スペイン語を勉強している。
スペイン語と言えば「日本人に学びやすい言語」として有名である。
スペルはローマ字読みなうえに、日本語と同じ母音で構成されているため発音しやすく、とっつきの良さはヨーロッパ系言語でナンバーワン。
英語とくらべておぼえる単語の量も少なく、文法は過去形などに進むとむずかしくはなるが、英語などとくらべてリスニングやスピーキングの壁が相当に低いなど、これはもうマスターしない手はない……。
……とここで、おいおいちょっと待て。
おまえはこないだ、今は「フランス語を勉強中」「ドイツ語使って英語人にハッタリかませ」といっていたではないか。
なんで急にスペイン語の話になるのかと言われるかもしれないが、これは別に仏語を挫折したわけではなく、当初からの予定通りなのである。
そもそも私がフランス語をやるのは、あくまで1年限定であった。
その間に「中2英語」レベルの文法と語彙を身に付ければ、そこで次の言語に移行しようと考えていたのである。
というと、えー、そんな中途半端でいいの?
せっかく1年やったんなら、もっとがんばってフラ語をレベルアップすればいいのにというのは、たしかに正しい意見である。
しかしだ、私の経験上、外国語というのは仕事で必要とか検定試験を受けたいとかでない限り、旅行とかちょっとしたメッセージを送る程度なら「中2レベル」で、わりとまかなえるのである。
具体的に言えば、英語なら「現在完了形」の前までで「不定詞」は便利だからやった方がいいと思うけど、「動名詞」「受け身」はギリなくても、なんとかなりそう。
フランス語は過去形と未来形のさわりだけやったところで「第1部・完」としたが、たぶんこれ程度でも、
Je deviens le dieu de ce nouveau monde.
(私はこの新しい世界の神になります)
Si vous vous mettez à genoux, elle acceptera sûrement.
(あなたが土下座をすれば、彼女はきっとOKしてくれるでしょう)
Ce qui t'appartient est à moi, et ce qui m'appartient est aussi à moi.
(キミの所有する物は私の物で、私の所有する物もまた私の物なのです)
くらいなら一応意味を取れるのだから、充分すぎるほど役に立つのではないか。
そういうこともあって、私は昔から思っていたわけである。
実戦で、特に海外旅行やちょっとした会話くらいなら、むずかしい英語をあれこれ掘っていくよりも、
「世界中のあらゆる言語のさわりの知識」
こっちのほうが、よっぽど使えるのではないかと。
日本人はとかく「英語ペラペラ」(軽薄な表現だ)にこだわりがちだが、世界には英語が通じにくい国や地域など山ほどある。
今は知らねど、私がヤングだったころはそれこそフランス、スペインにイタリアと言ったロマンス語圏は英語なんかちっとも通じない(日本人よりヒドイ片言だったりする)。
トルコも観光地はいいとしても、ちょっと普通の街歩きやスーパーで買い物するときなど、通じないことが多く困った。
エジプトなんかも、市場などの値段表記がアラビア語で、付け焼刃で1から10までのアラビア語数字だけおぼえて行ったら、これがメチャ便利というか、そもそも読めないと値段がわからないから買い物ができない。
他にもチェコやハンガリーと言った東欧、台湾の夜市などなど、やはり通用度は低かった。
いやマジで、観光地しか歩かないならいいかもしれないけど、われわれのようなバックパッカーは地元の市場や商店のお世話になるのだから、「現在完了進行形」とかよりも
「スロバキア語のあいさつ」
「トルコ語の【good】のジェスチャー」(「チョクチョク」でおぼえやすい)
「クメール語の【迷子になりました】」
とかの方が100万倍武器になる。
もちろん数字はマスト。1から10言えるだけで、メチャ能力値アップは間違いなし。
というわけで、私は現在「中2語学マルチリンガル」計画を立てて、実際に実行している。
この「シュリーマン作戦」によれば、1年フランス語(1日10分)をやった次にスペイン語。
フランス語とスペイン語はもとは同じ言語なので共通項も多く(facileとかdifficileなど同じ、また似た単語が多い)、移行はスムーズにいくのではないか。
一応、まだはじめて数か月だけど、
Él no está comiendo ramen, sino información.
(彼はラーメンではなく情報を食べているのです)
Haz un contrato conmigo y conviértete en una chica mágica, por favor.
(ボクと契約して魔法少女になってください)
Ese payaso parece que, cuando se divierte, termina matando a alguien.
(あのピエロは楽しくなると、ついやってしまうようです)
みたいな頻出フレーズをコツコツ読んでいくのは充実感がある。
次にドイツ語をやり直して、アラビア語、中国語、ロシア語くらいまで行ければ、もう白地図は相当に塗りつぶせそう。
あとは、昔から興味があったフィンランド語とか、トルコ語、ソルブ語なんかもやってみたいなあ。
(英語コンプレックス克服編に続く)