「わたしを離さないで」 カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫
Never Let Me Go 土屋政雄・訳
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。
生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。
キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。
図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―
<文庫本裏カバーより>
ちょっと不思議な雰囲気のある始まり。
これはどういう世界なのだろうと探りながら読んで行く。
段々、ヘールシャムと言う場所や、キャシーたちの役目が明らかになる。
近未来にはこんな事が起こるのだろうか。
淡々とキャシーが回想していく感じで物語が進んで行のだが。
なぜこんなにも普通の生活と変わらないのだろうか。
提供者は、自分の未来をあっさりと受け入れるのだろうか。
例えクローンであろうと心はなんの変わりもないのだろうから葛藤もあるだろうに。
それが気になって、大人になってからの日々の出来事が何となく嘘っぽく感じてしまった。
そして『優秀な介護人』とは、なにを持って優秀なのだろう。
読んでいて、前に似たような話を読んだのを思い出す。
ジョディ・ピコーの『わたしのなかのあなた』。
主人公のアナの葛藤が痛々しかった。
映画にもなっているが、原作本と映画の結末の違いに驚いた。
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