しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ノエル ―a story of stories―」 道尾秀介 

2017年12月27日 | 読書
「ノエル ―a story of stories―」 道尾秀介    新潮文庫   

4編からなる連作短編集。
「光の箱」
童話作家の卯月圭介が初めて物語を書いたのは小学校4年の時だった。
母子家庭で、学校で苛めに合い、母親には言えない寂しさから書いていった。
中学校でも苛めが続いたが、声を掛けて来た同級生の葉山弥生と一緒に絵本を作る事になる。
作り上げたのは『リンゴの布ぶくろ』で、圭介が初めて書いた物語だった。
2作目がその続きの「光の箱」。
しかし、高校の時ある事があって、2人は別れる。
14年振りに同窓会に参加する圭介は、弥生との再会があるか思いを馳せる。


「暗がりの子供」
莉子は生まれつき左脚が曲がりにくい為、飛んだり跳ねたり走ったりが出来ない。
母親は大きなお腹をしていて、もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
莉子は赤ちゃんを大切にする母親にちょっと複雑な思いがある。
図書館から借りた、『空飛ぶ宝物』の主人公、真子と会話するようになる。
真子は莉子の気持ちを読み取り、赤ちゃんが生まれない方法を伝えて来る。


「物語の夕暮れ」
元教師の与沢は妻と2人で児童館で読み聞かせをしていた。
しかし、妻が亡くなり、与沢は読み聞かせを終わりにしようとしていた。
そんな時、雑誌に自分が生まれ育った家が写っているのを見つける。
それは童話作家のインタビュー記事だった。
作家は同郷の妻と故郷にUターン、古い家を購入して最低限のフォームをして暮らしていると言うものだった。
与沢は思いったって、ある願い事を書いて、その作家に送る。
子どもたちには、昔自分が作った「蛍とかぶと虫」の話を聞かせていた。


「四つのエピローグ」
3つの話のまとめのような物語。









登場人物はみんな孤独や寂しさを抱えている。
自分の価値や生きている意味を考えてしまう。
それぞれ年齢が違うので、とらえ方は違うのだが。
その人たちは共通して身近に物語があった。
その物語の中には、もうひとつ、やっぱりどこか心に孤独を持った人(動物)の物語が。
これは、物語の持つ力で、自分も力を得た人たちの物語。
サンタクロースがクリスマスに子どもたちにプレゼントしている物の話が良い。
与沢の物語は、寂しい。
子どもの頃から、先の心配ばかりして前に進めなかった様な感じ。
誰かに言って貰わないと自信を持てないような。
ユーモアもあり、きっと良い教師だったと思うのだが。
サンタクロースにプレゼントを貰っていても、気が付かなければ何もならないのかも知れない。
光は見ようとしない人には見えなく、見ようとすれば僅かでも見える。
それは、気持ちの持ちよう。
王女さまがまた飛べるようになったのは、それがあったからだろう。

「物語は逃避ではない」と言うような言葉があるが、自分は逃避でもいいと思う。
逃避でも、その世界に入ってしまえば、何かを得るのだから。
取り合えず、没頭すればその間だけでも嫌な事を忘れたり出来るから。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「転落の街」  マイクル・... | トップ | 「監視ごっこ」  アンデシ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事