八木虎造『イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました』をうっかり読んじゃいました その2

2016年01月06日 | スポーツ
 前回(→こちら)に続いて、八木虎造『イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました』を読む。
 
 南イタリア恋人バカンス! のはずが、なぜか一人で飛行機に乗るはめになり、さらにはホームシックにかかって一か月引きこもり生活。 
 
 気がつけば現地でプロ野球選手になる、というアクロバティックすぎる休暇を過ごす著者。 
 
 サッカーならともかく、イタリアで野球というのが意味不明だが、逆に興味がわいてこないこともない。
 
 まずレベル的には、「思ったよりも高い」そうだが、それでも日本とくらべると実に能天気なもんらしい。
 
 なんといっても、スコアがすさまじい。22対18とかそんな乱打戦があたりまえで、9ー7くらいなら「ピリッと締まったゲーム」になるのだ。
 
 まだピッチャーのレベルがいまひとつでフォアボールが多く、イタリア人は打撃を重視するためこうなるそうだが、それにしたって大味なスコアである。
 
 実際、ちょっと油断すると10点差くらい簡単にひっくり返るそうで、セーフティーリードというのが存在しないのがイタリア野球。
 
 というと、草野球かよつっこまれそうだが、まさにその通り。
 
 なんたって、「チームパレルモ」で一番打者として活躍した八木氏が、中学時代こそ強豪の野球部でならしたが、その後の活躍の場はもっぱら河川敷
 
 まさに、だれ恥じることのない、堂々草野球レベルなのだ。
 
 それが、ギャラこそないものの(八木氏は「助っ人外国人」ということで、1試合につき20ユーロくらいの報酬が出た)ちゃんとした「プロ野球」なんだから、なんとも親しみがわくではないか。
 
 下手すると、私だってレギュラーになれそうだものなあ。
 
 他にも、なんとも南国的だと感じるのは、たとえば、スタジアムに集合したところで、相手チームが来ないことがある。
 
 イタリアプロ野球は、サッカーのような巨大市場ではないので、さほど予算がない。
 
 そこで、遠征費が捻出できないチームはそのまま
 
 
 「じゃ、いいや」
 
 
 あっさり不戦敗を選ぶのだという。
 
 日本だったら、そういうときは
 
 
 「断腸の思い」
 
 「がんばった選手たちに申し訳ない」
 
 「捲土重来を期します」
 
 
 みたいなノリになりそうだが、こっちはその辺は気楽な感じで、「そう」てなもんだという。
 
 「じゃあ、しゃあねえか」と、せっかくフルメンバーがそろってるし、なんて紅白戦を始めたりする。
 
 審判もこなかったりする。
 
 「コッパイタリア」という、れっきとした公式戦なのに、アンパイヤ不在
 
 なんでそうなるの?
 
 なんでも、試合する両チームが共に、勝ったとしても次のラウンドに進む費用がない。
 
 ということで(八木氏のチームは、お金はないこともないが「ローマまで行って、試合したいかあ?」って感じ。八木氏は「ぜひ、やりたいです!」ってひそかに思ってるのに……)、審判諸子も、
 
 
 「じゃあ、やんなくていーじゃん」
 
 
 家で寝ていたらしいのだ。
 
 なんちゅうラテンなノリなのか。日本の公式戦でそんなことしたら大問題だろうが、イタリアでは、
 
 
 「じゃあ、練習試合でもやっちゃいますか」
 
 
 やはり明るいもの。楽しそうだなあ。
 
 しかもこの話には驚愕のオチがあり、親善試合に勝利した数日後、監督がやってきて、
 
 
 「こないだの試合、練習試合のはずだったけど、公式戦としてあつかうことになったから」
 
 
 おいおいである。審判がこないから代わりに練習試合にしたのに、いざ終わってしまうと、
 
 
 「せっかくやったんだったら、それを公式戦にカウントすればいいじゃん」
 
 
 という、いい加減なのか合理的なのかよくわからん論理で、「気がついたら1勝していた」そうだ。
 
 なんかもう、「はあ、そうでっか」としかいいようがないが、これがれっきとした「セリエA」なんだから、人生とはなんと愉快なことか。
 
 このように、イタリアのプロ野球は、我々の想像する「プロ」とは、ずいぶんとイメージがちがう。
 
 それを「ふざけてるのか!」と感じるか、はたまた「アハハ、いろんな世界があるねえ」と笑うかで本書の読み方は変わってきそうだ。
 
 人生のアバウトさではイタリア人に負けない自信のある私は、もちろん後者です、ハイ。
 
 
 
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