物はささやく」  パトリック・ネス=著 シヴォーン・ダウド=原案   あすなろ書店   
A MONSTER CALLS     池田真紀子・訳

コナー・オマリーは13歳。
7歳の時両親は離婚し、父親は新しい家族とアメリカで暮らしている。
1年前、母親は病になり、治療の副作用で苦しんでいる。
そんな中、コナーは同じ悪夢を繰り返し見るようになる。
ある夜、コナー目が覚め、時計を見ると12時7分。
自分を読んでいる声に気が付く。
窓の外を見ると、そこには怪物が立っていた。
それはイチイの木の怪物だった。
イチイの木は、家の裏手の小高い丘にある教会の墓地の真ん中に立っていた。
そのイチイが歩いて来たのだ。
イチイはコナーに3つの物語を話すから、次はお前が4つ目の物語を話すのだと言う。
そして、自分を呼んだのはコナーだと。
イチイの木は毎夜12時7分に姿を現す。

イチイの木が話したのは、今まで自分が歩いた時の話。
イチイは余程の危機がないと歩かない。
その話は、コナーにはいまひとつ理解出来ない物だった。
世の中、良い事悪い事ははっきり分けられない事や、自分の事を1番大事に考えてしまう事の危うさなど。







結構辛く心に迫る物語。
今、この状態にある人がいたら、救いになるのだろうか。

コナーは母親の病が治らないものと感じていた。
でも、治って欲しい、治らない筈がない、とも思おうとしただろう。
自分で自分の気持ちがコントロール出来ないけれど、それを表す事も出来ない。
そんな中で、これを早く終わらせたいともどこかで思っていた。
それははっきりと意識してはいない事だろうが、悪夢となってコナーを苦しめる。
そして、母親が治らないと知った時、自分のせいだと思う。
そんな罪悪感を取り除く為に、イチイの木は歩いてやって来る。
言葉や考えることより、重要なのは行動すること。
それを知らせるために。
人間の矛盾を知らせる物語は、結構難しく、コナーにも何が言いたいか分からなかった。
必要だったのは、コナーと一緒にいる時間だったのではないだろうか。
コナーが心を開いてくれるのを待っていたのかも。
本当なら、誰にも話す必要のない、コナーの秘密だったのだから。
でも、それを隠して持っていては、コナーは救われない。
そして、大事だったのは、最後までイチイがコナーの側にいてくれた事。
寄り添う人(物)があること。
お母さんは理不尽な事には怒っていいと言う。
これも感情を溜め込まないで、正直にいて欲しいと言う事だろう。
しかし、怒りは暴力に変えていいものではないと思う。
怒りの表現も色々あると思うが、他人や他人の物を破壊して良い事にはならない。
勿論自分を傷つけることも。
怒りが暴力になってしまった事が引っ掛かる。

イチイの木の怪物の姿は迫力あるイラストで、こんな感じかと実感。
イチイの木が良く分からず調べたら、別名オンコ。
オンコは良く知っていた。あれがあんな大きな怪物になるのか。
ちょっと不思議。

ハリーという男の子が、よく分からない。
なぜ、コナーに意地悪したのだろう。この子にも何かあるのだろうか。
周りの子どもたちの反応も難しい。
本当にみんなそんな風になってしまうのだろうか、とも思う。
しかし、コナーの心理状態なら、どんな態度でも過剰反応してしまうだろう。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「エコー・パーク」  マイ... | トップ | 「プラハの墓地」  ウンベ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事