ヨーロッパで、フォアグラを山のように食べてきた。
美食に興味のない方でも、名前くらいは聞いたことがあるであろう。キャビア、トリュフと並ぶ世界三大珍味の一つ。
そんなフォアグラは有名だけあって、値段の方ももちろん日本で食すとお高い。
まともなレストランでいただけば、それこそ松屋の定食についてくるミニ冷や奴くらいの大きさで、ウン千円は取られるというシロモノ。
それをお腹いっぱい、それも本場ヨーロッパで食してきたのだ。
セレブなミーは、もちろん量もステーキの上にこんもり。
野球のグローブかというくらいに盛りつけられたそれを、なんとか平らげた日にはもう、
「満腹満腹。もうしばらくフォアグラは見たくないね。え? まだ残ってる? そんなものは食べきれないから、お腹を減らした猫にでもあげてしまいなさい」
などと言いたくなったものである。
みんなはいいなあ、私のように
「フォアグラの食べ過ぎで消化不良」
なんていう苦しみを、味あわずにすむのだから。あなたたちは本当に幸せだ。
なんて得々と語っていると、そのうちプロレタリア革命でも起こされそうだが、それはちょっと待ってほしい。
たしかに私はフォアグラをいただいた。それも並でない量を。
ステーキの上に、皿からこぼれそうな勢いで盛られたそれを、動けなくなるくらいにお腹に詰めこんだ。
だが、ブルジョアゆえにそういうことになったのではない。
ここにそのカラクリを解くならば、ヨーロッパで食べたフォアグラというのは、ハンガリーの首都ブダペストでのことなのである。
そういうと、旅行好きの人や、中欧のグルメ事情にくわしい人はポンと手をたたいて、
「あー、そういうことね」
納得してくれるのではないか。
まわりくどい話はここまでにして、ここに一言にまとめるならば、これはつまり、
「ハンガリーはフォアグラの名産地で、市場などで買うと信じられないような安値で手に入るから、ワシのような貧乏人でも、たらふく食べ放題や!」
ということなのである。
旅行者の間では、
「○○に行くと、●●がすごく安価で手に入る」
という情報がよく出回るもの。
上海では北京ダックが数百円で食べられるとか、一昔前のイランでは闇両替パワーで、
「キャビア山盛り寿司」
が一貫100円弱くらいで食べられた、など枚挙にいとまがないが、その中の一つに、
「ハンガリーのフォアグラはとんでもなく安い」
というのがあるのだ。
セレブなミーはふだんは食に興味がなく、三食立ち食いそばやコンビニ弁当でも平気なタイプだが、こういう話を聞くと
「ぜひ食わねば」
となるのだから、我ながら意地汚い。
ものはなんせフォアグラである。こんな機会でもないと、日本では下手したら一生食べることなどない可能性も高い。
そこで中欧旅行の際、思い切って食べてみることにしたわけだ。
何事も経験。私はこのハンガリーグルメ計画を「青いガーネット作戦」と命名。
勇んでブダペストの街に、東洋の食い意地男爵が進駐することとなり、次回より中欧フォアグラ自炊事情をレポートしてみたい。
(続く→こちら)