「花を捨てる女」 夏樹静子 新潮文庫
6編からなる短編集
「花を捨てる女」
若く美しい女、栗原玲子が自宅のベッドで胸に短刀を突き立てられ死んでいた。
死に顔が穏やかで、アパートの玄関の鍵は開いていた。
室内を物色した跡は多少あったが、顔見知りの犯行の可能性が高そうだった。
やがて、玲子と付き合いのあった男、和久田孝夫が容疑者として浮かび上がる。
孝夫には病弱な妻、せつ子がいた為、玲子との板挟みになってと推測された。
しかし、孝夫は否認し、証拠も挙がらなかった。
やがて聞き込みを続ける警察は、全く思いもやらぬ人物の目撃証言に出会う。
「アイデンティティ」
警察に44歳の加納学が、妻の直子が家出をした〈家出人捜索願〉届け出る。
次の日、直子の親友の岸早苗が訪れ直子の家出には不自然な点があり、夫婦間にトラブルがあったと伝える。
警察は、刑事課と相談すると言い、それなりの捜査をする。
1週間後、直子が戻って来たと学から連絡がある。
早苗は、戻って来た直子が別人だと警察に伝える。
「尽くす女」
ボランティアで在宅老人のケアをしている初江。
人に尽くすのが生きがいの初江だが、再婚した相手、遠藤弘市はそれをさせてくれなかった。
物事に無関心で、妻の心遣いを嫌うのは、根底に極端はケチがあるからだった。
それに気が付いた初江は、外にその生きがいを見つける。
そして、世話をしていた、老人、要次が癌で亡くなる。
初江はある計画を実行し始める。
「家族写真」
池川奈津子の夫、剛志が出張先のホテルで殺されているのが見つかる。
警察に女性関係を聞かれ、真面目な人だからそんなことはなかったと答える。
が、1度女性の運転する車から降りるのを目撃して、気にしていた。
剛志の引き出しから、その女性の身元が分かりそうな物を発見する。
そして鳥須沙絵という女性を探し当て、会いに行く。
そこで、沙絵は病気だから会わせられないと言う父親に自分の推理を話す。
会わせてくれなければ、それを警察に話すとも。
父親は自分が聞いて見るから、それまで待って欲しいと言う。
やがて、父親からある提案がされる。
「三通の遺言」
倉田沙也子は親友の丹羽時枝に、不倫相手の宮下の殺されそうだと相談する。
宮下は夫の部下だが、結婚話しが持ち上がり沙也子を別れたがっていると言う。
しかし、沙也子は別れたくないと。
時枝は呆れて話しを聞きつつ、その事を書いて残して置けばいいとアドバイスをする。
もしもの事があったら、宮下を調べるようにと。
そして、沙也子は殺される。
時枝は預かっていた遺言を警察に届ける。
宮下は否定し、アリバイもあった。
2週間後、倉田が遺品整理をしていて見つけたと沙也子の遺言を持って来る。
「線と点」
東京駅新幹線のホームで、出張帰りの2人が隣のホームにとまっている列車に上司の佐久が乗っているのを見かける。
安西が佐久と親しく、熱海に腹違いの妹さんの所に行くのだろうと小川に話す。
翌日、熱海で佐久加代子の扼殺体が発見される。
腹違いの兄の姿が目撃されていた。
警察に呼ばれた佐久は、熱海には行っていないと言う。
短編らしく簡潔にサクサクと物語が進む。
しかし状況や心情は丁寧に書かれて、とても分かり易く、物語に入っていける。
内容は、ほとんどが“痴情のもつれ”からの殺人事件。
それもある程度、落ち着いた年の女性が主人公で似た感じもあるのだが。
それぞれが特徴があって面白かった。
あまり金が絡まない、純粋に愛情がどうこうの物が多い。
それが殺人にまで発展するほどの執着心。呆れる感じもするが。
何かあったら、あっさり捨て去ってもいいのではと思ってしまうが。
気持ちと行動が、これほど一致するものかとも思う。
迷いもなく一直線。
そんな中、「家族写真」は主人公の揺れる気持ちがしっくり来る。
ひとつ形の違う「尽くす女」が面白かった。
世の中から見たら、こんないい人はいないのにと思われるだろう。
しかし、相手によってはそれが不満の材料でしかなくなる。
こんなことが計画出来るなんて、なんて頭いい人だろう。
でも、上手くはいかないものだ。
やっぱり、駄目なら別れた方がよかったのに。
欲が出たのかな。
6編からなる短編集
「花を捨てる女」
