反日感情が高まっている 最近の日中関係には不安を感じます。
私は父の家業の関係で 第二次世界大戦開戦の直前に 上海で生まれました。終戦までの5年間上海での数少ない記憶は とても断片的ですが それはかなり鮮明なものです。
戦況もかなり激しくなり街中が危険になり 家族は蘇州の日本軍が出入りしていた旅館の一角に疎開をしました。
その旅館の庭にはなつめの大木があり 秋の収穫の時期だったのでしょう、大人たちに混じって落とされたなつめを拾いました。落ちてくるなつめを避けるため お気に入りの花柄の防空頭巾を被っていました。その姿を周りの大人たちが笑っていたのを覚えています。戦時中の重苦しい空気の中での ひと時の笑いだったのかも知れません。
十数年前、姉が未だ元気だった頃 上海生まれの親戚や 私の家族と上海と蘇州を訪れました。
近代化の進んだ上海 そして観光地としての蘇州に 私は歴史の深さや文化の濃さを感じましたが 思ったほどの懐かしさは感じませんでした。
蘇州の虎丘を訪ねた時、姉が塔をじっと見上げていて 振り返った時その頬に涙が流れていました「お父さんと、何度も登ったことがあるの・・」若かった父と幼かった自分の事が思い出されたのでしょう。
小学校高学年だった 姉にとって 上海での少女時代の万感の思いがこみあげてきたのだと思います。
私は40歳から始めた太極拳をこよなく愛し生活の一部として続けていますが、その独特の動きや 中国音楽の楽器胡弓の音が不思議と心身に染み渡るのは 私の感覚の中に生まれた所の 空気や水を無意識に蘇らせているのでしょうか。
やはり上海は私の生まれ故郷なのでしょう。
花材 ・くるくま ・桔梗 ・薔薇 ・コニカルブラウン ・雪やなぎ
花器 ・アンテイーク ムラーノ・ガラス器