「やらせ」というのはどこまでゆるされるのか。
というのは、なんとも難しい問題である。
情報化の進んでいなかった昭和のように「おおらか」な番組作りが問題視される昨今、ネットを中心に「あのドッキリはやらせ」とか「あの局はニュース番組の街頭インタビューに役者を使っていた」とか「AKBじゃんけん大会は八百長」などといった論議でかしましいことがある。
まあ、「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言葉もあるし、番組をまとめるには多少の「台本」が必要であろうことは、大人の知恵として理解できなくもないが、ものには程度というものがあるし、そもそもでいえばやらせ自体よりも、
「そのことを当然のこととしてことを進めているマスコミ人の傲慢さ」
こっちのほうが視聴者は腹が立つのだろう。
「どうせあいつらはテレビ(新聞や雑誌などでも可)でやることは、なんでも信じよるねん。阿呆な大衆やからな。嘘でもなんでも、情報操作は思いのまま。ワシらは第4の権力やからなダッハッハ!」
みたいなこと、陰では言うてるんやろ! と。
先日も、「ぶっこみジャパニーズ」という番組で、スコットランドのラーメン屋が
「ディレクターの指示にしたがって、実際にはメニューにない変な料理を用意した」
なんてことをFacebookでしれっと語っていたそうだが、こういったやらせ騒動で思い出すのは、「発掘! あるある大事典」である。
番組内で「納豆はダイエットに効果がある」と語られたのだが、その内容はねつ造にもとづいたものであることが発覚し、番組も打ち切りに追いこまれた。
私自身、正直さほど興味はひかれなかったが、なぜかこの番組のことが日本唯一のバックパッカー雑誌『旅行人』のコラムで取り上げられていたので印象に残っているのだ。
それは三ツ矢スージーさんの「窓ヒズム」という連載記事。
ビルの窓ふきをしてお金を貯め世界中を旅行しているというライターのスージーさんは、お台場にあるフジテレビの窓ふきをしていたそうな。
そんなある日、「あるある大事典」に彼女の勤める窓ふき会社のスタッフが出演することが決定した。
その内容というのが「ブロッコリーはストレスに効く」というもので、清掃員に高所作業後胃カメラを飲ませて、その後1週間ブロッコリーを食べさせて再度胃カメラを飲みストレスの状況を比較する、といったもの。
なるほど、そうやってデータを取っていけば、ブロッコリーがストレスに効くのかわかるわけだ。
ところがである、スージーさんによるとこれがかなりいいかげんなものであったらしい。
まず被験者は「高いところは初めて」という設定らしいが、これが大ウソ。というか、窓ふきの人を使っている時点ですでに論理矛盾している。
もちろん、そのことは隠されていたそうだが、なぜ窓ふきの人を使ったのかといえば、推測するに「高いところになれていない普通の人」を使ってはビビったりして、うまく演出等の指示が出せないからという現場の事情ではないか。
だから高所に抵抗ない人を使ったのであろうが、いきなりデータに信憑性がなくなる裏事情だ。ちなみに、出演者は問題なかったが、逆にカメラマンが高所恐怖症でフォローが大変だったそうだ。
さらにはミーティングや作業風景(おそらく実験の)などもスージーさんいわく「すべてヤラセ」。
言いきりましたよ、ヤラセ。「演出」などといった玉虫色の表現はそこには存在しない。「ヤラセ」。現場からの、すがすがしいまでの断言だ。
他にも、なぜか昼休みに被験者が仲良く浜辺で弁当を食べるシーンなど撮りたいと言われたそうだ。スージーさんいわく、
「屋外作業する肉労がわざわざ浜辺でメシなんか食うかよ」
だそうであるが、テレビ局側としては、海を見ながらわきあいあいと食事しているシーンを撮影して、
「ブロッコリーを食べ始めて3日、心なしか、彼らの笑顔が増えたようだ」
みたいなナレーションでも入れたかったのだろうか。
これだけでもたいがいいい加減だが、スージーさんいわく、そこで番組スタッフは一聴信じがたい、とんでもない一言を言い放ったというのだ。
(続く→こちら)