しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「天使の羽ばたき」  ポール・ホフマン 

2015年02月17日 | 読書
「天使の羽ばたき」  ポール・ホフマン    講談社    
 THE BEATING OF HIS WINGS        金原瑞人/井上里・訳

理由のはっきりしない病に倒れたケイルは、キプロス島の小修道院にいた。
定期的に倦怠感と吐き気に襲われ、精神的な治療をシスター・レイに受けていた。
そこへメシア・ギルが差し向けた刺客トレヴァー兄弟が向かう。
同時にスパニッシュ・リードの影の支配者キティ・ヘアの部下、キャドベリーとデイドラもトレヴァー兄弟を見張りながら向かっていた。
修道院でケイルは襲われるが、デイドラに助けられる。
そして、見舞いに来たハンザ同盟の大使の妻となったリバと共にスパニッシュ・リードに戻る。
そこでヘンリとクライストがキティ・ヘアに捕らえられている事を知る。
ケイルは2人を助ける為、キティの館に乗り込み、キティを殺してしまう。
やがて、メシアの進軍が始まり、スイスを含む枢軸国との戦いが始まる。

「神の左手」「悪魔の右手」に続く3部作の最終巻。









壮大なトマス・ケイルの物語がここで終わる。
まだ少年だと言うのに、長い長い道のりだ。
メシア・ボスコに、ボスコの望む人格になるように育てられ、自分の存在価値を知らされる。
しかし、それには反発して自分の考えで生きて来たケイル。
ある意味、ボスコに打ち勝つ事で自分を取り戻す戦いだったのかも知れない。
しかし最後に対決したボスコは、今までとは180度違っていた。
サンクチュアリの存在も。
それまでの事を間違いだと突然言われて、どう思ったのだろう。
親しかった者たちとの別れも沢山あり、頭に中は混乱しかなかったのではないか。
それでも、ラストはとても穏やかに感じるのは、一区切り付いたからだろうか。

ボスコがこれからどんな行動に出るのだろうかとずっと気になっていた。
ボスコはほとんど登場せず、ただ戦争は続いていた。
それがどんな意志なのか、ただ敵としての存在だけになっていたメシア軍が不思議だった。
最後にサンクチュアリが攻められた時に驚くべき事が起こる。
ボスコも本当は権力を握る為に、事を起こしているのだと思っていたがそれが違った。
本当に宗教的な思考だけが、ボスコの頭に中にあったのか。
しかし、それに従うメシアたちの行動にも驚く。
もっとボスコの事も書いて欲しかった気がする。

ラストは曖昧だが、トマス・ケイルの物語として最期までどんな生き方をしたか明確に知りたかった
それはクライストや他の登場人物も同じ。
その後はこうなったと、よくあるような箇条下記でいいから。
伝記として完結した形が良かった、と自分は思った。

戦いがメインだった2部に反して、3部は色々な思考が入り込む。
現代にある地名が登場するのは、それほど気にしなくてもいい事だった。
ちょっととらわれる感じはするが。
「著者あとがき」を読んで、ある程度に実体験が含まれていると知る。
これは驚きだった。
この様な世界と言うか、社会・組織がある事に。
しかし、それは考えられる事で、実際にまだ日本では思いも知れない事が行われている国もある。
いや、日本でも知られないだけで、悲惨な事は起こっている。
もっとアンテナを張り巡らせて、自分から色々な事を知ろうとしなければいけないのだろう。


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