しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「黄昏に眠る秋」  ヨハン・テオリン 

2018年09月08日 | 読書
「黄昏に眠る秋」  ヨハン・テオリン  ハヤカワ・ミステリ文庫   
 SKUMTIMMEN          三角和代・訳

霧に包まれたエーランド島で、幼い少年が行方不明になった。
それから二十数年後の秋、少年が事件当時に履いていた靴が、祖父の元船長イェルロフのもとに突然送られてくる。
イェルロフは、自責の念を抱いて生きてきた次女で少年の母のユリアとともに、ふたたび孫を探しはじめる。
長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた二人を待つ真実とは?
   <文庫本裏カバーより>









1972年9月、霧の中彷徨い出て、ニルスと出会い消えた5歳のイェンス。
これが物語の発端。
それから20年後の現在と、1936年7月から始まるニルスの物語が交互に語られて行く。
イェンスのサンダルが祖父のイェルロフに届いたことにより、動き出した時間。
ニルスの物語は、少しずつ1972年に近づいて行く。
スウェーデン南東、バルト海に浮かぶエーランド島、その北部のステンヴィーク村が舞台。
自然の中で、ゆったりと進む物語。
謎解きと言うよりも、そこに暮らす人たちの人間ドラマのように静かにゆっくりと進む。
ニルスは軽率で感情を抑えられない、後先が考えられない人間だった。
すでに死んだとされるニルスが犯人だと推測するイェルロフの友人エルンスト。
ニルスは本当に死んだのか。
そんな謎も、ニルスの物語で明らかになっていくのだが。
読んでいてもニルスが、イェンスを殺す理由は見当たらない。
何故そうなったかが、最後の謎。
それが分かった時、新たな感情を抱えて生きていた人物が分かる。
最後は悲しい結末が明らかになる。
それでも、前向きになれる気持ちがユリアに起こったのが、ほっとさせられる。
どんな真実でも、当事者には分からないと気持ちの区切りがつけられない。
雰囲気のある物語。


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