前回(→こちら)の続き。
「台湾にある龍山寺は、とってもステキなところ」
海外旅行のおすすめスポットを友に訊かれて、まずそうぶち上げた私。
信心深い台湾人でにぎわう龍山寺の境内
台北随一の観光名所であるこのお寺さんの、最大の魅力はといえば、
「関羽が祀られていること」
関羽。というと、もしかしてあの関羽?
そう疑問に思われる方も、おられるであろうが、そう、あの関羽。
日本人なら大好き『三国志』に出てくる、劉備玄徳の義兄弟、関聖夫子様である。
知力83、武力99。
私の世代なら、片山まさゆき先生の名作マンガ『大トロ倶楽部』の名セリフ、
「関羽に書物をやろう」
でおなじみの、あの関羽なのだ。オレは頭のいい武将が好きだぜ。
なんて説明してみると、歴史やゲームにくわしい方なら、なんで関羽やねん、台湾関係ないがな。
なんて、つっこまれるかもしれないが、それは実に正しい意見だ。
関羽と台湾、ちっともゆかりがない。いわば、キリストの墓が青森の戸来村にあるようなもんで、なんでそんなところに、と。
そこが気になって、宿泊していたユースホステルのオーナー林さんに、
「台湾やのに、なんで関羽なんですか?」
そうたずねると、日本語が達者な林さんはニコニコと、
「そうなんです。関係ないんです」
断言されてしまった。やっぱ、ないんかい!
続けて林女史が言うことには、
「でもいいんです。台湾人は、めでたそうなものを、とりあえずなんでも神様にして祀るんですよ」
とりあえず神様。
そんなんでいいのかと、さらなるつっこみが入りそうだが、林さんはさらに、
「そのへんは、偉い人とかなら、なんでもいいんです。台湾とつながりないけど、孔子様も祀ってますよ」
関係ないけど孔子。すばらしい発想だ。
こちらでいうなら、法隆寺とか清水寺に「ナポレオン」とか「アレキサンダー大王」の像が飾ってあるようなものか。なんていいかげんな。
もう一度発音してみよう。関係ないけど孔子。
何度聞いても、テキトーでステキなフレーズである。「声に出して読みたい日本語」というやつではないか。
これには私も楽しくなって、
「じゃあ、ドラえもんとかアンパンマンって海外でも人気だから、祀ってもいいんですか?」
そう茶々を入れると、林さんはアッハッハと声をあげて笑い、
「そうです、そのノリです。ドラえもん、いいですね」
ええんかい! 嗚呼、なんて私好みなアバウトさ。
めでたいから関羽も孔子も祀るけど、別にドラえもんでもいい。
この脱力的発想が、外国旅行の醍醐味といえる。まさに究極の多神教で、究極の偶像崇拝。
マジメな一神教信者の中には激おこする人もいるだろうけど、私は大好きだ。
これに感動した私は、すぐさま龍山寺へと走り、
「関羽様、孔子様、健康と金運お願いします。台湾関係ないけど。あと、ウチからはウルトラマンがアルカイックスマイルで、仏様っぽくておススメですよ」
そう祈るとともに、日本のキャラを売りこんでおいた。そのうち、M78星雲から台湾の寺デビューを果たすことだろう。
かの名将、関羽雲長を参ることができるとは、光栄の『三国志』とナムコの『三国志 中原の覇者』を鼻血が出るくらい遊びまくった身としては感無量であり、しかもそれが、
「特に寺とゆかりがあるわけではない」
というズッコケな内容であることが、さらに私の胸を熱くさせるのであった。
そんな、ゆるゆるな龍山寺、マジで超オススメです!
(故宮博物院については→こちら)