「ホラーは怖くないが、未解決事件は怖い」
夏と言えば怪談の季節である。
この殺人的な暑さの中(なんで学校の部活とかやってんだろ)、怖い話でゾッとして、少しでも涼を取ろうという。
生活の知恵というか苦肉の策だが、これが私にはあまり効果がない。
というのも、どうも自分は「怖い話」に興味がなく、聞いてもピンとこないことが多いのだ。
映画は好きだけど、一時期大流行した『リング』『女優霊』といった映画は、
「メチャクチャ怖い!」
「マジで夜、寝れなくなる」
とか言われてたけど、そんなにピンと来なかった。
最近でも、『エスター』とか『IT/イット “それ"が見えたら、終わり。』も友人にすすめられて、おもしろかったけど、どちらかといえば「コメディ」に近い楽しみ方であったのだ。
うーん、『エスター』を日本でリメイクするなら、ぜひ大竹しのぶさんにやってほしいぞ。
そんなホラー不感症なので、「心霊スポット」とか、事故があって家賃が安い「死に死に部屋」とかも平気である。
都市伝説の類はおもしろいが、別にゾッとはしない。
スプラッタ系はダメだけど、それはグロと痛いのがイヤなので、ホラーとして怖いのとは、ちと違う気もするのだ。
これは別に、こちらが豪胆ということではない。
ジェットコースターとか、高いビルの屋上とか、ここ1週間ずっと不機嫌な彼女とかは、ふつうにというか、たぶん人よりビビってるわけで、どうも自分は
「怪談」
というものに、そもそも、あまり興味がわかない体質なのであった。
落語の「皿屋敷」は好きなんだけどねえ。お菊さん萌え。
そんな幽霊に塩対応な私であるが、どう違うのかわからないが、
「未解決事件」
これは怖い。
怖い、恐い、これはマジでメチャクチャにコワイ。寝れなくなる。
たとえば、「長岡京ワラビ採り殺人事件」。
京都在住の主婦二人が、近所の山にワラビ採りに行ったら、その後遺体となって発見されたという事件。
死体は全身何十個所も殴打され、包丁が突き刺されており、体内から犯人のものと思われる体液も見つかっている。
金品は残されていたが、被害者のポケットにレシートが入っていて、そこには、
「オワレている たすけて下さい この男の人わるい人」
そう書かれていた。犯人はいまだ捕まってない。
レシートにこれが書いてあるの、怖すぎるやろ!
他にも、
「井の頭公園のゴミ箱」
「洋子の話は信じるな」
「まずい女性に引っかかった」
とか、もうブルブルなので詳細は書きたくないけど(興味があれば検索してください)、こういうのを、夜中に見ていると、本当にビビりまくりだ。
いい歳したオッサ……ダンディズムを身にまとった壮年の紳士が、トイレにも行けない。むっさコエー!
ネットをしているとき、たいていお茶やコーヒーをがぶ飲みしているが、震えながら必死に尿意をガマンすることになる。
いつか膀胱炎で、救急車に運ばれそうだ。じゃあ、見るなよ。
いやでも、見ちゃうんだよなー、コレが。
ここで、ひとつ不思議なのは、シャワーや歯みがきのとき。
怖がりの人は、そこで、
「背後に気配がする」
なんて後ろを振り返ったりするが、私もそれは同じ。
未解決事件の記事や、ゆっくり動画を見た後に風呂や洗面台に行くと、やはり後ろが気になる。
ただ、そこで浮かぶ「背後に立つ者」のイメージが、なぜか
「血まみれの幽霊」
とか、ものすごくベタなものであり、われながら「なんでやねん」なのである。
未解決事件にビビってるのに、思い浮かぶのは幽霊。
しかも、なぜか「うらめしや」なコントに出てきそうなヤツだ。いわゆる「貞子」みたいなのですね。
おそらく、それこそ本能的な闇への恐怖を感じながらも、未解決事件の場合は明確な「絵」というものが存在しない。
なので、具体的な像を思い浮かべるには「怖いという記号」的なものを選択するしかなく、そこでとりあえず
「血まみれの幽霊」
となるのではないか。
なんと安易なと、あきれる思いであり、私にとってもっとも怖いのは幽霊でも、まだ見ぬ犯人でもなく、
「我がの想像力の絶望的貧困さ」
これではないのかと、反省する日々であった。