しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「闇の底」 薬丸岳  

2007年02月27日 | 読書
内藤信雄、29年前に少女を2人殺した男が殺される。
殺した男は内藤が再び同じ罪を犯したことを確信し、自分の愛する紗耶を守るためにと殺した。
長瀬一樹刑事は、幼女殺害の捜査にあたっていた。長瀬も幼い時に妹の絵美を殺害されていたので、遺族の悲しみが痛いほど分かった。
村上康平刑事は、公園で見つかった「首だけの死体」の調査にあたる。その死体の男もかつて幼女殺害し、出所していた男だった。


「天使のナイフ」は少年犯罪とその償いがテーマで、今回は幼女殺害の性犯罪とその再犯性をどうしたらいいのか、ということがテーマになっていると思う。
ここにも、出所したら罪は償ったことになるのかという問いかけと、再犯が多い性犯罪者をどのように社会で扱ったらいいのかの問題が提議されている。
両方に共通するのは、犯罪は警察が捕まえただけでは終わらないということ。
長瀬刑事が、犯罪者を追う立場から、逆に守らなければならない立場になりその問題がよりはっきり浮き彫りになる物語。
長瀬刑事の心境は始めから、犯人を憎む方になっているが、それが警察官という立場としてはどうなのか、感情ではなく理性で考え行動せよ、ということかも知れないが、長瀬刑事の葛藤は痛々しく、辛かった。
長瀬刑事の最後の決断は、どうなのだろう。
人間の気持ちとして正直に行動するとラストはああなるのだろうか。
というか、物語としては、もっと正統派で終わると思っていたので、ちょっと戸惑った。それでいいのだろうかという思いがある。
あの後も長瀬刑事は救いのない人生を送りそうで・・・・でもどちらをとっても後悔はあるだろうし・・・難しい。
心の「闇の底」には光はあるのだろうか、望みはあるのだろうか。
深い心の傷はどんなに歳月が経っても消えない。だから、傷を受けない、与えないことが大切なのだ。

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