佐々木勇気八段が広瀬章人九段を破って、藤井聡太七冠の待つ竜王戦七番勝負へ

2024年08月15日 | 将棋・雑談

 佐々木勇気竜王戦挑戦者になった。

 挑戦者決定戦で、広瀬章人九段を破っての檜舞台であり、のタイトル戦登場。

 女子人気の高いビジュアルにくわえ、「天然」なエピソードの数々で愛嬌も抜群。

 同性にも親しみやすいという、最強の男子である。

 もちろん将棋も才気あふれる魅力があって、強さとカリスマ性をそなえたスター棋士が、ついに覚醒だ。

 などと、その期待から、まずはグッと持ち上げることを書いてみたが、私と同じく多くの将棋ファンが、同時にこうも思っているのではあるまいか。


 遅い! 長かった! いつまで待たせるねん、ゴドーか!」


 佐々木勇気といえば、


 小学4年生小学生名人
 
 「13歳で奨励会三段


 というスピード出世を考えれば、30歳ではじめて全棋士参加棋戦優勝タイトル戦登場というのは、いかにものんびりしている。

 小学生名人戦から見ている、われわれ「うるさ型」のファンからすれば、もうこの男なんてとっくにA級三冠くらいを常時、持ってるはずだったのだ。

 将棋の世界では、時の「支配者」ともいえる棋士はたいてい早熟ではある。

 昭和の名棋士、中原誠十六世名人20歳棋聖を獲得し、23歳11か月で大山康晴十五世名人から名人を奪取。

 谷川浩司十七世名人は、言うまでもなく「21歳名人

 羽生善治九段10代のころからビッグトーナメントを総ナメし、19歳竜王を獲得、25歳七冠王

 他にも、佐藤康光郷田真隆屋敷伸之といった面々も、若くしてタイトルホルダーに(屋敷など18歳だ)。

 特に「羽生善治四段」デビュー時に将棋を知った私には、この「羽生世代」や屋敷、少し上の森下卓などの爆発的な勝ちっぷりを見てきたので(マジでイナゴの大群です)、なにかこう若手棋士とは


 「そういうもの」


 という感覚がすりこみになっているのだ。

 もちろん、その後も有望な若手棋士が多く出て、結果も出しているけど、なにかこう「物足りない」感があった。

 けど、たぶんそれは「羽生世代ショック」で感覚がバグっているだけで、世の中には「遅咲き」から息長く活躍している一流棋士はいる。

 たとえば森内俊之九段

 この人はデビューしていきなり全日本プロトーナメント(今の朝日杯)で谷川浩司名人を破って優勝など、一般棋戦(と順位戦)では強かったが、なぜかタイトル戦に縁がなかった。

 初登場は25歳名人戦と「羽生世代」の中では比較的遅く、獲得も31歳だった。

 その後、羽生に先んじて「永世名人」を獲得するのはご存じの通り。

 また昭和では加藤一二三九段が、中原誠20連敗を喫したり。

 米長邦雄永世棋聖が、やはり中原にタイトル戦で初顔合わせからシリーズ7連敗を喰らったり。

 わりと結構、足腰立たなくなるくらいのヤツを喰らっているが、その後はタイトル戦など、ほぼ五分で戦い、多くの栄冠にも輝いている。

 早熟と見せかけて、実は遅咲き

 もしかしたら、スピード出世に目をくらまされ、われわれは佐々木勇気の本質を見誤っていたのかもしれない。

 なんにしても、お楽しみはこれからだ。

 彼はといえば、藤井聡太の「30連勝を止めた男」だが、その後の対決では借りを返され続けている。

 それも、順位戦NHK杯決勝アベマトーナメントと大きいところで負かされたことで、


 「そっか、佐々木より藤井の方が強いんだ」


 という空気感を完全に作られてしまった。

 だが、こないだのNHK杯でついに連敗ストップ。


 

 2年連続同カードとなったNHK杯決勝。
 熱戦から最終盤で藤井がハッキリ勝ちになったが、ここで△55角成としてしまい、すかさず▲24飛が「詰めろ逃れの詰めろ」で大逆転。
 ここでは△66角成とすれば勝ちだったが、▲13香成の王手ラッシュで危ないと見たのかもという解説もあり、深い読みに裏づけられた「超ハイレベルな頭脳ゆえのポカ」の可能性も。 

 

 

 最後は相手の一手バッタリに助けられたが、あの藤井聡太を「ミスらせた」ことがすごいともいえる。

 かつての名棋士木村義雄名人に、クソねばりからトン死を喰らわせた、神田辰之助九段の名セリフの通りだ。

 曰く、


 


 「なんで勝っても、勝ちは勝ち」


 

 

 

 

 

 


 

 またこの挑決でも、藤井猛九段も言うよう、あの終盤力の持つ広瀬章人大悪手を指させるなど、このあたり理屈を超えた「勢い」も感じるところだ。

 これを本物にするためには、この竜王戦を絶対に勝たなければならない。

 があるなんて保証は、どこにもない。生涯の大勝負だ。

 となると、決勝戦など一発勝負はいいとして、こういう勝ち方では番勝負を制することはできない。

 4勝するには力で「読み勝つ」ことが必要であり、そこは佐々木勇気も試されるところではある。

 私は八冠王獲得までは「藤井聡太推し」だったが、達成後は完全に「呂布」「ゼットン」「ティーガーI」といったラスボスか、あるいは少年マンガかプロレス的な「ヒール」として見ている。

 つまりは、「倒すべき」なのだ。

 なかなか倒れないけどね。強くて、そこがまたいいんだナ(どっちやねん)。

 八頭龍キングヒドラを相手に、まずは伊藤匠がその剣で、首をひとつ切り落とした。

 2本目を落とす役割に、佐々木勇気ほどの適任はいないと思うが、果たして七番勝負はどうなるか。

 「ヤツ」のことだ、ほうっておくと、あっと言う間に「自動回復」で8本の首に戻るはず。
 
 その前に、ふたり目の「勇者の剣」のクリティカルヒットが入るのか。期待しかない。

 

 

 

 


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