ブリティッシュ作戦 近藤誠也vs中田宏樹 2020年 B級2組順位戦 その2

2025年02月22日 | 将棋・名局

 前回の続き。

 2020年B級2組順位戦

 他力ながら昇級に望みをつないで、最終戦で中田宏樹八段と戦うのは近藤誠也六段

 勝ったうえで、順位上位横山泰明七段が負けてくれないと上がれない立場だが、まずはとにもかくにも自分の将棋だ。

 

 


 
 


 先手の近藤誠也が相矢倉脇システムからを作ると、中田宏樹はそれにをかけていく展開。

 ただ馬を助けるような手ではつまらないと、先手は一気呵成に飛びこんでいく。


 
 
 
 
 
 

 ▲46銀△52金▲同馬△同飛▲35歩
 
 この際、はくれてやってしまうのが、この形のポイント。
 
 駒損ではあるが、後手は王様の守備隊長である△32をはがされ、横腹がすこぶる寒いのである。
 
 そこですかさずをくり出し▲35歩
 
 
 「矢倉はに攻めた方が有利」
 
 
 と言われるが、まさにその格言通りの速攻だ。
 
 中田は△32飛とまわって3筋に勢力を足す。
 
 そこで近藤は急がず、一回▲15歩と端を詰めて間合いを図る。
 
 
 
 
 
 
 後手に有効な手がないことを見越して、マイナスになりそうな手を指させてから襲いかかろうという高等戦術

 かつては羽生善治九段が得意とした緩急のつけかただが、今ではすっかり「手筋」のひとつである。
 
 もちろん、のちの端攻めも見越してのことで、次の手が△84銀なのだから、飛車の応援のない棒銀よりも端歩の方が価値が高いのは一目瞭然だ。
 
 先手は▲37桂と攻め駒を足し、後手はその手を待ってから△35歩と取る。
 
 桂頭がうすいが、かまわず▲35同銀と取って、△36歩はその瞬間に▲24歩からバリバリ攻められて持たないと見たか、中田は△59角とこちらから反撃。


 
 
 
 

 これがイヤな形で、先手は桂取りを受けるのがむずかしい。
 
 ▲27飛▲38飛は、もう1枚のを打たれていじめられそうだし、▲38歩とはとても打つ気になれない。
 
 ▲24歩と行くのも、今度は守備に利いてくるため通るかどうか微妙なところ。
 
 対処を誤ると、いっぺんに切れ筋におちいりそうなところだが、次の手が力強かった。

 

 


 
 
 
 
 
 ▲36金と打つのが意表の1手。
 
 攻めに使いたいを、ここで自陣に投資するのはもったいないようだが、これが手厚い対応だった。
 
 今度は好機に▲58飛などとされると、後手のが危ない形。
 
 そこで△39角と先に飛車をいじめに行くが、▲29飛と引いて、最悪どちらかのとの交換が保証されたのは大きい。
 
 △48角成▲34歩を一発利かし、△同金に居酒屋の店員のごとく「よろこんで!」と▲59飛と取って、△同馬▲43角


 
 
 
 
 
 
 責められそうな飛車をキレイにさばいて、そのが敵陣にクリーンヒット
 
 △31飛▲14歩と突くのが、またリズムのよい攻め。

 

 

 

 

 細い攻めをこうしてつないでいくのが近藤は得意で、本人も

 


 「自分らしい一手」


 

 と満足の展開。ここからは先手のペースだろう。

 △同歩▲同香一歩補充して、△35金▲同金△14香▲34歩が「一歩千金」の好打。

 

 


 
 △42銀▲52角成
 
 
 「固い、攻めてる、切れない」 
 
 「後手玉だけ終盤戦」
 
 
 という、いわゆる「勝ちやすい」パターンに入った。

 

 

 勝負はいよいよ最終盤。

 中田もを使ってなんとかを遠ざけ、スキを見て△38飛と反撃。

 次に△69馬△37飛成が入れば後手も相当だが、次の手が教科書通りの決め手である。

 

 


 
 
 
 
 
 ▲24歩と突くのが、「筋中の」という形。
 
 こういう第一感の手が通るということは、すでに寄り形ということだ。
 
 △同歩▲23歩とタタいて、あとはむずかしくない攻めで充分勝てる。
 
 それにしても、あの受け一方のようなが、こうなると敵玉を押しつぶす鉄球として大活躍しているのがすばらしい。
 
 近藤が快勝で、これでキャンセル待ちの権利を手に入れる。
 
 その一方で自力だった横山敗れ、近藤はデビューからたった4期B1までかけ上がったのだった。
 
 


 (近藤誠也の「ガチ」についてはこちら

 (近藤と羽生の大熱戦はこちら

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コメント
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