若く美しい女、栗原玲子が自宅のベッドで胸に短刀を突き立てられ死んでいた。
死に顔が穏やかで、アパートの玄関の鍵は開いていた。
室内を物色した跡は多少あったが、顔見知りの犯行の可能性が高そうだった。
やがて、玲子と付き合いのあった男、和久田孝夫が容疑者として浮かび上がる。
孝夫には病弱な妻、せつ子がいた為、玲子との板挟みになってと推測された。
しかし、孝夫は否認し、証拠も挙がらなかった。
やがて聞き込みを続ける警察は、全く思いもやらぬ人物の目撃証言に出会う。
「アイデンティティ」
警察に44歳の加納学が、妻の直子が家出をした〈家出人捜索願〉届け出る。
次の日、直子の親友の岸早苗が訪れ直子の家出には不自然な点があり、夫婦間にトラブルがあったと伝える。
警察は、刑事課と相談すると言い、それなりの捜査をする。
1週間後、直子が戻って来たと学から連絡がある。
早苗は、戻って来た直子が別人だと警察に伝える。
「尽くす女」
ボランティアで在宅老人のケアをしている初江。
人に尽くすのが生きがいの初江だが、再婚した相手、遠藤弘市はそれをさせてくれなかった。
物事に無関心で、妻の心遣いを嫌うのは、根底に極端はケチがあるからだった。
それに気が付いた初江は、外にその生きがいを見つける。
そして、世話をしていた、老人、要次が癌で亡くなる。
初江はある計画を実行し始める。
「家族写真」
池川奈津子の夫、剛志が出張先のホテルで殺されているのが見つかる。
警察に女性関係を聞かれ、真面目な人だからそんなことはなかったと答える。
が、1度女性の運転する車から降りるのを目撃して、気にしていた。
剛志の引き出しから、その女性の身元が分かりそうな物を発見する。
そして鳥須沙絵という女性を探し当て、会いに行く。
そこで、沙絵は病気だから会わせられないと言う父親に自分の推理を話す。
会わせてくれなければ、それを警察に話すとも。
父親は自分が聞いて見るから、それまで待って欲しいと言う。
やがて、父親からある提案がされる。
「三通の遺言」
倉田沙也子は親友の丹羽時枝に、不倫相手の宮下の殺されそうだと相談する。
宮下は夫の部下だが、結婚話しが持ち上がり沙也子を別れたがっていると言う。
しかし、沙也子は別れたくないと。
時枝は呆れて話しを聞きつつ、その事を書いて残して置けばいいとアドバイスをする。
もしもの事があったら、宮下を調べるようにと。
そして、沙也子は殺される。
時枝は預かっていた遺言を警察に届ける。
宮下は否定し、アリバイもあった。
2週間後、倉田が遺品整理をしていて見つけたと沙也子の遺言を持って来る。
「線と点」
東京駅新幹線のホームで、出張帰りの2人が隣のホームにとまっている列車に上司の佐久が乗っているのを見かける。
安西が佐久と親しく、熱海に腹違いの妹さんの所に行くのだろうと小川に話す。
翌日、熱海で佐久加代子の扼殺体が発見される。
腹違いの兄の姿が目撃されていた。
警察に呼ばれた佐久は、熱海には行っていないと言う。
短編らしく簡潔にサクサクと物語が進む。
しかし状況や心情は丁寧に書かれて、とても分かり易く、物語に入っていける。
内容は、ほとんどが“痴情のもつれ”からの殺人事件。
それもある程度、落ち着いた年の女性が主人公で似た感じもあるのだが。
それぞれが特徴があって面白かった。
あまり金が絡まない、純粋に愛情がどうこうの物が多い。
それが殺人にまで発展するほどの執着心。呆れる感じもするが。
何かあったら、あっさり捨て去ってもいいのではと思ってしまうが。
気持ちと行動が、これほど一致するものかとも思う。
迷いもなく一直線。
そんな中、「家族写真」は主人公の揺れる気持ちがしっくり来る。
ひとつ形の違う「尽くす女」が面白かった。
世の中から見たら、こんないい人はいないのにと思われるだろう。
しかし、相手によってはそれが不満の材料でしかなくなる。
こんなことが計画出来るなんて、なんて頭いい人だろう。
でも、上手くはいかないものだ。
やっぱり、駄目なら別れた方がよかったのに。
欲が出たのかな。
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