「ガジガジ流」の大さばき 藤井猛vs佐藤康光 2010年 第68期A級順位戦 その2

2024年11月17日 | 将棋・名局

 前回の続き。

 2010年、第68期A級順位戦佐藤康光九段藤井猛九段の一戦は、1勝6敗2勝5敗と、星が伸びない者同士が落とし合う「の大一番」となった。

 藤井が角交換四間飛車から穴熊に組むと、佐藤はを打って飛車先の突破を図る。

 これに藤井はなんと、▲96歩▲95歩と、悠々端歩を伸ばすという意表の対応に出た。

 

 

 なんじゃいや、これはという話だが、これが実は見事な対応で、△85歩、▲同歩、△87歩、▲78飛、△85飛には▲96角と、ここに打つ筋を用意している。

 

 

 

 指されてみれば、なるほどで、△84飛には▲44銀、△同銀、▲76飛、△同歩に▲66角とバリバリ攻める。

 

 


 これは穴熊が生きる形だし、

 

 「ガジガジ流」

 「ハンマー猛」

 

 と呼ばれる藤井の力が出る展開だろう。

 佐藤は△43角と退却を余儀なくされるが、▲26角と打って▲44銀をねらう。

 △24歩から△25歩と追われても、今度は▲36歩から▲37角とスイッチバックして、このあたりは振り飛車絶好調

 

 


 6筋銀交換になり、佐藤も負けじと飛車を使って押し戻していくが、次の手が強烈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ▲82銀と打つのが、佐藤の見落としていた痛打

 △同飛は当然▲64角

 桂取りを受けようにも、△72歩二歩だし、まさか△72銀と打つわけにはいかない。

 佐藤は△54金とかわし、▲73角成△42飛と涙の辛抱を見せる。

 

 

 

 ボロっとを取られながらを作られ、しかも手番も渡す。

 あまりにも痛々しい手順だが、負ければお終いの佐藤は耐えるしかない。

 だが、次からの構想が最後のとどめとなった。

 

 

 

 

 

 

 ▲57金と上がるのが、盤面を広く見た筋に明るい手。

 △45金▲38飛とまわるのが、気持ち良すぎる手順。

 

 

 後手のかすかな主張は、先手の飛車が働いていないことだった。

 なら、それを活用するのがいいわけで、▲57金開門しつつ、場合によっては▲46金のような活用も見せる。

 後手はせめてを使おうと△45金だが、▲38飛と列車砲を転換して一丁あがり。

 「重い振り飛車」を得意とする藤井だが、ここは軽やかなスライドを見せた。

 以下、上部からガリガリ食い破って、藤井勝ち

 佐藤はまさかの降級

 藤井はこの星が大きくものを言い、最終戦では森内俊之九段に敗れるも、競争相手の井上慶太八段が敗れたため、辛くも残留を決めたのだった。

 


 (藤井と佐藤の王座挑戦をかけた大熱戦はこちら

 (佐藤の振り飛車退治と藤井システムへの影響はこちら

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