しましましっぽ

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「GREAT EXPECTATIONS 大いなる遺産」  Studio Life

2015年01月11日 | 観劇
「GREAT EXPECTATIONS 大いなる遺産」  Studio Life
Studio Life 30周年記念第1弾 河内喜一朗追悼

2014.12.18(木)~2015.1.12(月)   新宿シアターサンモール

原作 チャールズ・ディケンズ
脚本 ジョー・クリフォード
翻訳 阿部のぞみ
上演台本・演出 倉田淳



原作は結構長いが、これが2時間15分の舞台になる。
枝葉はバッサリと切り落として、幹だけを見せる感じ。
原作は大人になったピップが子どもの頃を振り返って語る構成で、その時に自分の気持ちも伝えてくれる。
それを舞台では、子どものピップと大人のピップを同時に登場させて、その思いを大人のピップが表情で伝えてくれる。
ジョーやビディーに対して、高慢な態度を取っている時の辛そうな表情。
後悔や懐かしさを、言葉ではなく表情や動きで見せてくれる。
ラストでエステラと対した時は、2人のピップで語りかける。
そこが子どもから大人へと、2人の時が一つになった時なのだと。

ピップとエステラの物語になっていて、2人の心理的なやり取りが物語を進めていく。
子どもの時に出会った2人。
ピップに1番影響を与えたのはエステラ。
エステラにとってはどうだったのだろうか。
ラストシーンも原作とは変わっていたが、これはスタジオライフのオリジナルで、書き換えてもらったそうだ。
原作ではそれぞれの脇役の人物も丁寧に書かれ、周りの人たちに助けられて成長する。
舞台はジョーの存在は大きかったが、ハーバート・ポケットやウェミック、ビディーは脇役になる。
その分、性格的にも少々変わって感じられ、ハーバート・ポケットやウェミックが少々冷たく感じられる。
ビディーも、もって魅力ある賢い女性なのに、そこまでは描かれていない気がする。
それはちょっと残念だった。

舞台セットが素敵だった。
その舞台セットは、傾斜のある床に傾いた椅子。
基になっているのはミス・ハヴィシャムの部屋なのだろう。
朽ち果てた黒い薔薇の造花が所々に置かれ、朽ち果てたウェディングケーキも置かれている。
しかし、それを1度も移動させたり、何かを追加させることなく、照明だけで見せたい所を強調させて、すべての場面になる。
それで全ての場面が出来てしまう。
舞台の面白さだ。
両端に額縁の様な枠があり、そこから出入りもするが、1番効果的で素敵だったのは、その後の椅子に座ったミス・ハヴィシャムが絵画の様に見える事。
衣装が白いウェディングドレスで白髪の姿は、闇の中で浮かびあがる。


いつのもWキャスト公演だが、主人公くらいがWで後はシングルが多い公演もある。
今回は、ほとんどがWキャスト。
だから出来たのか、クロッシングチームも登場。
ジョー夫婦の組み合わせや、エステラとハヴィシャムの組み合わせが違うのが面白かった。
しかし、全体的には似ている感じだった。
ピップが笠原さんで1人で、ヤングピップの松本さんと関戸さんも似ているからかも知れない。



<キャスト感想>
ピップ 
 笠原浩夫
話すことなく、表情や仕草だけで表現するのは大変だと思うが、とても良く気持ちが伝わる。流石。
ピップは大人も子どもも出ずっぱり。

ヤング・ピップ
 関戸博一
関戸ピップは、苛立ちや暗さがよく伝わる。
遺産を相続した時の有頂天さも際立つ。

 松本慎也
松本ピップの方が明るさを感じる。
元気もあり、そのままでも何とかやっていけそうな感じ。

エステラ 
 青木隆敏
青木エステラは想像出来た。
上から目線の意地悪な感じとか。
子どもの時と忙しない不雰囲気から、大人になった時の落ち着きが出た雰囲気へちゃんと変わっていた。

 久保優二
無機質な感情を表に出さないエステラは、青木エステラと同じ雰囲気だった。
久保さんは、声が自分にはいまひとつなのだ。

ミス・ハヴィシャム/レイモンド
 倉本徹
原作のイメージは倉本さん。
妖しく朽ち果てて行っている途中と言うのが納得。

 山本芳樹
白い衣装が似合っていて、綺麗。
優雅な動きも、気高さを表す。
召使のレイモンドは、自由に演じ過ぎるくらい自由で、可笑しい。

ジョー
 仲原裕之
優しさを前面に出して、ピップに寄り添っている。

 奥田努
素朴さそのもののジョー。ピップを包み込むような優しさ。
同じ笑顔でも心からの笑顔と戸惑った時のちょっと誤魔化すような笑顔は違う。
奥田さんも上手だ。

ミセス・ジョー/ウェミック
 緒方和也
ミセス・ジョーの感じは緒方さんの方が好き。
生活に疲れて、でも一生懸命やっている働き者。
感情を出さずに、事務的に仕事をこなすウェミックは、少々冷たさを感じる。
ジャガーズの前では、そんなウェミックだから。
ピップと2人のシーンがあれば、また違った面が見られたかも知れない。
出番が少なくて、残念なウェミック。

 及川健
ミセス・ジョーは可愛らしさをまず始めに感じてしまって、以外に年下に見える。
生活に疲れたというよりも、その時その時にヒステリーを起こしている感じ。
ウェミックは珍しい成人の男性役。
違和感はない、って本来の姿なのだから当たり前か。
ウェミック役は及川さんの方が好き。
ピップに同情している感じ、優しさが伝わって来た。
ウェミックは、同じ台詞を言っていても、性格の違いが感じられた。

マグウィッチ/モリー
 船戸慎士
迫力があって、怖い雰囲気が強かった。
ピップに正体を明かすシーンは、本当に凄い迫力だった。
卑屈な感じも出ていて、原作のイメージそのまま。
このシーンは、演じて見せられると、より心に響いて来る。

 石飛幸治
迫力と言う点だは、船戸さんにちょっと負けるが、それでも十分に怖い。
石飛さんは、モリーの方が似合う。

ビディー
 千葉健玖
賢く、ピップの先行きを見越して心配しているような。
芯がしっかりしているビディー。
千葉さんのイメージそのままでもある。

 若林健吾
ほんわかとして、穏やかな優しいビディー。
女役もとてもしっくりして良かった。
とても、シンデレラの継母と同じ人とは思えない。シンデレラの継母と同じ人とはとても思えない、穏やかな優しい雰囲気。
見た目も可愛かった。
今まで、あまり強い印象がなかった若林さんだったが、存在感が出て来た。
若林さんも、上手くなったと感じる。

ジャガーズ 
 山康一
見た目や仕草からは、滑稽な雰囲気も感じるのだが、本人は大真面目。
良い人なのか、嫌な人なのか。
こんな人物がいると、物語にもメリハリが付く。

ハーバート・ポケット
 藤波瞬平
上品な雰囲気があるので、ピッタリな役という感じ。
ただ、ピップに対してはあまり愛情は感じられないのは、係わりが少なかったからだろうか。


若手で印象に残ったのは、八木澤元気さん。
とても堂々としていて、若手には思えないくらいなのだが。
女役で癖のあるカミーラも良かったが、藤原さんと一緒にピップに借金を取りに来る男。
その台詞の言い方や声が好きで、毎回楽しみにしていたシーンのひとつ。



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