しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「使命と魂のリミット」 東野圭吾  

2007年06月05日 | 読書
氷室夕紀は帝都大学病院の研修医として、今は最終目標である心臓血管外科に勤務している。
夕紀は中学生の時に父親の健介を大動脈瘤の手術中に亡くしていた。
健介は「人にはその人しか果たせない使命というものを持っている。だからしっかり生きていけ」ということを言っていた。
「医者になり、お父さんみたいな人を助ける」と母親に宣言したのだが、実はもうひとつ、誰にも言えない別のある意味を持った動機があった。
心臓外科の教授、西園陽平は何年も第一線で活躍してきた名医で、健介の手術を担当した医者だった。
今その下で働きながら西園が優れた医者だということは夕紀にも分かっている。それならなぜ、自分に父親は救えなかったのだろうと釈然としない。
夕紀は手術前に母親の百合恵と西園が喫茶店で会っているのを目撃していた。
その帝都大学に、「医療ミスを公表せよ」という脅迫状が届く。



登場人物が微妙に絶妙に関わりを持ちつながっていくうまさがある。
ここに登場する人は、みんな自分の仕事を一生懸命、まさに使命だと心得て働いている人たち。
ちょっと捻くれて考えると、こんな好人物ばかりな世の中ではないだろうなと思う。
辛いのばかり読んでいるので、ちょっと甘いかなとは思ってしまうけれど、こういうのもいいのだろうな。

健介が口にした「人の使命」ということがテーマになっている物語。
「使命」とは、あまり最近考えたことのない言葉だ。
医者として、警察官として、そして社会生活を送っている人間として積極的に生きて行くのに必要な力のような。
それぞれの生きる道、人生において使命はあるのだろう。そしてそれは「魂」と連携しているのか。魂は良心なのだろうか。
それをどう重要に考えていくか。それを考えない人が増えている世の中だから。
人間を信じようという物語だと思う。

先日読んだ五十嵐貴久さんの「交渉人」を思い出させる物語でもあった。明と暗といった感じはあるが。
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