八木虎造『イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました』を読む。
内容はタイトル通り。日本人が、ひょんなきっかけから南イタリアのパレルモにあるプロ野球チームでプレーすることになるというもの。
イタリアで野球? サッカーじゃないの? しかもプロってイタリアにそんなもんあるの?
いきなり吸引力があるが、ページを開いてみると、しょっぱなの「つかみ」がまたナイスであった。
八木氏の職業はフリーのカメラマン。
幸運なことに仕事にはめぐまれたものの、なにごとも過ぎたるはおよばざるがごとしで、過労のために倒れてしまう。
このままではいかんと、一念発起して休みを取ることを決意。
せっかくだから風光明媚なシチリアでガールフレンドとバカンスだと意気きごんでいたのだが、これがとんだ一方通行の計画。
彼女からは
「え! あの話、冗談じゃなかったの!?」
そうおどろかれ、「1人で行ってきなよ」とさらりといわれる。
トホホな気分でシチリア行きの便に乗るが、到着後も澄み切った青い空にオレンジのカクテルを味わいながら……。
……になるはずだったのに、わずか2日でホームシックに襲われダウン。
街を歩いてもイタリア語はわからず、市場ではボラれ、スーパーではレジ打ちのおばちゃんに怒鳴られる。
ついには「街の人全員が犯罪者に見え」るという鬱状態に。
あわれ八木氏は部屋の遮光カーテンを引いて夜明け過ぎまでネットにふけるという、立派なひきこもり状態になってしまうのだ。
青空広がる南イタリアの大地で引きこもり! バカンスのはずなのに!
なんだか、絶賛意味不明であるが、そんな生活を一月続けていたところ、ふとテレビをつけるとアテネ・オリンピックがやっていた。
その華やかな世界に見入られた八木氏は、思い立ちアテネに飛ぶ。
そこで、陸上でも体操でもなく、なぜか野球を見続けた彼は、松坂や岩瀬、黒田といったスパースターたちの無邪気な「野球小僧」ぶりに感銘を受ける。
猛烈に「野球がしたい!」とつきうごかされた八木氏は、シチリア島に戻ると矢も盾もたまらずイタリアで野球チームを探すことに。
そうして見つけた「チーム・パレルモ」に飛びこむと、キャッチャーとして思う存分ベースボールを満喫。
そしていわれるままイタリア語の書類にわけもわからずサインすると、なんとそれはイタリアプロ野球リーグ「セリエA」の入団契約書だった……。
なんだか、一昔前のハリウッド、ハワード・ホークスなんかが監督してるスクリューボール・コメディーみたいな展開だが、このアバウトに2転3転するオープニングからして抱腹絶倒。
そこからも、イタリアプロ野球、というかそう呼んでいいのかどうかわからないハチャメチャな「セリエA」の実体がなんとも興味深いのであった。
(続く→こちら)