しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「伯林蝋人形館」 皆川博子  

2006年10月24日 | 読書
「Ⅰ アルトゥール・フォン・フェルナウ 温室」
「Ⅱ ナターリャ・コルサコヴァ 沼の娘」
「Ⅲ フーゴー・レント 希望」
「Ⅳ ハインリヒ・シュルツ 望郷」
「Ⅴ マティアス・マイ 自殺案内人」
「Ⅵ ツェツィリエ 無題」
「書簡」
からなる連作集。
舞台は第1次世界大戦後のドイツ、ベルリン。
各章のタイトルとなった人物の物語が書かれている。
この6人に、詩人のヨハネ・アイスラーと、その弟デオドル・アイスラーが加わり、物語は紡がれていく。



アルトゥール、1902年ポツダム生まれ。軍人の道を進みながら、終戦後はジゴロになる。
子どもの頃の憧れたヨハネに憧れ続ける。
ヨハネ・アイスラーの弟デオドル・アイスラーはヨハンに憧れ、アルトゥールにも愛を注ぐ。

ナターリャ、1906年ロシア生まれ。革命を逃れ亡命してくる。シナリオを買いたい夢を持ちながら、売り子をしている。
アルトゥールに出会い、恋する。

フーゴー、1900年ミュンヘン生まれ。赤軍兵士に家族を殺され義勇軍に助けられたが、なにもかもから逃げ出したくて、ベルリンに来て、ただ過ごしていた。
義勇軍の時に助けてくれたアルトゥールに憧れていた。

ハインリヒ、1896年ケーニヒスベルク生まれ。
ユダヤ人のハインリヒは自分はドイツ人だと証明したくて軍人になる。
負傷したハイ二はヨハンに看病してもらう。
ナターリャに出会い恋をする。

マティアス、1887年リューベック生まれ。
蝋人形師。
アルトゥールの家に下宿していたことがあり、ヨハンとも知り合う。
ツェツィリエが5歳の時に蝋人形の興行で知り合う。

ツェツィリエ、不詳。
しかし、マティアスの章からみると、1889年生まれで、本名はベティーナ。
歌手として、興行主として成功を収める。
この物語の作者でもあり、仕掛け人でもある。


登場人物の係わりは、読み進めていくにつれてわかり、物語の全貌が見えてくる。
途中の章はよく分からない部分もあるが、謎解きをしていくような面白さもあり、先を急ぐように読み進められる。
しかし、はっきり分かったと思ったら、最後まで読むと、何が真実なのかはっきりしなくなる幻想的な物語。
それぞれの登場人物が魅力的で、その時を真っ直ぐに生きている。
しかし、時代の悲惨さが思い通りにさせてくれない、切なさがある。
人種や階級が深く人生に影響する時代。
熱い思いが、優しく伝わってきて、不思議な気持ちにさせてくれる。誰もが優しいからかも知れない。
皆川さんのドイツを舞台にした物語とおなじ空気がこの物語にもある。

好き嫌いがある作品だと思うが、自分は好きだ。
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